2013 Fiscal Year Research-status Report
上腕動脈血管機能計測による動脈硬化症早期診断のための生理的機能診断システム構築
Project/Area Number |
24659550
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉永 恵一郎 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (30435961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 千恵次 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (10292012)
山田 聡 北海道大学, 大学病院, 講師 (80374320)
西田 睦 北海道大学, 大学病院, 副臨床検査技師長 (90404722)
西尾 妙織 北海道大学, 大学病院, 助教 (90463736)
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Keywords | 内科系臨床医学 / 放射線科学 / 画像診断学 |
Research Abstract |
背景:今年度の目的は昨年までに検査精度および検査法の開発を行った、新規開発した血管機能計測装置の有用性を動脈硬化リスクのある慢性腎臓病患者で検討することである。そのため安静時及びニトログリセリン(NTG)負荷時の血管弾性率、血管断面積の計測を行い、上腕動脈超音波検査法および腎機能と比較を行った。 方法:慢性腎臓病患者10例と健常者16例を対象とした(mean estimated glomerular filtration rate [eGFR]: 30.6±26.3 vs. 85.3±15.6mL/min/1.73m2)。血管弾性率、断面積は血管壁追従機能を備えた血管容積・圧検出装置にてオシロメトリック法で計測した。血管弾性率は以下の式にて算出した[Ve=ΔPressure/(100 X Δvolume/volume)mmHg/%]。上腕動脈エコー法で血管内皮依存性血管拡張反応を評価した。 結果:安静時の血管断面性および血管径は2群間で有意差を認めなかった (血管断面積14.4±5.9 vs. 12.2±3.3 mm2, P=0.27、血管径 4.67±0.80 vs. 3.97±0.51 mm, P=0.18). ニトログリセリンに対する血管内皮非依存性血管拡張反応も2群間に有意差を認めなかった (11.7±7.0 vs. 16.1±5.1 %, P=0.06)。 一方、慢性腎臓病患者では血管内皮依存性血管拡張反応の低下を認め(4.46±3.06 vs. 7.88±4.04 %, P=0.018)、血管容積弾性率の異常を認めた (1.09±0.25 vs. 0.80±0.16 mmHg/%, P=0.002)。血管容積弾性率の異常は腎機能の低下および超音波による血管内皮依存性血管拡張能と負の相関を認めた[eGFR (r=-0.51, P=0.005), %FMD (r=-0.38, P=0.04)]。 結論:新規開発したオシロメトリック法での自動血管容積弾性率計測は慢性腎臓病患者における血管内皮機能障害を超音波検査と同様にかつ自動的に計測することが可能と示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血管進展性計測プログラムの開発と検証は前年度までに達成することが出来た。現在、これらの成果を論文として投稿する準備を進めている。本年度は開発した計測法を動脈硬化リスクの高い慢性腎臓病患者へ応用し初期の成果を得ている。今後も患者での計測を継続して行き、また動脈硬化の血液生化学マーカーとの対比を行い、測定指標の病態生理学的な位置付けを目指していく予定である。一方、女性例での検討は対象者のリクルートが進んでいないため、次年度に実施する予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに健常者にて開発を進めてきた血管進展性計測の臨床応用を図ることを継続していく。慢性腎臓病患者における心血管合併症が予後規定因子として重要視されている。慢性腎臓病患者および糖尿病患者では造影剤を使用せずに侵襲性の低い検査で精密な血管機能検査の応用が急務である。そこで今年度は慢性腎臓病患者での血管進展性計測の臨床的有用性について症例を重ねかつ動脈硬化の生化学マーカーと対比をすることで病態生理学的な意義付けにつき検討を行う。また前年度の課題であった女性例への応用については研究参加者の募集が進められる体制を構築できたので、今年度は女性例での血管進展性計測についても検討を進めて行く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費用として血液生化学マーカーを計測するキットを購入したが、当初の見積もりと比較し、実際納入価格が下回ったため未使用額が発生した。この未使用額については下記に記載しているが追加で実施する血液生化学マーカーを計測するキットの購入に充当する予定としている。 上記目的を達成するために研究費を血液生化学マーカーを計測するキットの購入に充当する予定としている。血管傷害を計測する血液生化学マーカーを計測するための試薬、キットを計上している。また、研究成果を学会にて報告する経費として旅費を、現在作成を進めている論文を誌上発表するための経費として外国語論文校閲費を予算に計上した。
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