2013 Fiscal Year Research-status Report
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24659649
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
元野 誠 京都大学, iPS細胞研究所, 特定研究員 (30619622)
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Keywords | グリア細胞 / ドパミン神経前駆細胞 / 分泌因子 |
Research Abstract |
パーキンソン病の治療は薬物療法や脳深部刺激療法が主に行われているが、パーキンソン病により減少しているドパミン神経細胞を補充している治療法ではないため、根本的な治療法ではないと考えられる。そこで、幹細胞からドパミン神経細胞を誘導し、脳内に移植することにより、失われた神経細胞を補充する細胞移植治療法が研究されている。ドパミン神経細胞の誘導には成功しているが、脳内に移植した後のドパミン神経細胞の生存率が低いことが問題となっている。そこで、神経細胞を保護すると考えられているグリア細胞に着目し、研究を行ってきた。 前回はマウスES細胞から分化誘導したドパミン神経前駆細胞とマウス胎児中脳腹側部位の細胞から培養したグリア細胞をラミニンやファイブロネクチンでコートした培養皿で共培養することで、グリア細胞にはドパミン神経前駆細胞の生存と分化を促進する機能があることがわかった。そこで、これらの細胞をマウスの脳内に移植して、ドパミン神経の生存率が上がるかを試みたが、期待された結果が得られなかった。 また、ヒトのiPS細胞においてもマウスのグリア細胞がヒトのドパミン神経前駆細胞の生存と分化を促進する機能があるかを調べた。本研究室で臨床応用に向けて開発された分化誘導法で誘導したドパミン神経前駆細胞とグリア細胞を共培養したところ、ドパミン神経のマーカーであるチロシン水酸化酵素(TH)を発現する細胞が減少してしまった。そこで、グリア細胞から分泌される因子を含んだ培地でドパミン神経前駆細胞を浮遊培養で培養したところ、THの発現する細胞が増加した。以上のことから、ヒトの分化誘導細胞において、マウスのグリア細胞から分泌される因子がドパミン神経前駆細胞の分化を促進する効果があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年のIn vitroでの結果から、マウスのES細胞から分化誘導したドパミン神経前駆細胞とグリア細胞をマウスの脳へ共移植することによって、ドパミン神経の生着率を上げることができると期待されたが、期待された結果が得られなかった。移植するときのグリア細胞の分化状態やドパミン神経前駆細胞との移植の方法を検討する必要がある。 一方で、マウス胎児中脳腹側細胞から分化誘導したグリア細胞の分泌因子がヒトのドパミン神経前駆細胞の分化を促進する機能があることを示すことができた。また、昨年、マウスのES細胞から分化誘導したドパミン神経前駆細胞とグリア細胞をマウスの脳内に移植した際に、移植した細胞が増殖し、腫瘍化したような結果になり、問題になっていた。今回、本研究室で開発されたドパミン前駆細神経胞の分化誘導法を用いて分化誘導した細胞をソーティングすることで未熟な細胞を取り除くことができた。 以上より、移植細胞の腫瘍化の問題は分化誘導した細胞をソーティングすることにより改善され、また昨年移植細胞のマーキングが問題となっていたが、ヒトの細胞が使えるようになり、ヒト特異的抗体を用いることで移植細胞を区別することができるようになった。現在は移植の方法を検討しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
グリア細胞から分泌される因子の中で、脳由来神経栄養因子やグリア細胞株由来神経栄養因子がドパミン神経細胞の細胞死の抑制や分化促進に関わっていると同定されているが、今回の実験結果から、これらの因子以外にもドパミン神経前駆細胞の分化を促進する因子が含まれていると考えられる。そこで、グリア細胞の分泌因子の中で、特にドパミン神経前駆細胞の細胞死を抑制する因子や移植細胞の神経突起を伸長させる因子、シナプス形成を促進する因子を中心に調べる。このことを調べるために、分化誘導したグリア細胞の遺伝子発現解析やグリア細胞の分泌因子を含んだ培地の二次元電気泳動によるプロテーオーム解析をしていく予定である。以上のような解析で候補として挙がってきた因子について、In vitroやIn vivoでの効果を検討していく。In vitroの解析では、ドパミン神経細胞の生存に関わっていると報告されているNurr1の発現とTHの発現を主に解析していく。In vivoの解析では、移植細胞の突起の伸び方やドパミン神経細胞の生着率を解析していくが、候補因子がドパミン神経前駆細胞に一過的に作用するのかあるいは恒常的に作用するのかを調べる必要がある。恒常的に作用する必要があれば、遺伝子操作により予め脳内にその因子が発現している環境を作ることを考えている。
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