2012 Fiscal Year Research-status Report
中枢5-HT細胞における転写因子Pet-1の標的遺伝子・共役転写因子の網羅的探索
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24659548
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
松井 宏晃 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90181685)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | セロトニン神経系 / 転写因子 / 遺伝子発現 / クロマチン沈降法 |
Research Abstract |
平成24年度は、中枢セロトニン(5-HT)神経細胞特異的転写因子Pet-1標的遺伝子をゲノムワイドに同定するため、ラット縫線核由来RN46A細胞をタンパク質架橋剤で前処理し、クロマチンを断片化後、抗Pet-1抗体(Pet-1のアミノ末端側認識抗体)で免疫沈降(ChIP)させた。マウス脳の実験からPet-1結合が推定されるPet-1、Tph2、Vmat2、Sert、Aadc、Maob、Htr1a、Htr1b、Gtpch1、Qdpr、Gfrpプロモーター領域の同定を試みた。しかし、同定できない遺伝子があり、蛋白質間架橋が抗Pet-1抗体認識部位を覆い隠した可能性がある。また、RN46A細胞では、Nrsfが高発現しており、標的遺伝子特異的にPet-1結合が阻害された可能性がある。そこで、Nrsf shRNAを恒常的に発現するRN46A細胞の構築を試みた。しかし、低レベルNrsf蛋白質発現条件下でも、脱抑制されない標的遺伝子を認め、このRN46Aの細胞特性が本研究課題遂行を妨げた可能性もある。一方、A1-mes細胞はマウス由来の中枢5-HT神経細胞のモデル細胞である。本研究におけるA1-mes細胞の有用性評価目的で実験を行った。しかし、A1-mes細胞においてもNrsfが高発現しており、標的遺伝子発現を強く抑制した。培養条件を変えA1-mes細胞を分化させると、Nrsf発現量が低下したが、RN46A細胞と同様、低レベルNrsfを介した標的遺伝子抑制は、完全には解除されなかった。以上の結果を踏まえ、現在、ChIP法、抗Pet-1抗体を再検討すると共に、Pet-1結合標的遺伝子を効率良くChIP法にて同定できるよう、Nrsf発現を抑制する方法を探索中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
蛋白質間架橋反応後、クロマチン免疫沈降法(ChIP)により、中枢セロトニン神経細胞特異的転写因子Pet-1の標的遺伝子同定を試みたが、蛋白質間架橋反応により、抗Pet-1抗体認識部位が蛋白質複合体中に埋没し、効果的なChIPができなかった。用いたRN46A細胞におけるNrsf発現を抑制し、ChIPの効率化を図ったが、成功しなかった。マウス由来のA1-mes細胞を用いて本研究を遂行するための予備実験を行ったが、A1-mes細胞でもNrsfが高発現しており、ChIP効率化の達成が困難であった。研究計画立案の段階では、十分に予想していなかったが、異なる作製方法で樹立した2種の、中枢セロトニンモデル細胞において、いずれもNrsfが高発現しており、本研究課題遂行には、妨げとなった。加えて、市販の抗Pet-1抗体が、ChIPには適していない可能性もあり、本研究進展が遅延した原因の一つとなった。一方で、Nrsfの機能解析結果を論文として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
クロマチン免疫沈降法(CjIP)を効率よく行うため、蛋白質間架橋反応薬を再検討する。抗Pet-1抗体については、数社から市販されているが、いずれもChIP反応には適切とはいえない。この点を克服するため、内在性Pet-1の代わりに、タグ付加Pet-1をRN46A細胞あるいは、A1-mes細胞に一過性に発現させ、抗タグ蛋白質抗体を用いるChIPを試みる。加えて、RN46A細胞並びにA1-mes細胞において、ChIPが効率よく行えるよう、Nrsf発現を抑制する方法を、引き続き、探索する。また、進捗状況を見据え、ChIP法ではなく、マイクロアレイ法を用いる方法へと、研究戦略を変更することも考慮する。現在までのところ、iPS細胞等を用いた一部の研究を除けば、中枢セロトニン神経細胞のモデル細胞として有用なのは、依然としてRN46A細胞とA1-mes細胞である。そこで、様々な方法を駆使して、これら2種の細胞において、中枢セロトニン神経細胞特異的転写因子Pet-1の標的遺伝子同定を継続したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画通りに本研究を進展させることができず、試薬類の購入を控え、研究方法の見直しを行ったため、次年度への繰越金が発生した。平成25年度は、クロマチン沈降法の更なる効率化を図り、研究の進捗状況に応じては、マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析法を併用して、Pet-1標的遺伝子同定を試みる。他方、RN46A細胞核内に存在するPet-1共役転写因子をプロテオミクス解析法により同定することを試みる。また、A1-mes細胞を用いたPet-1標的遺伝子同定、Pet-1共役転写因子同定を継続して行う。これらの結果を踏まえ、中枢セロトニン神経細胞におけるPet-1遺伝子ネットワークを明らかにしたい。従って、助成金は抗Pet-1抗体、細胞培養試薬、遺伝子導入試薬、クロマチン沈降法に引き続く次世代型シーケンサー用消耗品、プロテオミクス解析用試薬類の購入、さらに論文発表のための印刷費に充当する。
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