2012 Fiscal Year Research-status Report
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24659699
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
北岡 智子 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80243822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 正尚 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (20158380)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 認知機能 / 術後 / 麻酔薬 |
Research Abstract |
本研究の主眼は、周術期因子、特に麻酔法の違いが認知機能に影響するかを検討し、より安全な麻酔法を確立するものである。動物実験で基礎研究を実施し、そのメカニズムを解析するとともに、ヒトでの認知機能検査に新方法(CogHealth解析)を活用し、動物とヒトの差異についても検討する。 初年度はラットを用いた周術期の認知機能の基礎研究を実施した。すなわち、年齢による影響、麻酔薬暴露の影響(麻酔薬の種類、麻酔濃度の違い)を餌回収の成功度を放射状迷路課題による認知機能検査で評価した。その結果、麻酔暴露の影響は見られなかったが、老齢ラットでは明らかに若年ラットより餌の回収成功度が低下していることが確認できた。 上記の結果を受け、その後の研究は老齢ラットを用いることを基本とした。また麻酔暴露のみではなく、より周術期環境に近づけるため、腹部への切開手術を施したラットを用い、術後痛の認知機能への影響を評価した。 その結果、麻酔暴露のみではみられなかった認知機能の低下が、手術操作を加えることで明らかになること、また術後痛を鎮痛処置で抑えることで認知機能の低下も抑制できることが判明し、認知機能の低下に術後痛が関係していることが明らかとなった。 上記の結果は国際学会(2012 American Society of Anesthesiologists: The impact of postoperative pain management on spatial memory impairment after isoflurane anesthesia and surgery in aged rats.)および国内学会(2012日本麻酔科学会/優秀演題賞:)等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
24年度の当初の計画はラットの認知機能に及ぼす因子の検索であり、以下のごとくであった。 認知機能検査には放射状迷路課題を用いる。すなわち、課題施行はラットを迷路の中心に置き、すべての餌を回収するか15分経過するまで行う。測定項目はエラー率(アームに入った全回数に対する餌のないアームに入る或いは一度はいったアームに再度入った回数の割合)および課題遂行に要した時間 (反応時間) とする。検討因子としては年齢の違い、麻酔薬の違い、麻酔薬濃度の違い、麻酔時間の違いとする。 上記の研究計画に従い研究を実施した結果、麻酔薬そのものはコントロール群と比べ、認知機能に影響は及ぼさなかったが、高齢ラットは若年ラットに比べ有意に認知機能の低下をきたすことが判明した。 上記の結果を受け、周術期認知機能をより反映するモデルとして、高齢ラットを用いることを基本としてラット開腹モデルを作成した。その研究の結果、術後疼痛がラットにおいて認知機能を低下する因子であることを解明した。上記結果は多くの国内外の学会で発表した。以上のごとく、本研究は当初計画より進んだ状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究予定はラットの認知機能に及ぼす機序の解明が中心となる。すなわち、麻酔下の手術操作により認知機能に影響を受けた群とコントロール群で、その差異を検討し、認知機能に及ぼす機序の解明を遂行する。 以下の項目につき、基礎研究をさらに進展させる。 1) 脳におけるアポトーシスに関する検討を免疫組織学的手法および分子生物学的手法で検索する。2) 脳におけるβアミロイドの発現を検索する。3) 脳におけるその他の組織的な変化を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の計画予算のなかで40万円ほどの未使用となったが、分担金の使用がなかった事が大きく関係している。しかしながら、研究そのものには大きな問題はなく進捗している状況である。次年度は分担者の専門分野である免疫組織学的検討や分子生物学的検討が大幅に増える予定であり、その分を持ち越した資金を有用に活用して研究を計画している。全体的な計画としては予定を大きく変えることなく、着実に研究成果を出すことを目指す。
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