2013 Fiscal Year Research-status Report
多角的アプローチによる副腎白質ジストロフィーの脱髄発症・病型規定因子の同定
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24659492
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
下澤 伸行 岐阜大学, 生命科学総合研究支援センター, 教授 (00240797)
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Keywords | 副腎白質ジストロフィー / 脱髄 / 病型規定因子 / 疾患モデル / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究は患者ゲノム比較解析、モデルマウス発症実験、iPS細胞によるエピゲノム比較解析の3つのアプローチにより、副腎白質ジストロフィー(ALD)の脱髄発症・病型規定因子の解明を目指しており、今年度の成果として: ①患者遺伝子発現比較解析による病型規定候補因子の探索:ペルオキシソーム病診断センターとして今年度、さらに診断症例を追加し、当施設で診断した国内120家系以上に及ぶALD患者のうち、同意書を得られた50歳までに大脳症状を呈していないAddison病またはAMNの患者群と、小児または思春期大脳型の患者群の両群のサンプルから、マイクロアレイ解析により網羅的遺伝子発現データを得て、パスウェイ解析を行った。②ABCD1ノックアウトマウスと野生型との各臓器よりmRNAを抽出して、組織ごとの網羅的遺伝子発現比較解析を行った。③極長鎖脂肪酸の異常など生化学的にはALDと同様の異常を呈するものの、脱髄所見も含め神経症状を呈さないABCD1遺伝子欠損マウスを用いて、前年度に引き続き、薬剤の投与や頭部外傷実験等による脱髄発症実験を行うとともに、高齢ノックアウトマウスのMRI撮影および病理学的検討にて中枢神経障害の有無を確認している。④ 病型の異なるALD患者細胞よりiPS細胞の樹立、分化:小児または思春期大脳型ALD と50歳までに大脳症状を呈していないAMN またはAddison病の病型の異なるALD患者の培養皮膚線維芽細胞に山中4因子を導入して、ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)化した細胞株の樹立を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALDの国内診断中核施設として今年度の1年間に副腎白質ジストロフィー(ALD) のうち、小児大脳型5例、思春期大脳型1例、成人大脳型2例、AMN 3例、小脳脳幹型1例、アジソン病1例、女性保因者11例、発症前患者3例を診断した。さらに国内での疾患周知を目的に副腎白質ジストロフィー診療ハンドブックも作成した。脱髄発症・病型規定因子の解明についても、以下の3つのアプローチで順調に進めている。 ①患者遺伝子発現比較解析による病型規定候補因子の探索として病型の異なる患者のサンプルを用いてマイクロアレイ解析により網羅的遺伝子発現データを得て、パスウェイ解析を行った。②ABCD1ノックアウトマウスと野生型との各臓器よりmRNAを抽出して、組織ごとの網羅的遺伝子発現比較解析を行った。③さらに同マウスを用いて薬剤の投与や頭部外傷実験等による脱髄発症実験を行うとともに、高齢ノックアウトマウスのMRI撮影および病理学的検討にて中枢神経障害の有無を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
①患者ゲノム比較解析データより候補遺伝子の同定:前年度までに得られた病型の異なるALD患者幹での網羅的遺伝子発現データ、およびALDモデルマウスと野生型との各臓器ごとに得られた網羅的遺伝子発現データをバイオインフォマティクスを駆使して、病型を規定する候補遺伝子群を絞り込み、病型の異なる両群の多数例の患者リソースを用いてRNAの定量PCRおよびDNAシークエンスを行い、両群間の遺伝子発現、遺伝子多型の相違を検討することにより、病型規定因子を同定する。②ABCD1ノックアウトマウスの脱髄発症実験:前年度に引き続き、炎症性サイトカインやLPS、アルキル化剤、さらに頭部外傷をABCD1ノックアウトマウスと野生型マウスに負荷して、神経症状を含めて両者間の反応に差を認める外的要因を探索する。③ ALD患者細胞よりiPS細胞の樹立、分化:24年度の対照線維芽細胞に引き続き、病型の異なる患者よりiPS細胞を樹立し、ニューロン、グリア系に分化させた両群の細胞を用いて、形態や各種抗体による免疫組織化学的検討に加えて、脂肪酸代謝系を含めた代謝産物や免疫・炎症に関わるサイトカイン等の比較検討、mRNAおよびmicroRNAの網羅的発現解析による比較検討及びDNAメチル化解析によりエピゲノムも含めた両者間の差異を網羅的解析にて解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果発表を国際招待講演にて行ったため さらなる研究の展開が見込まれるため、追加実験を計画している
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