2012 Fiscal Year Research-status Report
静脈内皮細胞機能のエピゲノム調節における長寿遺伝子の役割
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24659580
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
東 信良 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30250559)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 内皮細胞機能障害 / 静脈内皮細胞 / 内膜肥厚 / 長寿遺伝子 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
【糖尿病動物の下肢静脈における内皮機能障害の証明】 糖尿病動物において静脈内皮機能低下や、その背景にあると考えられるNO等に関する細胞内情報伝達や長寿遺伝子発現さらにその背景に横たわると考えられるepigeneticsに関する検討を加える上において、対象とする動物系の選択や生後何ヶ月の時点で最も効率良く糖尿病による影響を反映するかを捉えておくことが重要である。 我々は、インスリン抵抗性を示すob/obマウスが生活習慣病を反映した糖尿病モデルとして妥当と考え、生後2ヶ月、4ヶ月時点での大腿静脈の組織学的検討および内皮依存弛緩反応によるNO分泌能について検討を行い、C57BL/6と比較検討してきた。しかしながら、4ヶ月時点までには大腿静脈における有意な変化は観察されず、さらに長期の病態暴露が必要であると考えられ、現在糖尿病発症6ヶ月および12ヶ月モデルでの組織学的、機能的および分子生物学的解析に向けて動物飼育中である。また、マウス静脈における内皮依存弛緩反応は微細でかつ非常に菲薄な静脈片での実験に難渋しており、再現性を得られるまでに至っていない。 なお、control群であるC57BL/6における大腿動脈および静脈擦過モデルを作成しており(発表論文の項参照)、糖尿病による酸化ストレス下において再生した内皮細胞の機能異常についての研究も開始したところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
・非糖尿病動物との差異を生じるまでに長期の飼育期間を要することに問題があり、十分長い酸化ストレス暴露期間を待たなければならないことが、遅れの原因となっている。 ・マウス静脈片における内皮依存弛緩反応の困難さ;静脈は平滑筋層が動脈ほど発達しておらず、かつ、非常に脆弱であるため、測定データのばらつきが非常に多きく難しい課題を抱えている。
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Strategy for Future Research Activity |
【糖尿病動物に作成した虚血肢における酸化ストレスとepigenetics】 糖尿病動物の糖尿病による酸化ストレス蓄積を待つだけでは長期間を要し、長期生活習慣病の結果として血管病を発症するヒトのモデルとして成立しがたいことから、内皮細胞擦過モデルや虚血モデルという第2のストレスをかけることで、組織における酸化ストレス蓄積を加速し、epigenetic changeを引き起こし、生活習慣病下の慢性動脈閉塞症疑似モデルを作成する。 この慢性虚血肢モデルやそこから得た初期培養細胞を用いて、静脈内皮機能低下やその背後にあると考えられるNO産生に関わる遺伝子発現、さらにその背後で遺伝子発現をコントロールしていると考えられるヒストン修飾を解析してゆく。 また、内皮擦過モデルにおいて修復機転における糖尿病の影響および再生内皮細胞機能障害についても、分子生物学的に検討してゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【糖尿病動物に作成した虚血肢における静脈内皮機能障害の形態的・機能的および分子生物学的解析】虚血という第2のストレスをかけることで、組織における酸化ストレス蓄積を加速し、epigenetic changeを引き起こし、生活習慣病下の慢性動脈閉塞症疑似モデルを作成する。この慢性虚血肢モデルにおける静脈内皮機能低下やその背後にあると考えられるNO産生に関わる遺伝子発現、それを調節しているであろうヒストン修飾を組織染色や組織片から得たRNAや蛋白を用いて証明する。 【糖尿病動物の虚血肢静脈から確立した内皮細胞株における長寿遺伝子の発現解析】ヒストンアセチル化の証明やNO分泌分子機構との関わり、さらに長寿遺伝子発現状況などの分子機構を解明するために、epigenetic changeを起こした状態の内皮細胞培養株を確立して、NO産生に至る詳細な細胞内情報伝達系やそれに関わる転写因子、その転写因子を制御している長寿遺伝子の機能低下を解析する。 【虚血肢における静脈機能低下に対する薬剤介入】糖尿病と虚血の酸化ストレスによって低下した静脈内皮機能がスタチンなどの薬物介入によって改善するかどうかについてin vitroおよびin vivoで評価し、スタチンの効果発揮が細胞内分子機構のどの部分に影響しているのかを明らかにしてゆく。 【研究費使途】 上記の実験を遂行するため、プラスチック類に200千円、薬品類に600千円、動物購入および飼育経費に200千円、標本作製経費に100千円を見込んでいる。
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