2012 Fiscal Year Research-status Report
肝再生および肝障害におけるずり応力とカベオラのメカニズムの研究
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24659601
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
佐藤 好信 昭和大学, 医学部, 講師 (20313538)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | カベオラ / 肝再生 / 癌増殖 / 免疫 / ずり応力 |
Research Abstract |
肝再生研究は、古くて新しいテーマである。そのメカニズムは多くの研究者によって明らかになってきている。我々は肝切除後の肝再生メカニズムについて、shear stress(ずり応力)がそのトリガーになっていることを世界で初めて提唱した。また培養肝細胞にshear stressをかけることにより、matrix関連遺伝子であるPAI-1mRNAが重要な働きをすることを報告した。そしてまた血管内皮細胞にshear stressをかけることにより内皮細胞のカベオラ分子から脱分極を起こし細胞再生を起こすことが解っており、カベオラが内皮細胞再生のトリガーとなっていることが解ってきた。 カベオラは約50年前に同定された膜マイクロドメイン構造をもち、近年では癌増殖抑制作用や糖尿病治療への応用も研究されている。またカベオラの重要な構成要素であるカベオリンノックアウトマウスの肝臓は著しくその再生能力が損なわれているとの報告がある。しかしそのメカニズムについての検討はない。我々はこれまで肝切除後肝再生のメカニズムをshear stress観点から世界で初めて提唱検討してきており、肝再生のみならず、胸腺外分化T細胞の観点から肝内免疫へのshear stress関与の報告も行っている。最近ではshear stressが内皮細胞と胸腺外分化T細胞であるγ/δ T-Lymphocyteの活性化をもたらすという新たなメカニズムも報告されている。このようにカベオラは細胞再生・癌増殖・免疫といった生命の根源に関わる重要な働きをしていることが解ってきている。 本年度まず、種々の肝組織(正常肝、再生肝、肝細胞癌、転移性肝癌)を用い、カベオラと肝再生、さらにカベオラと癌増殖について臨床病理学的検討を進めるべく準備した。しかしながら自分自身の人事異動等、研究する上で困難が生じ順調に遂行できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度において、まず臨床病理学的に肝細胞におけるカベオラの確認を行うこととした。移植ドナーの正常肝、肝葉切除後直後の再生肝、慢性肝炎、肝硬変における肝組織、または肝細胞癌、転移性肝癌におけるカベオラの免疫染色を行い。再生肝や癌増殖におけるカベオラの検討を予定した。またこれまで報告した肝幹細胞のマーカーであるCD133やNCAMとカベオラの関連性についても検討を予定し準備をした。しかし本年度自分自身の人事異動等の理由で研究を順調に進める事ができなかった。今後新たな施設において、研究を進めて行く所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回施設異動に伴い研究環境が変わったため、研究の内容を少し変更しつつ行っていきたい。当施設の病理学教室の強力も得ながら、上記に示した、正常肝、肝切除後再生肝、門脈圧亢進症を有する慢性肝炎肝組織、硬変肝の肝組織を用い、再生肝や門脈圧亢進状態の肝組織における肝再生とカベオラの臨床病理学的検討をCD133やNCAMマーカーを用い、ヒトhepatic stem/progenitor cellとの関連から、カベオラと再生の検討を行いたい。 さらに、肝細胞癌と大腸癌転移性肝癌を用い、caveolin-1とK-ras mutationの臨床病理学的検討を行いたい。これによりカベオラと肝再生そして癌増殖という細胞再生のメカニズムの解析を行いたい。 そしてまた培養肝細胞にshear stressを負荷し、上記のメカニズムのさらなる検討を加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1。再生肝、門脈圧亢進状態の慢性肝や硬変肝を用いてcaveolin-1,CD133,NCAM抗体を用い免疫染色を行い、臨床病理学的検討を行す。 2。上記に加え、正常肝、肝細胞癌、転移性肝癌のcaveolin-1とK-ras mutationの関連性の臨床病理学的検討を行う。 3。培養肝細胞にshear stressを負荷し、肝細胞におけるカベオラの動態を検討する。
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