2013 Fiscal Year Annual Research Report
浸潤突起を選択的に採取できる新技術レーザープロテオミクスによる肺癌浸潤機構の解明
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24659633
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡田 守人 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (70446045)
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Keywords | トランスレーショナル研究 / 外科 |
Research Abstract |
偽足突起は培養細胞においてその腹側から垂直方向に突出するアクチンリッチな構造物であり、細胞の運動、癌細胞の浸潤に重要な役割を担う。ヒト腫瘍細胞をファイブロネクチンでコートされた3µmの穴あきメンブレンの上で培養すると、その細胞の運動能に合わせて偽足突起を穴に突出するように形成する。これにエキシマレーザーにより水平方向にレーザーを照射させ、細胞の細胞体の部分のみを除去する。これにより残存した偽足突起は明らかなダメージなくタンパク採取が可能であった。この方法により採取した偽足突起のタンパク分画と細胞体のタンパク分画をそれぞれ抽出後に高感度蛍光色素により標識させ、2次元電気泳動に供した。結果、2508個のタンパクスポットが観察され、211スポットが偽足突起分画タンパクと細胞体分画タンパクとの間で4倍以上の有意な発現差を持って同定された。これらを質量分析に供して46個の偽足突起に高発現を示す候補タンパクを同定した。これらの内、既に細胞運動への関与が知られているRAB1A, HSP90B, TDRD7, vimentin に関して細胞蛍光免疫染色にてタンパク発現を確認したところ、偽足突起への高発現が認められた。また、RAB1Aに関して過剰発現および発現を抑制する実験をおこなったところ、過剰発現させて細胞株では偽足突起の数が増加し、突起の伸長幅も増大したが、RAB1Aの発現を抑制させるといずれも減少した。偽足突起に高発現が認められるタンパクは細胞の運動、浸潤に非常に強く関与している可能性が示唆された。この技術による偽足突起に特異的なタンパクの同定は偽足突起の更なる理解や、腫瘍細胞における悪性の表現型の理解のみならず悪性腫瘍の新たな治療開発に大きな利益をもたらす。この新技術を生物学的特性の異なる複数のヒト肺癌細胞株を用いて、新規ターゲットの同定とその浸潤機構の解明を行うことができることが解った。
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