2013 Fiscal Year Research-status Report
静脈内皮細胞機能のエピゲノム調節における長寿遺伝子の役割
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24659580
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
東 信良 旭川医科大学, 医学部, 教授 (30250559)
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Keywords | 内膜肥厚 / 静脈機能 / 内皮機能 / エピジェネティクス |
Research Abstract |
1)マウスにおける下肢静脈形態および機能の解析 高齢(生後48~56週齢)C57BL/6 mouseおよび同週齢のob/ob mouseの下肢静脈を対象として、その形態的変化および機能変化の差異と、それにおける長期糖尿病の影響を検討した。静脈の光学顕微鏡レベルにおいては、両群に全く差を認めず、内膜肥厚や炎症性細胞の接着あるいは浸潤を認めず、また、免疫染色上も期待された接着分子発現、あるいは内皮機能に関連するeNOSやその発現に関与する転写因子の発現に両群間で差を認めなかった。 2)ヒトにおける静脈標本採取とその解析 臨床で問題となる静脈機能異常は、超長期におよび生活習慣に影響されて起こるエビジェネティックな変化であるという仮説を立てて研究を行ってきたが、そうした長年の生活習慣の蓄積(metabolic memory)は高齢マウス、長期糖尿病マウスを使用しても、再現するのが極めて難しいという結論が見えてきており、マウスの検討と並行して、ヒトでの検討を行うことが必要という考えのもと、ヒト静脈片の形態的、機能的、およびそのエビジェネティックスを背景にある生活習慣病別に検討する臨床研究を倫理委員会の承認のもと、開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
臨床で問題となる静脈機能異常は、超長期にわたって生活習慣に影響されて起こるエビジェネティックな変化であるという仮説を立てて研究を行ってきたが、そうした長年の生活習慣の蓄積(metabolic memory)は高齢マウス、長期糖尿病マウスを使用しても、再現するのが極めて難しいという結果が得られてきており、実験動物作成の困難さが本研究の進捗を遅らせていることが理由であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生活習慣の超長期にわたる蓄積(metabolic memory)は、各種の炎症性ストレスや酸化ストレスが長くかつ複雑に絡み合う環境が起こりうるヒト特有の現象である可能性が高いことから、ヒトの静脈サンプルにおける評価を先に行って、まず、ヒトにおいて長期糖尿病罹患歴のある血管病患者や透析依存腎不全に伴う動脈閉塞症の患者の静脈機能や形態学的変化を評価する必要があると考えられる。そこで、倫理委員会の承認を得て、静脈グラフトを用いる手術時に同意が得られた患者から余剰静脈片を採取して、その静脈内皮機能、発現mRNA, 長寿遺伝子などを解析する臨床研究を開始した。今後は、その臨床研究で得られた結果から、エピジェネティクスの関与を明らかにし、どのようにして長年の生活習慣が静脈機能を悪化させるのか、その背景に長寿遺伝子が関与しているのかを明らかにしてゆく方針へ転換する。なお、その臨床標本から得られた結果について、分子生物学的に解析するうえで、再びマウスやラットでの検討が必要になると考えている。
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