2012 Fiscal Year Research-status Report
ビーシージーミコール酸を用いた新規癌治療製剤の開発
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24659710
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 淳 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10550246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西山 博之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20324642)
高岡 栄一郎 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (50625340)
木村 友和 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (10633191)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ビーシージー |
Research Abstract |
今回我々が開発中のリポソームは、脂質2重膜エンベロープの構造を有し、核酸や抗原タンパク質などの様々な物性を有する高分子を濃縮的にパッケージすることが可能でほぼ100%の細胞に効率的に内在化することができる。最も重要な課題はBCGの高い免疫活性効果を有する成分を利用した、安定かつ安全な非生菌製剤を開発することにある。これまでの基礎研究からBCGによる免疫反応は、菌の細胞壁の特徴的な物質すなわち、cell wall skelton(CWS)、ミコール酸(MA)、Lipomannan、lipoarabinomannanといった多数のワックス様脂質が、樹状細胞に貪食されても長期間細胞質内に生存し、宿主の免疫を刺激し続けるといった特有の性質に関連している。これらの中でミコール酸(MA)がCD1抗原として強力な細胞性免疫誘導を示すことが明らかとなってきた。そこでMAが、生菌に代わる抗腫瘍効果を示すのではないかと考え、北海道大学、BCG研究所とともに、細胞親和性を高め細胞質内にMAを効率的に輸送できるliposome vectorを開発した(リポソーム-MA)。このリポソーム-MAを用いて、新しい癌治療を提唱することを目標としている。製剤化を目指す上で、現在の研究の主眼は大きく3つに分けられる。まずMAの抽出によるロット間のばらつきをなくし、基準となるMAを決めること。2つめはリポソーム化の製造方法を決定すること。3つめは製造したリポソーム-MAに抗腫瘍効果があることを検討すること。現時点において、、基準となるMAの抽出は終了し、種々の方法を用いてリポソーム化しているところである。適切なリポソーム化にむけて調整しつつ、完成したリポソームを用いて、マウス皮下接種モデルで実際に抗腫瘍効果が得られるかを検討しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、原薬としてのMAの開発に着手した。これまでの基礎研究で用いてきたMAは菌体から直接抽出していたため、MA以外の成分の混入が考えられた。そこでまず、MA原薬の抽出方法を検討し、MA以外の成分の混入を最小限にすることを目標にし、最終的に基準となるMA抽出に成功した。前段階のMA製剤と、新たに抽出したMAとをMALDI/TOFMS解析をすると、phenolic glycolipid (PGL)spotの部分に差がみられた。もともとPGLについては、2011年に発表されたNakaらの論文(Journal of Biological Chemistry,286,44153-44161,2011)によると、強いサイトカイン誘導の活性が報告されている。Toll-like receptor2のリガンドとして働いて、TNFαなどのサイトカインを誘導する。このことからも、PGLが抗腫瘍効果に影響を与える可能性があることが示唆された。そのため、これまでの基礎研究で得られた、マウス皮下接種モデルでの抗腫瘍効果で強い効果が得られたのも、このPGLが寄与している可能性も考える必要が出てきた。そこで今後PGL分画も抽出し、抗腫瘍効果があるか検討する予定である。 また、現在開発中の基準となる純粋なMAを用いたリポソーム-MAにおいては、C3Hマウスの皮下にリポソーム-MAとMBT-2細胞を同時に接種する皮下腫瘍モデルで、day8から22日目において、軽度の腫瘍体積を減少させる抗腫瘍効果が示唆された。皮下接種における細胞数と、リポソーム-MAの濃度の問題、接種回数の調整を検討すれば、より強い抗腫瘍効果を得られる可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
リポソーム-MAに抗腫瘍効果の可能性があることが確認できつつあり、さらにはPGLにも活性がある可能性が考えられた。そこで、MAだけではなく、PGLも抽出し、リポソーム化するとともに、リポソーム-MAのみで製剤化するか、あるいはPGLも添加物として製剤化するかを検討していく。 今後の抗腫瘍効果の検討には、皮下接種実験だけではなく、ラットを用いた膀胱化学発癌モデル、あるいは膀胱癌細胞株を膀胱内に注入した正所性膀胱癌モデルを作成し、膀胱内注入療法で抗腫瘍効果を検討していく。ラットを用いた膀胱化学発癌モデルは、すでに確立した化学発癌モデルの実験系を用いて、リポソーム-MAを実際の臨床に即した投与方法である膀胱内注入療法で抗腫瘍効果を検討することを目的とする。正所性膀胱癌モデルは、膀胱内に膀胱癌細胞を移植し、正着したことを確認後、リポソーム-MAを膀胱内注入し抗腫瘍効果を検証する。 皮下接種あるいは膀胱内注入実験で有効性が確認できた後に、肺転移モデルを用いた転移巣への抗腫瘍効果を検証する。ルシフェラーゼ導入MBT-2細胞を尾静注することで、肺転移を形成することは基礎実験データですでに得ている。そこで、肺転移形成初期時にリポソーム-MAを隔日で5回静注する、あるいは、リポソーム-MAをあらかじめ送達させたルシフェラーゼMBT-2細胞を尾静注し、転移形成時とともに、リポソーム-MAを隔日で5回静注することで転移巣への治療効果の有無を明らかにする。以上のように、皮下接種、膀胱内、転移巣への抗腫瘍効果を確認できたら、腫瘍免疫のメカニズムを検討する。脾臓などの免疫細胞の豊富な組織を摘出し、リンパ球分画を測定し、メカニズムの解明を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
正所性膀胱癌モデルを用いた抗腫瘍効果の検証:C57BL/6マウス膀胱癌細胞であるMB49細胞を正所性にマウスに移植する。移植を確認後にリポソーム-MAを膀胱内注入実験し抗腫瘍効果を検証する。 ラット自然膀胱発がんモデルを用いた抗腫瘍効果の検証:ラットは、(N-butyl-N-(4-hydroxybutyl)nitrosamine )(BBN)を経口接種させることで、膀胱局所に膀胱癌を発癌させることができる。連日0.05%BBN入りの飲料水を自由節水とし8週間投与する。発癌のpromoterとしてNa ascorbateを食餌に添加する。リポソーム-MAを生理食塩水に懸濁し、28週後から200ulを膀胱内注入する。投与のスケジュールは週1回で合計8回おこなう。 抗腫瘍効果を確認できた次のステップとして、In vivo imaging system(IVIS)を導入したマウス膀胱癌肺転移モデルを作成し、静脈内投与の治療効果を定量的に解析するとともに、全身投与したリポソーム-MAの生体内分布、転移巣での局在を可視化する。 この治療によって生存曲線の延長あるいは、病理学的に腫瘍の縮小効果があるか検討する。また、治療中の転移部分の組織および脾臓を摘出し、免疫学的に検討する。具体的には免疫組織化学的にCD8、CD4リンパ球、NK細胞の染色を行い、リンパ球の浸潤を見る。組織からDNAを抽出し、マイクロアレイを用いて網羅的解析をする。またこの際に採取した心臓血(各群5匹)を用いてTh1/Th2サイトカインを測定する。Th1/Th2サイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4及びIL-5)の測定はMouse Cytokine Cytometric Bead Array (CBA)Kit(BD Bioscience)を用いて行う。
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Research Products
(2 results)