2012 Fiscal Year Research-status Report
肝細胞癌における転移・再発に関与する癌幹細胞の同定及び解析
Project/Area Number |
24659610
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岡 正朗 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70144946)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
恒富 亮一 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10420514)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 肝癌 / 癌幹細胞 |
Research Abstract |
本研究は、再発頻度の高い肝細胞癌を対象として、癌の進展に伴って発生すると考えられる転移性の癌幹細胞(CSC) に対するマーカーの同定及びその機能解析を行う。 低分化型肝細胞癌より樹立されたヒト肝癌細胞株 (SK-HEP1, 親株) を当科で開発した培養液を用い培養することでsphere細胞を誘導した。この方法で得られたSphere細胞について、stemnessマーカー発現、既知のCSCマーカー発現、抗癌剤耐性能、マウス腫瘍形成能、細胞周期を親株と比較した。誘導されたSphere細胞 (SK-sphere) は、元のSK-HEP-1株と比較して、幹細胞マーカー (NANOG and LIN28A) のmRNA発現が亢進し、ALDH1のmRNA発現及び活性の亢進が観察された。SK-HEP-1におけるIC70以上の5-FU, Docetaxel, Doxorubicin, SAHA存在下においても、SK-sphereは70%以上の生存を示した。SK-sphereは、免疫不全マウスへの脾臓注入実験から、肝転移能の亢進を示した。細胞周期において、SK-sphereは親株と比べてG0/G1期の割合の増加とP21 mRNA発現の増加を示した。また、SK-sphereにおけるHIF1-alpha mRNAの発現亢進とROSの低下が観察された。さらに、SK-sphereのEpCAMの減少とVimentinの増加がタンパクレベルで確認された。また、未分化型肝細胞癌由来細胞株 (HLE) からは若干のSphere細胞の形成が確認されたが、高分化型肝細胞癌由来細胞株 (HuH-7, Hep 3B) からは、Sphere細胞の形成は観察されなかった。 これらの結果から、CSCの特性をさらに探究することでCSCの診断・治療のターゲットを探索する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始時の独自仮説に基づき、幹細胞用の培地を基にした特殊培地を用いることでSphere 形成の誘導を試み、CSCs はほとんど含まれていないとされる低分化型由来肝細胞癌細胞株 (SK-HEP-1) から高効率にSphere を誘導できることを確認した。得られたSphere細胞は、抗癌剤耐性能、肝転移能、上皮間葉系移行等のCSC様の特性を有する事を確認した。また、これまで報告の肝細胞癌CSCマーカーについては、これまでの高分化型肝細胞癌から単離されたCSCsとは、異なるプロファイルを示した。以上より、低分化型肝細胞癌細胞株からのCSC特性を有する細胞集団の誘導について、予定通り達成した。これらの結果により、CSCの網羅的遺伝子解析および蛋白解析が確実に行える。
|
Strategy for Future Research Activity |
A. 肝細胞CSC様細胞(SK-sphere) 特異的マーカーの探索 肝細胞癌CSC様細胞の誘導及び培養法を確立できたため、この技術を基に、転移能に関わる肝細胞癌CSC様細胞特異的新規遺伝子、蛋白的検索を行い、特異的マーカーの検索を行う (恒富亮一)。我々が得意としてきたマイクロアレイ (Cancer Res, 2002年: Oncogene, 2003年: LANCET, 2003年: LANCET, 2004年:LANCET, 2005年) と新規蛋白同定 (Proteomics. 2005: Proteomics. 2006) の技術と蓄積した知識を駆使することで、癌幹細胞特異的マーカーの同定を行う。 B. 新規マーカーによるCSCs 様細胞への機能的影響の検討 新規マーカーについて、RNA 干渉法によって発現をノックダウンし、Sphereアッセイ、マウス腫瘍形成アッセイ、抗癌剤耐性アッセイを行い、CSCs 様表現型に影響するかどうかを検証する。ノックダウンによって影響の見られた遺伝子については、強制発現系を構築し同様に検証する。新規マーカーについて、阻害剤やアゴニスト・アンタゴニストが存在する場合にはそれらを用いても検証を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品は、癌幹細胞(CSC)の網羅的遺伝子及び蛋白解析及びその検証のために使用する。免疫不全マウスを用いた肝転移能や腫瘍形成能を評価する必要があるため、マウス飼育料を計上した。また、旅費として、学会での成果発表旅費に使用する。
|