2013 Fiscal Year Research-status Report
体液性調節因子の支配を受けない肝臓の自律的血糖調節機構と新規降血糖薬の開発
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24659448
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
渡邊 房男 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40183719)
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Keywords | glucokinase / 細胞内局在性 / グルコースセンサー / 肝細胞 / HepG2 / HEK293 / GKRP |
Research Abstract |
平成24年度において、グルコキナーゼ(GK)と橙色蛍光蛋白質である単量体型Kusabira-Orange (mKO)との融合蛋白質を発現する細胞株の作成を試みた。その結果、ポジティブコントロールとして用いたヒト腎臓由来のHEK293細胞では、この融合蛋白質を安定に発現する細胞株の作成に成功したが、本来の研究目的であった肝臓由来のHepG2細胞においては発現が見られなかった。平成25年度は、HepG2細胞においてもこの融合蛋白質を発現させるために、発現ベクターの改良を行った。まずHepG2細胞の異種蛋白質分解系を回避する目的で、GKとmKOの間にグリシンに富む21アミノ酸残基のペプチドのリンカーを挿入した。これはGKとmKOとの間隔を広げて、相互の立体障害を軽減し、ユビキチンリガーゼから認識されにくくするためである。しかし、改良した発現ベクターを用いてもHepG2での融合蛋白質の発現はなく、逆にこのリンカー部分がプロテアーゼの標的となり、HEK293細胞においてもGKとmKOが分離した状態で細胞質に蓄積していた。現在この融合蛋白質がHepG2細胞において安定に発現する条件を探索している。これと並行して、抗体を用いてGKの細胞内局在性を明らかにする目的で、GK及びグルコキナーゼ調節蛋白質(GKRP)を単独で発現するベクターを各々pEBMulti-HygとpEBMulti-Neoを用いて構築し、HEK293及びHepG2の細胞に形質転換させた。現在Hyglomycin BとG418を選択マーカーにして、安定発現株の樹立をおこなっている。 次に前回の実施状況報告書で述べたGKとmKOの融合蛋白質を発現するHEK293細胞を用いたグルコースセンサーのクローニングの計画であるが、ラット肝臓のcDNAライブラリーを構築し、スクリーニングの準備を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の進捗度合が遅滞している原因は、GKとmKOの融合蛋白質を安定に発現するHepG2の細胞株を樹立できていないことにある。この細胞株によらなければ、培養細胞のパラホルムアルデヒド固定や免疫染色などの煩雑な実験操作を省略することができず、ハイスループットにGKの細胞内局在性を画像解析することができない。平成25年度はこれを解決するために、発現ベクターの改良や培養条件の検討を行ったが、満足する結果が得られなかった。今後の対応策として以下の3点を考えている。(1)安定発現細胞株のスクリーニング法を替える。(2)形質転換に用いるプラスミドを大幅に増量する。(3)HepG2の蛋白質分解系を阻害する。 次に前回の実施状況報告書で述べたHEK293細胞を用いたグルコースセンサーのクローニングの計画は、cDNAライブラリーの構築が終わっている。すでに報告したようにHEK293細胞には、肝細胞に存在するグルコース濃度を感知してGKの細胞内局在性を変化させる機構が欠如している。これを逆手に取って、HEK293の形質転換株の復帰型変異を指標にして、肝臓のcDNAの発現ライブラリーのスクリーニングを計画している。この計画の予備実験として、炭水化物応答配列結合蛋白質(ChREBP)のグルコース応答性を確かめた。ChREBPは、GKとは逆にグルコース濃度が高くなると核に移行するタンパク質である。これをHEK293細胞に発現させて、細胞局在性を調べたところ、グルコース濃度が変化してもChREBPの細胞内局在性に変化はなかった。このことは、HEK293細胞では、輸送される蛋白質の分子種を超えて、グルコースセンサーの感知部位が欠損していると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
GKとmKOの融合蛋白質を安定的に発現するHepG2細胞株の樹立を目的に、以下の実験を行う。(1)スクリーニング法の検討: 安定発現細胞株を選択するマーカーとしてhygromycin BとG418を用いているが、これらの抗生物質に対してHepG2はHEK293よりはるかに抵抗性が強い。このため細胞株の作成にこれらを極めて高濃度で用いている。細胞の選択方式を変えてスクリーニングを容易にする目的で、平成26年度はpEBMulti-pyroベクターを用い、選択マーカーをピューロマイシンにして細胞株の樹立を行う。(2)形質転換法の検討: 現在、5μgのプラスミドを用いて細胞を形質転換しているが、これを可能な限り増量する。これで形質転換した細胞数を増加させることによって、スクリーニングにかける細胞の母数を増やす。(3)HepG2の蛋白質分解系の検討: HepG2のプロテアソームをMG-132などの阻害剤を用いて不活化し、融合蛋白質の分解を強制的に停止させる。これによって分解を免れた融合蛋白質で実験を行う。 次に融合蛋白質を発現する細胞株の樹立を行わずGK及びグルコキナーゼ調節蛋白質(GKRP)を単独で発現するベクターを各々pEBMulti-HygとpEBMulti-Neoを用いて構築し、HepG2で発現させる。この細胞を用いてGK及びGKRPの抗体をAlexa Fluor 488及びAlexa Fluor 647の蛍光色素で各々修飾し、蛍光抗体を作成する。これを用いて各条件で処理した初代培養肝細胞を二重染色して、計画当初の実験を行う。この場合、目的としていた細胞株を用いないので、スクリーニングする細胞数の制限があり、作業能率の低下が予想される。
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Research Products
(1 results)