2012 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病治療薬をターゲットとした新しい血管病治療の探索研究
Project/Area Number |
24659586
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古森 公浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40225587)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂野 比呂志 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80584721)
成田 裕司 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00528739)
児玉 章朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10528748)
杉本 昌之 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (00447814)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 末梢動脈閉塞症 / 静脈グラフト血管内膜肥厚 / 重症虚血肢 / 動脈瘤 |
Research Abstract |
マウス下肢虚血モデルにおける2型糖尿病治療薬(メトフォルミン)のAMPK/eNOS活性経路を介した血管新生促進作用に関する研究。 [背景と目的]2型糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞、下肢動脈硬化症といった重篤な大血管障害の罹患率を上昇させる危険因子である。メトフォルミンは2型糖尿病治療薬であり、心血管保護作用を有する事が知られている。本研究では、マウス下肢虚血モデルを用いて、メトフォルミン投与による血管新生効果について検討した。 [方法]野生型マウス(N=20)とeNOS遺伝子欠損マウス(N=10) を、各々メトフォルミン投与群(強制経口投与,300mg/kg/day) と非投与群に分類し、マウス片側下肢虚血モデルを作製した。血管新生の効果判定として、1.レーザードプラ血流解析を用いて術後3,7,14,21,28日目に計測、2.CD31免疫組織染色を用いて毛細血管密度を測定、3.Western blot法を用いてAMPKとeNOSのリン酸化(活性化)率を測定。 [結果]野生型マウスでは、術後28日目にメトフォルミン投与群で有意に虚血肢/健肢血流比が改善した。虚血肢の毛細血管密度は、投与群で有意に高かった。AMPKとeNOSのリン酸化率も投与群の虚血肢で有意に高かった。一方、eNOS遺伝子欠損マウスではAMPKのリン酸化率は投与群で有意に高かったが、下肢血流と毛細血管密度は両群で差はなかった。 [結論]メトフォルミン投与により虚血肢の血流は改善した。その機序として、AMPK/eNOS依存経路の活性化により、血管新生が促進される事が考えられた。本研究により、メトフォルミンは血糖降下作用に加えて、虚血状態における血管新生促進作用を有しており、虚血性動脈疾患の病態を改善する効果が期待できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、経口糖尿病治療薬の血管保護作用に関して検討し、糖尿病治療薬を用いた、血管外科領域における新規治療戦略を提唱することにある。具体的には、以下の3つの実験を行うことを目標とした。 1. 下肢虚血モデルにおける血管新生能の比較検討 上記に示した通り2型糖尿病治療薬(メトフォルミン)のAMPK/eNOS活性経路を介した血管新生促進作用に関する研究を行い、メトフォルミン投与により虚血肢の血流は改善した。その機序として、AMPK/eNOS依存経路の活性化により、血管新生が促進される事が考えられた。 以上の結果を得て順調に経過している。今後は以下に示す研究目標を達成すべき研究を行う予定である。 2.静脈グラフト内膜肥厚及びステント再狭窄抑制効果の比較検討 3.動脈瘤モデルにおける瘤化抑制効果の比較検討
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Strategy for Future Research Activity |
1.静脈グラフト内膜肥厚及びステント再狭窄抑制効果の比較検討 ウサギを用いて自家静脈グラフト(頚静脈を頚動脈へ移植)およびステント留置モデル(内頚動脈より外径3mmのバルーン拡張型ステントを留置)を作成する(JVascSurg.2005,2006,2007,2008,J Surg Res.2007)。さらに閉塞性動脈硬化症の臨床例に極めて類似したpoor run offモデルと高脂血症ウサギを組み合わせて、3種類の内膜肥厚モデルを実験に使用する。 それぞれのモデルに対して、術前1週間前よりBG薬、TZD薬、DPP-IV阻害薬の経口投与を開始し、その内膜肥厚抑制効果を各薬剤投与群間で比較検討する。 2.動脈瘤モデルにおける瘤化抑制効果の比較検討 マウスの腹部大動脈を露出し、0.5MCaCl2溶液に15分間暴露させ動脈瘤モデルを作成する。術前1週間前よりBG薬、TZD薬、DPP-IV阻害薬の経口投与を開始し、動脈瘤化の抑制効果を各薬剤投与群間で比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に引き続き、実験のための動物の購入、実験・動物手術に必要な試薬・薬剤の購入・施設使用料、さらに研究結果を学会発表のするための旅費や参加費などが必要である。 物品費として750,000円、旅費として400,000円、その他として250,000円を直接経費として計画いたします。
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Research Products
(10 results)