2012 Fiscal Year Research-status Report
母胎間シグナル伝達から迫る精神・神経疾患スペクトラムの胎児起源仮説
Project/Area Number |
24659512
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 母胎児間シグナル / 母体免疫 / 白血病抑制因子 / インターロイキン6 / 副腎皮質刺激ホルモン / 胎盤 / 神経幹細胞 / DOHaD |
Research Abstract |
母体環境による胎児臓器の組織形成障害を、出生後における慢性疾患の原因とする仮説(胎児起源仮説、DOHaD)は、統合失調や自閉症を含む精神疾患にも拡張され、精神・神経疾患スペクトラムの胎児起源仮説として注目されている。本研究では、我々が同定した母-胎児間LIFシグナル伝達(母体LIF-胎盤ACTH-胎児LIF)による胎児脳の発生調節機構が、母体免疫系の活性化に伴うIL-6過剰状態により破たんすることによって、胎児大脳皮質の形成障害や出生後の精神・神経疾患の素因になるという作業仮説の検証を行い、精神神経疾患DOHaDの分子基盤解明を目的とする。具体的には、母体免疫亢進モデルを用いて、胎盤および胎児脳における遺伝子変動の網羅的解析、生理的LIFシグナルに与える影響、母体免疫亢進の程度と胎児脳における神経幹/前駆細胞数の関係、さらに神経幹細胞数とストレス脆弱性との関連について検討を行う。 平成24年度は、Poly I:C (20mg/kgBW) を妊娠12.5日のマウス母獣に腹腔内投与し、母体免疫亢進モデルを作成した。Poly I:C 投与後に、ELISA法にて母獣血清IL-6 およびLIF濃度、胎児血清LIF、 ACTH、脳脊髄液中のLIF濃度を測定した。その結果、Poly I:C 投与後に母体血清IL-6濃度は著しく上昇するが、LIFは対照群と同等のレベルであることが確認された。一方、胎児血清および脳脊髄液中のLIF濃度、血清ACTH濃度は対照群よりも有意に低下していた。胎盤Pomc mRNAの発現はPoly I:C投与により低下した。以上の結果より、母‐胎児間LIFシグナル伝達は母体免疫亢進状態により抑制的に影響を受けることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Poly:IC投与による母体免疫亢進モデルについて各検査項目の評価を行い、実験モデル動物としての有用性を確認した。これによって、次年度以降の実験系の基礎を初年度内に確立することができた。母―胎間LIFシグナル伝達の主軸分子であるLIFとACTHさらに、それらの発現に影響を与えると予想されるIL-6について、母体血清、胎児血清および脳脊髄液中における濃度の変化を明らかにすることができた。また胎盤におけるPomc mRNAの発現に対する抑制的な作用も確認された。胎盤栄養膜におけるgp130下流のシグナル分子の挙動については、パイロットスタディーであるが、母体免疫亢進により抑制的な影響を受けることを示唆する結果が得られている。胎児脳、胎盤におけるDNAマイクロアレイ解析は現在進行中である。 以上より、研究の進捗状況は、設定した目的に対しておおむね順調に進展していると評価することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は主としてin vivoの母体免疫亢進モデルの構築とその解析が中心であり、予定していたin vitro実験の取り組みに若干の遅れが生じた。 次年度以降は、in vitroアッセイ系の立ち上げと、レンチウイルスベクターを用いたノックダウンシステムの導入に注力し、in vivo実験とin vitro実験のバランスを考えながら研究を遂行する。平成26年度には、LIFシグナル伝達に対するコンディショナルノックダウンマウスを用いた解析を予定している。そのための基礎実験を平成25年度中に完了しておく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(9 results)