2012 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症における大脳基底核出力ニューロンの死後脳を用いた解析
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24659539
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
橋本 隆紀 金沢大学, 医学系, 准教授 (40249959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 重誠 金沢大学, 附属病院, 講師 (00323006)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 死後脳 |
Research Abstract |
本年度は、死後脳サンプルを採取する症例の選定を行ったうえで、ピッツバーグ大学に出張し、大脳基底核の出力ニューロンが存在する黒質の脳組織切片を作成し、金沢大学へ空輸した。黒質の切片は、赤核よりも吻側のレベルにおいて、脳幹の長軸に垂直の面で作成し、緻密層に含まれる鉄による黒い色素沈着を確認した。症例は、統合失調症15例、精神神経疾患のない対照例15例からなる。それぞれの統合失調症例は、性別が等しく、年齢がほぼ同じ対照例とペアとした。 その結果、疾患群と対照群の間で、年齢(統合失調症:50±14、対照48±14)と有意差を認めなかった(t=0.33, p=0.74)。また組織におけるRNAの保存状態を示すリボゾームRNAの比率(18S/28S ratio)は、統合失調症で1.6±0.3、対照群で1.4±0.2、RNA integrity numberは、統合失調症で8.0±0.5、対照群で7.8±0.5と両者とも有意な差を認めなかった(18S/28S ratio: t=1.7, p=0.09, RIN: t=1.3, p=0.20)。 以上より、得られた黒質切片を用いて、in situ hybridization法により、出力ニューロンの伝達物質であるGABAの合成や再取り込にかかわる分子、出力ニューロンからの抑制をうる黒質緻密層のドーパミンニューロンにおけるドーパミン合成や再取り込にかかわる分子の発現解析をおこなう準備が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、in situ hybridization法およびPCR法で遺伝子発現の解析に着手している予定であったが、十分数の症例を確保するまでの時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた切片の一部はニッスル染色およびコリンエステレーセ染色を施し、大脳基底核出力ニューロンが存在する黒質網状層およびドーパミンニューロンが主に存在する黒質緻密層、そして黒質全体の境界を明らかにする。そのうえで、in situ hybridization法により、GABA合成酵素GAD67およびGAD65、GABAトランスポーター1、ドーパミン合成酵素であるTyrosine HydroxylaseやドーパミントランスポーターのmRNAの発現量を定量し、統合失調症と対照例の間で比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度中は、脳幹のブロックより上丘のレベルで黒質を含む脳組織切片の作成を試みたが、いくつかの症例では上丘が大脳フロックに含まれ、脳幹ブロックに含まれておらず、十分な数の症例を集めるのに時間がかかったため、予定していたin situ hybridizationは行えなかった。このため、直接経費繰越額605,486円が発生した。この繰越額は、in situ hybridization法のための物品費およびデータ解析のためのパートの実験補助員の人件費に使用する。また、平成25年分の1,000,000円は、学会参加などへの旅費やin situ hybridization法、Western blot法などに必要な物品費として用いる。
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