2012 Fiscal Year Research-status Report
エクソーム解析の応用による悪性高熱症の新規原因遺伝子の同定
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24659704
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
的場 奈々 埼玉医科大学, 医学部, 研究員 (80622969)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | エクソーム解析 / 悪性高熱症 / 次世代シーケンサ / ネットワーク解析 |
Research Abstract |
悪性高熱症は、骨格筋のカルシウムイオン調節の異常により発症する疾患で、揮発性吸入麻酔薬や脱分極性筋弛緩薬の投与で引き起こされる。本症は常染色体優性遺伝形式をとり、その中でも50%以上の患者で骨格筋筋小胞体の1型リアノジン受容体をコードするRYR1に変異が見つかっている。 2006年にRYR1遺伝子の全エクソンをダイレクトシーケンス法で解析し、病的変異を認めなかった症例(日本での悪性高熱症診断方法であるカルシウム誘導性カルシウム放出速度測定(CICR)では陽性)のうち、申請時に提示した1家系(以降、家系Aとする)を含む4家系17名分について次世代シーケンサによるエクソームシーケンスを行なった。続いて、各家系内の保因者のみが共有している変異について、(1)カルシウムシグナルや既知遺伝子の機能に基づくネットワーク解析により得られる遺伝子群(KEGGやIPAより抽出)、(2)骨格筋特異的な発現パターンを示す遺伝子群(BioGPSより抽出)(3)既知の悪性高熱症感受性領域上の遺伝子群(UCSCより抽出) と比較することで最終的な候補遺伝子の絞り込みを行なった。 本手法により、L型カルシウムチャネル上に家系Aの発端者およびAの親族でかつ保因者が共通してもつ変異(非同義置換)を確認した。当該アミノ酸は、チャネルのポア形成ドメイン上に位置する。CICRの結果と遺伝子型でのco-segregationは確認できたが、実際に病的なものであるかどうか更なる検討が必要である。 また、残る3家系についても同様の手法によって解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、申請時に示した家系について初年度候補遺伝子の絞り込みまで行なうことができた。 さらに追加で3家系分についてシーケンスを行ない、バイオインフォマティクス的手法による解析を行なっているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性高熱症は、特定の麻酔薬などを使用した場合にのみおこる疾患であるためdbSNPなど公共のデータベースに登録されているものの中には保因者が含まれる可能性がある。そこで、今回解析している家系で得られた変異のうち、擬陽性を取り除くために、すでにCICR(カルシウム誘導性カルシウム放出)速度判定試験で正常と判定されたコントロールサンプルのエクソーム解析を行なう。 コントロールサンプルは3-4サンプルをプールした状態で解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
エクソームシーケンスの結果得られたデータの解釈後に行なう機能アッセイのために試薬等の費用を計上してあったが、追加で解析を行なう家系サンプルが入手できたこと、コントロールサンプルのシーケンスを行なう計画を加えたことから、一部予算を次年度使用することとした。1サンプルあたりのエクソーム解析費用が当初計画より抑えられた分、解析サンプル数の増加に対応ができた。 次年度は、主としてコントロールサンプルのシーケンスのための試薬代に費用を充填し、研究成果についてアメリカ人類遺伝学会で報告するための予算も計上した。
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