2014 Fiscal Year Research-status Report
体液性調節因子の支配を受けない肝臓の自律的血糖調節機構と新規降血糖薬の開発
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24659448
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
渡邊 房男 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40183719)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グルコキナーゼ / グルコキナーゼ調節蛋白質 / 核-細胞質間蛋白質輸送 / グルコースセンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓のグルコキナーゼ(GK)は、低血糖時には核へ高血糖時には細胞質へと移動することで、血糖値を調節している。本研究の目的は、肝細胞がどのような機構で血中のグルコース濃度を検知して、核-細胞質間のGKの輸送を行っているのかを明らかにすることである。この目的のためにGKと橙色蛍光タンパク質である単量体型Kusabira-Orange(mKO)との融合タンパク質をヒト肝細胞由来のHepG2細胞に発現させ、ハイコンテンツ蛍光顕微鏡を用いて、その細胞内局在性をハイスループットに測定できる実験系の開発を検討した。しかしGK-mKOの融合タンパク質は、ポジティブコントロールとして用いたヒト腎臓由来のHEK293細胞での発現は見られたものの、本来の目的であるHepG2細胞内での発現は見られなかった。HEK293細胞での発現があることから、この発現ベクターそのものの構造は問題がないと考えられる。このことから融合タンパク質がHepG2細胞で発現が見られないのは、HepG2細胞特異的な異種タンパク質分解系によって分解を受けているためであると思われた。そこでGKとmKO相互の立体障害を軽減してタンパク質を安定化する目的で、これらのタンパク質の間に21アミノ酸残基のペプチドリンカーを挿入するなどのベクターの改良を行ったが、発現効率の改善は見られなかった。このため、融合タンパク質を用いた高能率な実験系の作製を断念し、細胞内での安定性が良いGKを単独に発現させて、その特異的抗体を用いてその局在性を測定する方向に実験を方向転換した。平成26年度は、GK及びGKと結合するタンパク質を大腸菌を用いて発現させ、ウサギを用いて抗体を調製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
GK-mKO融合タンパク質がHepG2細胞内では非常に不安定であるために、これを用いる実験系の作製を断念せざるを得なかった。そこでGK-mKOに代わってGKの細胞内局在性を測定する手段として、特異的抗体を用いる実験系を採用した。平成26年度は、GKとこれに結合するタンパク質するグルコキナーゼ調節タンパク質(GKRP)を大腸菌で発現させ、ウサギを用いて抗体を作成した。GK及びGKRPのcDNAを発現ベクターpET-30b(+)にサブクローニングし、His-Tagが付加された状態で大腸菌BL21(DE3)に発現させた。IPTGで発現誘導した菌体を超音波破砕した後、Ni-Sepharoseを用いたアフィニティー精製、 HW-55S Toyopearlを用いたゲル濾過、DEAE-Toyopearlを用いたイオン交換クロマトグラフィーを連続的に用いて単一タンパク質になるまで精製を行った。GKはウサギに免疫し抗血清を得ているが、GKRPはまだ免疫作業中である。また高血糖時に細胞質において GKを結合すると報告のあったフルクトース6-燐酸2-キナーゼの肝臓型アイソザイム(RL2K)も同様に抗体を得る目的で、発現・精製を行っている。 またHepG2細胞内でGK及び GKRPを蛍光蛋白質の融合なしに発現させるために、pEBMulti-HygとpEBMulti-Neoを用いて発現ベクターを構築し、プラスミドDNAを調製した。pEBMultiベクターは、ヒト由来細胞において複製・維持されるベクターであり、現在HepG2細胞を形質転換させ、Hyglomycin BとG418を選択マーカーにして、安定発現株の樹立をおこなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,まずGKの核内での結合蛋白質であるGKRPと細胞質内での結合蛋白質と報告されているフルクトース6-燐酸2-キナーゼの肝臓型アイソザイム(RL2K)に対する抗血清をウサギを用いて調製する。作成した抗血清は、各抗原を固定化したSepharose4Bを用いて精製し、各々の抗体を調製する。精製した抗体は、Alexa Fluor 488で蛍光標識する。次に平成26年度に作製したウサギ抗GK抗体をAlexa Fluor 555で蛍光標識する。このAlexa Fluor 488とAlexa Fluor 555の蛍光色素の組み合わせを用いるのは、これらのタンパク質の細胞内局在部位を測定するのみならず、蛍光色素のFluorescene Resonance Energy Transfer (FRET)現象を利用してGK-GKRP間およびGK-RL2K間の蛋白質の結合状態に関する情報を得るためである。このようにして作製した蛍光抗体を用いて、GKとGKRPまたはGKとRL2Kの組み合わせを強制発現させたHepG2に高グルコース負荷をかけ、これらタンパク質の分布と結合状態をハイコンテンツ蛍光顕微鏡ImageXpressを用いて測定する。この測定に必要な蛍光キューブは、すでに入手済みである。またこの実験と並行して、初代培養肝細胞におけるこれらタンパク質の分布と結合状態を観察する。
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Causes of Carryover |
本研究は、GK及びGKRPと蛍光タンパク質との融合タンパク質をHepG2細胞に発現させ、細胞内局在性を明らかにすることが目的であった。しかし融合タンパク質は、この細胞内で分解されて十分な量が発現しなかった。そこで融合タンパク質よりも安定なGK及びGKRP自体を発現させ、その局在性を抗体を用いて明らかにすることに研究方針を転換した。この抗体の作製は時間がかかるために、期間内に交付金を使用することが出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度には、作製したGK及びGKRP抗体をAlexa Fluor 488及びAlexa Fluor 555の蛍光色素で標識する。この蛍光色素の組み合わせはFRETを起こすことができ、GKとGKRPの局在性のみならず結合状態も検出することができる。この蛍光抗体を用いてHepG2内に発現させたGK及びGKRPの細胞内局在性と結合状態を観察する。この抗体の蛍光標識及びHepG2の免疫細胞化学の実験経費に未使用額を充てる。
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