2012 Fiscal Year Research-status Report
蛍光技術を駆使した革新的骨髄イメージング法の開発と骨転移の時空間的解析
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24659679
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
疋田 温彦 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60443397)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 骨転移 |
Research Abstract |
骨転移の溶骨性あるいは造骨性の傾向を規定するがん細胞とがん微小環境との相互作用の分子メカニズムを解明するために、2光子励起顕微鏡や第2次高調波といった非線形光学技術を駆使し、がん細胞および微小環境を構成する破骨細胞、骨芽細胞と骨細胞の4種の細胞を同時にかつ経時的に解析できる革新的骨髄インビボイメージング系の構築に向けた実験を行った。 まず、黄色蛍光蛋白Venusを発現するレンチウイルスを作成した。これを供与を受けた、溶骨性病変を生じるヒト前立腺がん細胞株PC-3にルシフェラーゼを発現させたPC-3-Lucに導入し、蛍光を発することを蛍光顕微鏡を用いて確認した。これをヌードマウス脛骨に移植し、脛骨骨髄に対する2光子顕微鏡を用いた蛍光インビボイメージングを行ったところ、骨に生着したがん細胞を検出可能であった。 赤色蛍光タンパク質DsRed発現レンチウイルスも作製済みであり、また造骨性前立腺がん細胞VCapについてもすでに供与を受けている。 また、破骨細胞特異的なCathepsin Kプロモーターの下流にCreリコンビナーゼを発現するマウスCatKp-Creと、黄色蛍光タンパクVenusとルシフェラーゼの融合タンパク質をCre依存的に発現するマウスを掛け合わせ、発光および蛍光イメージングをインビトロおよびインビボで行った。 インビボ発光イメージングにおいては、骨の存在部位に発光シグナルを確認可能であったが、骨髄内の蛍光は検出できなかった。また、インビトロでも蛍光は検出できなかった。このため、蛍光タンパク質をCre依存的に発現するflox-TdTomatoを入手した。また、骨芽細胞系(骨芽細胞および骨細胞)に特異的なI型コラーゲン2.3kbプロモーター下流にCreリコンビナーゼの配列を持つマウスC1p-Creマウスを導入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス溶骨性前立腺がん骨転移モデルは本研究の基礎となるが、申請者は、レンチウイルスにより蛍光蛋白質Venusの遺伝子を導入した溶骨性ヒト前立腺がん細胞PC-3-Luc-Venus細胞をマウス脛骨骨髄に移植し、生着を確認した。骨髄内の蛍光を検出することはこの研究において克服すべき困難な点であると考えられたが、申請者は2光子励起顕微鏡を用いた蛍光インビボイメージングで検出することができた。 骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞特異的に蛍光蛋白質を発現するマウスについては、破骨細胞および骨芽細胞系細胞(骨芽細胞および骨細胞)にそれぞれ特異的なプロモーターであるCathepsin KプロモーターおよびI型コラーゲン2.3kbプロモーターの下流にCreリコンビナーゼの配列を持つマウスC1p-Creマウスを入手することができた。これと掛け合わせるためのCre依存的に蛍光タンパク質を発現するマウスも準備されている。 さらに、この研究において必要である、造骨性のヒト前立腺がん細胞VCap、蛍光タンパク発現レンチウイルスについても準備されている。
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Strategy for Future Research Activity |
造骨性病変を生じるVCap細胞にもレンチウイルスにより蛍光標識を行い、マウス脛骨に移植することにより、本研究のもう一つの基礎となる造骨性前立腺がん細胞骨転移モデルを作成する。このマウスについて2光子励起顕微鏡を用いて蛍光インビボイメージングを行い、がん細胞の生着と骨形成を確認する。 また、破骨細胞特異的なCathepsin Kプロモーターの下流にCreリコンビナーゼを発現するマウスCatKp-Cre、骨芽細胞系(骨芽細胞および骨細胞)に特異的なI型コラーゲン2.3kbプロモーター下流にCreリコンビナーゼの配列を持つマウスC1p-Creマウスを蛍光タンパク質をCre依存的に発現するflox-TdTomatoと掛け合わせ、それぞれの細胞特異的に蛍光を発することをインビトロおよびインビボ蛍光イメージングにより確認する。 このマウスに対してPC-3細胞およびVCap細胞を用いてそれぞれ溶骨性、造骨性骨転移モデルを作成して観察する。 さらにそれぞれの骨転移モデルにおいて、破骨細胞に抑制的に働くビスフォスフォネートやOsteoprotegerin、骨芽細胞におけるRANKL発現を上昇させて破骨細胞形成を促進するPTHrPや骨芽細胞による骨形成を促進するEndothelin-1に対するアンタゴニスト 、破骨細胞による骨吸収の結果として骨基質内から放出されるTGF-βやIGFに対する中和抗体、骨細胞から分泌され骨芽細胞による骨形成を抑制するSclerostinに対する中和抗体などを投与し、破骨細胞、骨芽細胞およびがん細胞の動態や相互作用の変化をインビボイメージングにて観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費の多くは、実験に必要な消耗品費やモデルマウスの飼育維持の費用に充てられる。具体的には、マウスの維持、バッククロス、細胞培養、遺伝子解析やタンパク質機能解析などの細胞生物学実験/分子生物学実験および動物実験に必要な細胞培養試薬、細胞培養器具、薬品類、遺伝子工学試薬、光学材料などを購入する。 また、新技術導入や実験手技の向上のための調査・打ち合わせおよび研究成果発表のために国内旅費と外国旅費、研究遂行のための文献調査・試薬購入等のための業者との連絡のための印刷・通信費を使用する。
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