2012 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化を促進する大動脈治癒型ステントグラフトの開発
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24659631
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
島村 和男 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10507205)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白川 幸俊 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座准教授 (20457013)
鳥飼 慶 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70364792)
倉谷 徹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (90448035)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 大動脈瘤 / ステントグラフト / 自己組織化 / ONO-1301 |
Research Abstract |
大動脈瘤や大動脈解離など種々の大動脈疾患に対する外科治療は、従来の開胸・開腹による人工血管置換術から、血管内治療であるステントグラフト(SG)を用いた低侵襲治療(endovascular aortic repair; EVAR)に世界的に移行しつつある。これは後者が圧倒的に良好な初期成績を示す為である。しかしながら、遠隔期において数~数10%においてSGの血管接着不全によるEndoleakや、SGのズレ(migration)が生じてしまう13)ことが報告されている。更には、SG内挿後に大動脈壁に新たな内膜の亀裂(intimal tear)が生じたり、治療により解離腔への血流を遮断し解離腔内を血栓化させた後も再解離や破裂を起こす危険性があるという、大動脈解離に対するSG治療による問題点も残っている。そこで、本研究では内因性修復因子の産生を促進することで組織再生を促すといわれるプロスタサイクリンの合成製剤である「ONO-1301」と、「生体吸収性素材」を組み合わせた新しいステントグラフトを開発し、急性大動脈解離において、損傷した大動脈壁の修復および大動脈解離腔の自己組織化を早期に実現し、従来のステントグラフトでは成し得なかった大動脈解離の完全治癒を目指すことを研究目的としている。本年度は、本研究の基盤となるONO-1301のNHDFs・HUVECsに対する効果についての検討およびONO-1301溶出性ステントクラフトの新規開発およびその徐放性の検討を行い、前進が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にて示した以下の点において、下記の成果が得られたため。 1。ONO-1301のNHDFs・HUVECsに対する効果についての検討およびONO-1301によるNHDFsからのHGF,VEGF分泌促進試験 NHDFsを培養下、ONO-1301(10nM/L,100nM/L,1000nM/L)を投与した。72時間後の培養上清のELISAでは、コントロ-ル群に比べ、投与量依存性にHGFおよびVEGFの発現の亢進が認められた。またReal-time PCR法にてNHDFsにおけるmRNAの発現を調べると、同様に投与量依存性にHGFおよびVEGFの発現の亢進が認められた。 2。ONO-1301溶出性ステントクラフト(SG)の新規開発およひ徐放性の検討 SGの材料にはステンレス製Zステント(Gianturco Z stent;径/長20/25mm; William Cook Europe A/S, Bjaeverskov, Dennmark)を用い、クラフトとして当科にて開発研究してきたPET/PGA(Polyethilene terephthalate/ Polyglycolic acid)人工血管を用いた。ONO-1301 Micro Sphere製剤をPET/PGAに凍結乾燥固定させることで、ONO-1301溶出ステントグラフトを作成した。また溶出性試験においてはコントロ-ルとして生体用ゼラチンA(ニッピ社)およびゼラチンB(新田ゼラチン社)にONO-1301を懸濁、グラフトに塗布し、その薬剤放出性を比較した。結果、ゼラチン製剤によりONO-1301を塗布したSGに比べ、Micro sphere製剤を凍結乾燥固着したSGにおいて、ONO-1301はより緩徐に放出された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に本研究の基盤となるONO-1301のNHDFs・HUVECsに対する効果の検討およびONO-1301溶出性ステントクラフトの新規開発・徐放性の検討を行い、本研究の基礎的事項が確認された為、動物実験による検証を行う方針である。 1)大動脈解離モデルの作成およびステントグラフト留置実験 大動脈解離モデルの作成には体重20kg前後のHBD成犬を用い、Katoらの報告に準じて作成する。下行大動脈に実験的大動脈解離を作成した後で大動脈造影を行い解離腔が描出されることを確認し、引き続いてステントグラフト留置の手技に移る。前述の如く作成したステントグラフトを、デリバリーシステム内に格納し大動脈内に挿入、再度大動脈造影を行い解離entryの位置を確認した後に、entryを塞ぐようにステントグラフトを留置する。 2)ONO-1301溶出性ステントグラフトによる治療効果検討 評価項目としては、ステントグラフト移植後2週間ごとの造影検査によるによるmigrationやendoleakの有無の評価と、移植後1ヶ月目、2ヶ月目における摘出標本の病理組織学的評価(グラフト内の内膜化・自己組織再構築・解離腔の自己組織化)行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度においては、動物実験に必要とされる雑種成犬の購入費および飼育費が最大出費となる計画である。研究計画書に記載した通り、雑種成犬1匹の値段を70千円とし、生存例25匹を得るための購入数を30匹として試算した。また、飼育費に関しては1匹当たり1日1千円として計算し、30匹のうち、半数が1か月モデル、残りの半数が2か月モデルであるので、倫理規定による30匹分の術前1週間の飼育期間の費用と合わせ試算した。 次に、ステントグラフト作成費として、、ステント (Gianturco Z stent 1本25mm長x2連)購入費、PET/PGAグラフト購入費、ONO-1301塗布関連費などを試算した。 また動物への植え込み費用として、手術器具(実験に使用するシース、ガイドワイヤー、カテーテル類、試薬や縫合糸などの消耗品)の購入費に使用する計画である。
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Research Products
(2 results)