2012 Fiscal Year Research-status Report
末梢血B細胞から形質細胞分化誘導システムの樹立と高感度抗体産生モニタリング
Project/Area Number |
24659587
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 孝彰 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (70314010)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽根田 正隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (50436995)
岩崎 研太 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (10508881)
三輪 祐子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90572941)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 移植・再生医療 / Bリンパ球 / 抗体 |
Research Abstract |
臓器移植では有効な薬剤の開発等によりT細胞性拒絶反応はほぼ克服されたが、長期成績を妨げる慢性抗体関連型拒絶反応(CAMR)の制御が課題となっている。薬剤の適切な使用(個別化療法)によるCAMR予防、早期診断、治療が重要である。末梢血中のHLA抗体の検出、特異性解析が行われているが、CAMR初期の段階では移植グラフトに抗体が吸着されて末梢血では検出が困難である。この問題を解決するために、末梢血B細胞から形質細胞まで分化誘導するin vitro培養システムの樹立が不可欠である。 まず、B細胞の薬力学解析として細胞増殖を評価するアッセイを確立した。(A) T細胞非依存性(抗IgM抗体を用いたBCRを介した刺激)、(B) T細胞依存性(CD40-CD40L経路からの刺激)のB細胞培養増殖後、CFSE-flow cytometryおよびシグナル伝達解析を実施した。前者(A)はとくにNFATの関与によりCNIでの抑制が認められたが、後者(B)は認められなかった。しかし、T細胞には、カルシニューリン阻害剤、 代謝拮抗剤, mTOR阻害剤ともにCD40L, ICOSの 発現抑制が認められ、T細胞依存性のB細胞抑制に働くと考えられた。 次に、培養系で末梢血B細胞から形質細胞まで分化誘導を試みた。CD40L, CpGODN、IL-2,IL-6,IL-10,IL-15を用いた3ステップ培養法により、末梢血CD19陽性B細胞から、活性化B細胞、形質芽細胞、形質細胞まで分化誘導に成功し、7日以降の培養上清にIgG産生を認めた。一部のB細胞培養では、上清中にHLA抗体を検出した。現在臨床で使用されている代謝拮抗剤, mTOR阻害剤Iを用いて、B細胞分化増殖の作用部位の違いを明らかにした。さらにIL-21を用いたアッセイの簡略化、APRIL添加によるIgG産生の増加(5-10倍)に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B細胞に特化した研究であり、研究歴の長いT細胞に比べ、分化、増殖を促進する培養システムが樹立されていないため、国内外での学会、研究会で関連する研究について情報収集を積極的に実施した。本年度では、T細胞依存性とT細胞非依存性のB細胞増殖を評価するシステムを開発した。In vitro培養系で、成熟B細胞から形質細胞までの分化も詳細に解析することができ、薬剤の作用機序の違いを明確にすることができた。また、培養上清中に抗体産生も認められたことから、成熟B細胞から形質細胞への分化培養の系を確立したと言える。さらに、一部の臨床検体(血清中にHLA抗体産生が認められる末梢血B細胞)を用いて、培養上清中にも、HLA抗体を検出することができた。順調に、研究は進んでおり、アッセイの改善を行い、臨床検体の解析に進む予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
末梢血B細胞の分化増殖培養に成功し、IgGの検出は可能となったが、HLA抗体の検出は困難であった。HLA sensitized患者の末梢血から目的とするHLA抗体を産生するために、ナイーブB細胞よりもメモリーB細胞の分化を促進する培養系を確立し、より効率的に形質(芽)細胞数を増加し、上清中にIgG抗体を産生するシステムが必須である。 CD27陽性メモリーB細胞を分離後の培養を検討し、培養中のCD40L刺激(2量体、発現細胞、発現量の多寡)、B細胞分化誘導因子であるAPRIL, BAFFの添加時期、量など、様々なファクターの最適化を検討する。また、T細胞からの液性因子として、CD3陽性細胞をCD3/28刺激培養後の上清を用いることも検討する。臨床検体(凍結保存してあるB細胞)を解析する必要があり、効率的、経済的に実施可能なアッセイが不可欠である。 移植患者の血清中のHLA抗体と比較検討し、ドナー特異的抗体(DSA)のグラフト吸着の有無を明らかにし、また、移植前の検体を用いることで、将来のDSA産生のリスクファクター解析を行う予定である。 代替法についての検討も継続し、形質芽細胞の段階でのB細胞受容体(BCR)をHLA抗原を固定したマイクロビーズを用いてFlow cytometry にて解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
B細胞培養に必要な、プラスチック器具、培養液に加えるCD40L, APRIL, BAFF, IL-2, 21などの各種サイトカイン、末梢血からB細胞、メモリーB細胞を分離する磁気ビーズ、B細胞分化(活性化B細胞、形質芽細胞、形質細胞)を検出するFlow cytometry に用いる蛍光標識された抗CD38、CD138抗体、IgG抗体の検出(ELISA)、血清中のHLA抗体特異性検査(Single antigen beads)の試薬購入費に充当し、精力的に検体の解析を進めていく予定である。
|
Research Products
(8 results)