2012 Fiscal Year Research-status Report
国内承認医薬品に新たな急性放射線障害治療プロトコールを見出す!
Project/Area Number |
24659553
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
柏倉 幾郎 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (00177370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 浩教 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10583734)
門前 暁 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (20514136)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 医薬品 / 全身照射 / 急性放射線症候群 / romiprostim |
Research Abstract |
γ線,7 Gy全身照射マウスの10%が27日間生存後30日目には全て死亡する.こうした放射線曝露マウスに,国内承認医薬品である顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),エリスロポエチン(EPO),血小板減少症治療薬(トロンボポエチン(TPO)受容体作動薬,romiprostim, RP)及び蛋白同化ステロイド(nandrolone decanoate, ND)の組合せを検討した.その結果,G-CSF + EPO + RP +NDの組合せが最も効果的であり, 照射後30日で62.5%の生存率をもたらした.さらに,RPの濃度を臨床量の25倍に増加し,ND投与を2回にしてG-CSF + EPO + RPを5日間投与する事で30日目に75%のマウスが生存した.一方,生存個体の末梢血球数,骨髄細胞数,骨髄中の前駆細胞数にはコントロールとの間に有意差は見られなかった. その後さらに検討をすすめ,TPO受容体作動薬であるRP単独を3~5 日間腹腔内投与することで30 日目に全個体の生存が認められた.この時,薬物投与後8 日から骨髄細胞数の急激な回復が認められるが,30 日目の生存個体では依然として骨髄抑制が起こっており,末梢白血球数も正常レベルの40%程度の回復であった.この時末梢血中の赤血球数,白血球数,血小板数において著明な差はなかった.両大腿骨中の骨髄細胞数,さらに骨髄細胞中の未熟T細胞,B細胞,NK細胞,顆粒球細胞,赤芽球細胞においても著明な差はなかった.一方,RP投与群では,照射後8日目から骨髄細胞数の増加が観察された.骨髄細胞表面の発現抗原解析から,おもに多能性造血幹細胞や骨髄系造血前駆細胞,マクロファージや顆粒球,さらには樹状細胞が8~10日目で急激に増加していた. 得られた成果の一部は,日本放射線影響学会第55回大会(2012年9月7日,東北大学)で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究から、TPO受容体作動薬であるromiprostim単独投与で100%の30日生存率がもたらされる事を見出した.本知見から下記特許出願に繋がった. 「放射線被ばく治療剤及び放射線被ばく治療方法」 発明者:柏倉幾郎、伊藤巧一、中野学、門前暁、千葉満、吉野浩教、廣内篤久. 権利者:弘前大学.特願2012-250880(平成24年11月15日).
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は,TPO受容体作動薬による放射線曝露個体の救命効果と作機序の解明を目的とする.この目的達成のため,致死放射線曝露マウスモデルを用い,造血・免疫機能及び消化管機能を指標に本剤の許容線量,至適投与量,投与方法の検討から標準となる投与プロトコールを確立する.次に,標準プロトコールをもとに本剤の作用機序について検討する.具体的には,薬物代謝,組織移行及び分布,各種生体幹細胞への作用,2次的なサイトカイン産生の促進効果について検討する.さらに,標的組織や細胞における遺伝子発現の変化についても評価解析する.併せて本剤投与生存個体の長期間観察を行い,致死を回避した個体における白血病などの発がん等晩発的な有害事象発生の有無を染色体や遺伝子レベルで検討する. 得られた成果の一部については論文作成を進めており,次年度は情報発信に努める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も放射線曝露マウスを用いた動物実験が中心となる為,実験動物(360千円)及び投与医薬品(200千円)を購入する.放射線曝露後の個体を経時的に造血障害や消化管障害を中心とした解析を行う為骨髄細胞発現抗原解析や組織染色の為の蛍光抗体色素,骨髄細胞中の造血前駆細胞や各種細胞の培養に必要な培地や,培養用消耗品,さらには特異的な細胞培養誘導に必要な各種サイトカイン等高額な試薬が必要となる(200千円).また動物への照射実験は環境科学技術研究所(青森県六ケ所村)で行う為,担当者の旅費(300千円)及び大学院生による実験補助経費(200千円)を計上した.また次年度は,得られた成果発表の情報発信の為,研究代表者の国際学会参加旅費(400千円)及び国内専門学会での発表の為の研究代表者及び分担者の旅費(50千円×3 名)を計上した.また,論文投稿に向け文献検索(50千円),英文校閲(100千円)及び投稿料(120千円)の執行を予定している.
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