2012 Fiscal Year Annual Research Report
先天性骨髄不全症候群iPS細胞による白血病発症の分子基盤の解明と発症予防法の開発
Project/Area Number |
24659489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 浩一郎 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (50179991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海老原 康博 東京大学, 医科学研究所, 助教 (40302608)
望月 慎史 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (90349473)
大津 真 東京大学, 医科学研究所, 特任准教授 (30361330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 小児血液学 / iPS細胞 / 先天性骨髄不全症候群 / 白血病 |
Research Abstract |
重症先天性好中球減少症(SCN)は先天性骨髄不全症候群の一つで、骨髄球系細胞が前骨髄球から骨髄球の段階で成熟障害を起こすことにより、先天的に好中球減少を呈する。このため生直後から重症感染症を繰り返すが、近年G-CSFの投与によりその予後は改善してきている。しかし、G-CSFの投与量の増加に伴い急性骨髄性白血病の発症頻度が高くなることが明らかとなり、G-CSFに依存しないSCNの治療法が求められている。また、SCNの患者の半数でELANE遺伝子変異が認められるが、この変異が骨髄球系細胞の成熟障害を惹起する機序は解っていない。そこで我々は、SCNの患者体細胞からiPS細胞を樹立し、これを用いて上記の問題を解決することを計画した。 その結果、SCN患者体細胞から複数のiPS細胞クローンを樹立することに成功し、そのいずれのクローンもドナー患者と同じELANE遺伝子変異を有していた。また、SCN-iPS細胞から骨髄球系細胞を分化誘導すると、骨髄球系細胞は前骨髄球から骨髄球の段階で成熟障害をきたしたことから、SCN-iPS細胞はSCNの病態をよく再現できることが示された。そこで、SCN-iPS細胞から分化誘導された骨髄球系細胞の遺伝子発現を網羅的に解析したところ、Wnt3a/β-catenin経路に関連する遺伝子の発現が低下していたため、SCN-iPS細胞から骨髄球系細胞への分化誘導系にWnt3aを添加すると、骨髄球系細胞の成熟障害が改善され成熟好中球が分化誘導された。 以上の結果から、SCNにおける骨髄球系細胞の成熟障害にはWnt3a/β-catenin経路の障害が関与しており、本経路を活性化することはSCN治療に効果的である可能性が示された。また、本研究により樹立されたSCN-iPS細胞は、SCNの病因解明、新規治療法開発のための有用なツールとなることが期待された。
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Research Products
(31 results)