2012 Fiscal Year Research-status Report
放射性セシウム内部被曝が糖代謝に及ぼす影響についての研究
Project/Area Number |
24659570
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 博亮 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20323595)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 放射線 |
Research Abstract |
東京電力(株)福島第一原子力発電所の爆発事故以降、放射性セシウムの内部被爆が問題となっている。放射性セシウムは、インスリンの標的臓器である筋肉組織に取り込まれることが知られている。筋肉組織に取り込まれた放射性セシウムが、酸化ストレスの惹起やミトコンドリアの障害により、糖代謝に影響を及ぼすことが危惧される。 本研究は、放射性セシウム内部被曝がインスリン感受性に影響を明らかにすることも目的とした。 申請者の居住地で、低線量であるが放射性セシウム(1μSV/h)に汚染された土壌を、オートクレーブにて、高温高圧滅菌し、放射性セシウム以外の微生物等を除去した。また、放射性セシウムが検出されない地域より採取した土壌を同様の方法で滅菌したものをコントロールとして用いた。これらの土壌を床敷に混入し、定期的に食餌量と体重測定を施行し、5週間後に正常血糖・高インスリンクランプ検査にてインスリン感受性を評価した。 通常餌群において、5週間の放射性セシウムの有無により、食事摂取量、体重、空腹時血糖値に有意な差は認めなかった。正常血糖高インスリンクランプ検査にて、通常餌群において、全身のインスリン感受性を示すGlucose infusion rate, 末梢組織でのインスリン感受性を示すInsulin-stimulate glucose disposal rate, 肝臓でのインスリン感受性を示すclamp Hepatic glucose output, 脂肪組織でのインスリン感受性を示すclamp FFAに有意な変化は認めなかった。 以上の結果より、正常耐糖能状態では、5週間の放射性セシウム内部被曝はインスリン感受性に影響を及ぼさない可能性が示唆された。 現在、高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性モデルで検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常餌による正常耐糖能状態では、インスリン感受性を評価できたが、高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性状態でのインスリン感受性の評価は、まだ実験遂行中である。 この理由として、放射性同位元素研究施設での動物飼育を推奨されたため、放射性セシウムの使用許可に時間を要したため、実験の遂行に若干の遅れを生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方策として以下の点を遂行する 1)高脂肪食負荷によるインスリン抵抗性状態で、放射性セシウム内部被爆が、インスリン感受性に及ぼす影響を検討する。 2)放射性セシウム内部被ばくにより、骨格筋内での酸化ストレスを評価する。 3)この酸化ストレスが、運動負荷により、インスリン感受性に及ぼす影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)消耗品:正常血糖・高インスリン・クランプ検査のマイクロ・カテーテルなどの器具、ラジオアイソトープ(D-[3-3H]glucose)、検査費用(血糖、インスリン、FFA、血清脂質プロフィル、TNFα、レジスチン、レプチン、アディポネクチン、酸化ストレスマーカー(8-iso-PGF2αなど)は測定キットの購入など。 2)旅費:日本糖尿病学会学術集会及びアメリカ糖尿病学会で研究成果の発表のための宿泊費及び交通費。
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