2012 Fiscal Year Research-status Report
内因性硫化水素による骨芽細胞機能制御メカニズムの解明
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24659686
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
中村 貴 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80431948)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 骨・軟骨代謝 |
Research Abstract |
糖尿病は骨粗鬆症の危険因子である事が疫学調査の結果から明らかとなっているが、骨減少のメカニズムは不明である。本研究では、糖尿病で不足するビタミン B6に着 目し、糖尿病性骨粗鬆症はビタミン B6欠乏によるシスタチオニンβ合成酵素(CBS)の機能低下 に伴う内因性硫化水素(H2S)産生減少によって骨芽細胞機能の低下を引き起こす事が原因であるとの仮説のもと、マウス遺伝学の手法を駆使する事で生体骨組織レベルでのガスメディエーターを介した骨代謝制御機構の解明を目的として研究を進めている。 平成24年度は全身性CBS遺伝子ノックアウト(KO)マウスの解析を中心に行なった。CBS KOマウスはその殆どが出生後に致死となる事から、交配規模を拡大する事で複数のKO個体を得た。これらのマウスから骨組織を採取し、解析を行なったところ、骨代謝異常を示す結果が得られた。そこで、骨組織を中心にリアルタイムPCRによる骨代謝マーカー遺伝子の発現を調べた。これに加えて、全身におけるミネラル代謝異常が疑われたため、ミネラル代謝に関わる組織の観察に加え、関係する遺伝子の発現レベルについて解析を行なった。これと並行して、組織特異的なCBSの機能を明らかにする目的で、条件付きCBS遺伝子破壊マウスの樹立を試みており、これまでに標的ベクターの構築およびES細胞への遺伝子導入を行い、1次スクリーニングにて複数個のクローンを得ている。今後、相同組換え体である事を確認次第、キメラマウスの作成を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでCbs遺伝子欠損によって起こる骨組織異常は明確に示されておらず、Cbsが実際に骨代謝制御に関与しているのかどうか明らかではなかった。これはCbs KOマウスが出生後に致死となることが一つの原因であった。我々は交配規模を大きくする事でこの問題の解決を図り、これにより複数個体のCBS KOマウスを得る事に成功した。これらのマウスを解析したところ、申請時に予測していなかった新たな骨代謝制御機構の存在を示すデータが得られた。本研究によって得られた結果は骨代謝研究に大きなインパクトを与えると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に明らかとなったCbs欠損に伴う骨代謝異常がおこるメカニズムについて明らかにしていく。具体的には、三次元マイクロCTを用いた骨構造解析、骨形態計測法による骨組織内細胞動態の解析、リアルタイムPCRあるいはcDNAマイクロアレイによる、骨代謝制御因子の遺伝子発現解析を中心に行なう事で、Cbsによる骨代謝制御機構を明らかにしていく。また、引き続き、条件付きCbs遺伝子破壊マウスの樹立作業を行なう。 未使用額の発生は、効率的な物品調達を行なった結果であり、翌年の消耗品等の購入に充てる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度の未使用額と合わせて、マウス作出のためのES細胞培養試薬、血清の他、マウス飼育維持費・動物関連の消耗品費のほか、遺伝子発現解析試薬、抗体、プラスチック消耗品費などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)