2012 Fiscal Year Research-status Report
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24659692
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
青江 知彦 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90311612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小見田 真理 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (90589194)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 転換神経細胞 |
Research Abstract |
末梢神経あるいは中枢神経の損傷による神経障害性疼痛に対しては、慢性期には三環系抗うつ薬やプレガバリン、ガバペンチン、クロナゼパムなどの抗てんかん薬による内服治療が主体になるが、難治性で服薬も長期に渡る症例が多い。最近、新たな治療の試みとして、ラットを用いた実験でマウスの胚性幹細胞(ES)細胞から分化誘導させたGABAergic神経細胞のくも膜下投与によって脊髄損傷に因る神経障害性疼痛が軽減される事が報告されている。将来的な臨床応用を考えるとES細胞の使用は問題が多い。2006年にYamanakaらによって、ES細胞の様に多様な細胞に分化出来る分化万能性 (pluripotency)と、分裂増殖を経てもそれを維持出来る自己複製能を持つiPS細胞(induced pluripotent stem cells)が、マウスの線維芽細胞に4種類の遺伝子を導入することにより、世界で初めて作られた。一方、体細胞からiPS細胞へのde-differentiationとiPS細胞から特定の分化した細胞へのre-differentiationの過程を簡略化して、iPS細胞を経ずに体細胞を直接特定の細胞に変換分化させる試みも始まっている。2010年には3種類の遺伝子を導入する事により、マウス線維芽細胞を神経細胞に変換出来た事が発表された。Vierbuchenらはこの神経細胞をinduced neuronal(iN)cell(転換神経細胞と仮に呼ぶ)と名付けた。このiN cellは大部分が興奮性の神経細胞だが一部はGABAergic神経細胞である。本研究では、マウス線維芽細胞からiN cellを作成し、GABAergic神経細胞を誘導分離し、神経障害性疼痛モデルマウスにくも膜下投与し、疼痛が軽減されるかどうかを検討する事を目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Vierbuchenらはマウス線維芽細胞がAscl1、Brn2、Myt1lの3種類の蛋白質によって、iN cellになる事を示した。また、KimらはiPS細胞作製に必要な蛋白質にnine arginine repeat (9R)配列を融合させると、細胞培養液に加えた融合蛋白質が線維芽細胞の細胞内に取り込まれiPS細胞に転換される事を報告している。そこで、Ascl1、Brn2、Myt1lの3種類の蛋白質のカルボキシル末端にそれぞれ9R配列を付加し、また、アミノ末端に6 x histidine tagを付加した融合蛋白質を発現するcDNAを含む発現プラスミドベクターを作製する。各蛋白質のcDNAはマウス胎児脳RNAからRT-PCR反応によって作製中であり、この発現プラスミドベクターをHEK293細胞(ヒト胎児腎臓細胞由来)に遺伝子導入し、融合蛋白質を一種類ずつ産生する安定発現細胞株を得る予定である。並行して、神経障害性疼痛モデルマウスの作成を進めている。C57/BL6マウスを用いて坐骨神経部分損傷モデル(partial sciatic nerve injury,PSL,Seltzer model)を作製した。プランター式鎮痛効果測定装置(UGO BASILE社)を用いて、マウスの後肢に赤外線光源から熱刺激を与え、反応時間をカウンターで自動測定し、熱刺激に対する痛覚過敏度を患側肢と健側肢それぞれ測定している。
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Strategy for Future Research Activity |
Ascl1、Brn2、Myt1lの3種類の融合蛋白質の作成をさらに進める。この発現プラスミドベクターをHEK293細胞(ヒト胎児腎臓細胞由来)に遺伝子導入し、融合蛋白質を一種類ずつ産生する安定発現細胞株を得る予定である。これらの細胞は遺伝子導入された各融合蛋白質を産生する。各融合蛋白質の線維芽細胞への取り込みの最適な条件を検討した上で、それに従って、3種類の融合蛋白質をマウス線維芽細胞に同時に投与する。線維芽細胞に融合蛋白質を投与して、12日前後から、細胞を一部固定し、神経細胞に発現するMAP2蛋白の発現を免疫蛍光染色で観察する。坐骨神経部分損傷モデルを作成後1週間で患側肢に痛覚過敏が検出出来たら、このモデルマウスにGABAergic神経細胞への分化を促進したiN cellをくも膜下投与する。対照群として生理食塩水注入群、マウス線維芽細胞注入群を設ける。投与後1週間ごとに、プランター式鎮痛効果測定装置による測定を行う。測定結果に応じて、iN cellの投与量、投与方法(複数回、単回)など改善点を適宜検討する。一部のiN cell投与後の神経障害性疼痛モデルマウスは、投与後1ヶ月経過した時点で、安楽死させ、経心臓的に灌流固定し、パラフィン包埋標本を作製する。組織切片を作製し、hematoxylin-eosin染色によって脳・脊髄の病理変化を、形態学的に観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究はマウスの解析が主となり、マウスの繁殖、飼育が必要である。エサ代も含め、マウス維持に経費がかかる。また、実験補助(謝金)は主にマウスの飼育管理に用いる。抗体、試薬、プラスチック製品などの消耗品は研究の進行に応じて適宜必要なものを購入する。
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[Presentation] The influence of endoplasmic reticulum stress on neurotoxicity caused by inhalational anesthetics.
Author(s)
Aoe, T., Komita, M., Aono, M., Okuyama, Y., Jin, H.
Organizer
American Society of Anesthesiologists annual meeting
Place of Presentation
Washington DC, USA
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