2012 Fiscal Year Research-status Report
絶対定量質量分析法を用いた汗のプロテオーム解析によるアトピー性皮膚炎の病態解明
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24659532
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
佐山 浩二 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80187286)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 汗 / 角化細胞 / 自然免疫 / アトピー性皮膚炎 |
Research Abstract |
汗によるアトピー性皮膚炎増悪のメカニズムは分子的には全く解明されていない。その理由としては、汗中には多彩なタンパクが存在し、単純な解析が困難であったことがあげられる。本研究では、汗を網羅的に分析し、患者汗中に起炎物質が存在、あるいは増加しているかどうか明らかにすることを目的としている。 入浴後、あるいは運動時の汗を健常人ボランティア、アトピー性皮膚炎患者(増悪、寛 解期)から回収した。キムワイプを体幹あるいは、上肢にまきその上をサランラップで覆い、一定時間ののち、キムワイプをコニカルチューブ中で遠心し、汗を回収した。ただちにタンパク分解酵素阻害剤を添加し、-80℃保存した。細胞刺激用には、回収後Sephadex-G10 カラムで脱塩後、凍結乾燥し濃縮した。再融解後、タンパク濃度を測定し0.45μum のフィルター濾過後、分注し、-80℃保存した。予備的な汗のSDS-PAGE, Western blot解析では、汗中に多量のケラチンの混入が確認された。 角化細胞を培養し上記で回収した健常人汗を培養液に添加し刺激した。刺激後、細胞を回収してサイトカインの発現はPCR法, サイトカインの産生はELISA法で確認した。その結果、汗により角化細胞は刺激を受け、サイトカインのmRNA発現が上昇し、サイトカインを培養液中に産生することを明かにした。汗の角化細胞に対する生物学的活性をとらえることができたので、この活性をマーカーとして今後の解析をすすめることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的は下記であった。 1)汗中のタンパクを解析する手法自体が確立されていないので、まず、健常人の汗を用いて汗の解析法の確立をめざす。 2)アトピー性皮膚炎患者汗中の炎症起因物質を同定する。 3)炎症起因物質の同定後、培養細胞を用いた基礎的な研究を行い、トランスジェニックマウス作成の基礎とする。 このうち、(1)の健常人の汗を回収し汗の解析方法の確立を目指す、に関しては、概ね回収方法、保存方法を確立でき、初年度の目標を達成できたと考える。(2)のアトピー性皮膚炎患者汗の回収はまだ充分に行えていない。量的な問題があるのかもしれない。(3)の培養細胞を用いた基礎的な実験では、すでに汗中には培養角化細胞を刺激する因子が含まれていることを明かにしており、バイオマーカーとして使用できることを確認しており、初年度の目標は達成したと考える。以上より、初年度の目標は概ね達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的な解析で汗中には多量のケラチンの混入が確認されたので、詳細な検討の妨げとなるケラチン混入の少ない汗の回収方法の確立を目指す。引き続きアトピー性皮膚炎患者、正常人からの汗の回収を継続する。特に患者汗は充分に回収できておらず、回収方法の改善を試みる。また、プロテオミックス解析をすすめるために、年齢がそろったグループからまとめて汗を回収することを試みる。 プロテオミックスの準備を継続する。まず健常人の汗のプロテオーム解析から始める。SDS-PAGEやHPLC等による分離を行った後、既知炎症タンパク質の解析を行う。汗の炎症プロテオーム特性を明らかにし、炎症物質の標的分子を決定する。ついで、アトピー性皮膚炎患者の汗を解析、健常人と比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(2 results)