2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代技術を用いた腎糸球体ポドサイトと末梢ニューロンを傷害する疾患遺伝子探究
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24659504
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
塚口 裕康 関西医科大学, 医学部, 講師 (60335792)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ネフローゼ / ポドサイト / ニューロン / 疾患遺伝子 / エクソーム解析 |
Research Abstract |
[背景] 我が国の小児期腎不全の原因調査では、先天腎尿路奇形が45%、FSGSが35%で、欧米に比較して糸球体疾患が多い(小児腎臓病学会 1998-2005)。小児FSGS の多くは無症候性であるが、疾患は多因子で病因の見極めが難しい。 [目的] 本研究では、これらの先天性腎疾患でも腎外症状(末梢神経変性、聴力、視力障害)を合併する症候性、家族性の症例を収集して、腎とそれ以外の臓器に共通する生物学的な機能類似点から疾患遺伝子パスウェイを推測し、原因を探索する。 [成果] 申請者らは、末梢運動神経の脱髄変性(Dominant intermediate Charcot-Marie-Tooth disease E CMTDIE; OMIM 614455)を伴うFSGSの症例の臨床所見、検体を収集した(山形大学・早坂清教授との共同研究)。 1) 遺伝学的解析:SureSelect Kit (Version 3, 50Mb)で全エクソームライブラリーを作成し、次世代シークエンサーHiseq2000を用いて、paired-end 75bp, depth x30-50, total 5-6 Gb の条件で変異を検索した。その結果、いくつかの疾患候補遺伝子に一塩基置換を検出した。 2) 候補遺伝子の意義付け:候補遺伝子のヒト組織での局在を、免疫組織染色法で検討した。発現実験を行い、変異体の細胞生物学、生化学的特性を検討した。 [意義・重要性] CMT病合併FSGSの2症例においてアクチン制御蛋白であるFormin-2をコードするINF2 (inverted formin 2)遺伝子のミスセンス変異のヘテロ接合体であることを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CMT病合併FSGSの2症例においてアクチン制御蛋白であるFormin-2をコードするINF2 (inverted formin 2)遺伝子のミスセンス変異のヘテロ接合体であることを見いだし、論文発表を行った(山形大学・早坂清教授との共同研究,Toyota K, J Peripher Nerv Syst. 2013)。 また国内外のセミナー(小児科学会、アジア小児研究カンファレンス、小児腎臓病学会で当該研究に関する発表を行い、領域研究者と症例の病因究明に関する調査・解析方法について討論を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)臨床症状の多様性を生じる分子機構の解明 同じINF2変異でもアミノ酸置換の部位によって、腎糸球体限局型の疾患(FSGSのみ) と、腎糸球体硬化CMTを合併する病型(CMT+FSGS)の2つの臨床像に分かれてくることは興味深い。ドメインにより会合する分子群に棲み分けがあるため、変異がどのドメインに生じるかにより機能障害の表現型・重症度に差を生じると推測される。 INF2に会合する分子群の実体やそのシグナル伝達機序がわかれば、腎(ポドサイト)、末梢ニューロン(軸索・シュワン細胞)の機能や構造維持の理解が深まり、治療開発につながると考える。 2) 未知の疾患遺伝子の探索 欧米のCMTを合併する病型(CMT+FSGS)の30症例の検討(Boyer O, NEJM 2011)でも、2-3割は原因が不明である。我が国でもまだ未解析の3症例があり、INF2以外の分子異常が関与する可能性について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)臨床調査と検体収集 引き続き症例の調査を継続する。まだ検討が不十分な多臓器障害について脳神経画像(MRI)、神経電気生理、腎生検所見、聴力検査、などの情報を収集してデータベース化する。 2) 疾患遺伝子の探索 全エクソーム解析(50Mb)をしても、ゲノム反復配列を含むゲノム領域はキャプチャー効率が低いため、変異検出に見逃しを生じる可能性がある。また現行の次世代シークエンサー技術は100bp のショートリードであるため、10bp を越えるようなIndelは検出できない。そのため細胞遺伝学マイクロアレイや、場合によっては全ゲノムシークエンス、Sanger シークエンスの併用をしてそれぞれの検査の利点を生かし相互補完的に変異探索を行う。
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