2013 Fiscal Year Research-status Report
卵巣癌細胞株を用いた人工抗原提示細胞による新規腫瘍抗原の同定
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24659727
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉川 史隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40224985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 史朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20612758)
柴田 清住 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90335026)
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Keywords | 卵巣癌 / 腫瘍免疫療法 |
Research Abstract |
1. HLA-A24陰性の卵巣明細胞腺癌細胞株TOV-21Gを基に人工抗原提示細胞(aAPC)作製を行った。準備済みであった内因性HLAの発現抑制を目的としたHLA-class I遺伝子に共通な塩基配列部位を標的とする3種類のsiRNA、および3種類のsiRNA標的部位のコドンを変換(codon-changed;cc)したsiRNA抵抗性のccHLA-A24:02を使用した。まず、TOV-21GにccHLA-A24および共刺激分子であるCD86をレンチウイルスベクターを用いて導入し、続いて合成したsiRNAを導入し内因性HLAの発現を抑制しHLA-A24のみを発現したaAPCを作製した。 2. HLA-A24陽性健常人の末梢血単核球から分離したナイーブCD8陽性T細胞を作製したaAPC で2回刺激して CTL linesを誘導した。aAPCに対する特異性はIFN-g catch assay で確認し、その後限界希釈法でクローニングを行った結果、複数のCTLクローンを樹立することができた。 3. 樹立されたCTLクローンのaAPCに対するHLA-A24拘束性およびTOV-21G由来抗原特異性をIFN-γ ELISPOT assayにて確認した。細胞傷害性試験(51Cr release assay)でaAPCおよび他の卵巣明細胞腺癌を含めた癌細胞株への反応性を確認したところ、卵巣明細胞癌株を認識するが、非腫瘍細胞(線維芽細胞lineおよびBリンパ芽球細胞line)を傷害しないCTLクローンが複数確認できた。 4. 複数の卵巣明細胞腺癌細胞株に細胞傷害性を示すCTLクローンが得られたことから、同CTLクローンが認識する遺伝子同定するためcDNA発現クローニング法を用いた。同CTLクローンが認識する抗原としてClaudin-1を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標のうち、人工抗原提示細胞作製およびCTL誘導およびCTLクローニングについては初年度内のうちに計画どおり達成することができた。また、本年度までにCTLクローンの認識パターン(HLA-A24拘束性およびTOV-21G特異性)、細胞傷害性の検証に加え、aAPCに用いた癌細胞株(TOV-21G)のmRNAから作製したcDNAライブラリーを用いて抗原遺伝子の同定を試みた。その結果、Claudin-1が抗原として検出された。 Claudin-1はTight junctionの主要タンパク質であるClaudin遺伝子ファミリーの1つで、比較的多くの臓器で発現が確認されているものの癌での過剰発現や局在変化が報告されており癌の転移・浸潤、悪性形質との関連が示唆されているため、卵巣明細胞腺癌におけるmRNAレベルでの発現量および発現頻度を正常細胞(気管支上皮や線維芽細胞など)と比較・評価した。さらに、N末およびC末短縮遺伝子を用いてCTLクローンが認識する抗原ペプチドのエピトープ配列同定まで研究は進めることができた。 樹立されたCTLクローンのうち、HLA-A24拘束性およびTOV-21G特異性や細胞傷害性の検証以降の解析がまだなされていないクローンが複数残っている。そのため、次年度ではこれらクローンの解析を進めることで、aAPCを用いた本手法によって卵巣明細胞腺癌に共通して発現している特異的な新規腫瘍抗原が同定できるかどうかにつき引き続き検討することが可能であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
複数の卵巣明細胞癌株を認識することができた1CTLクローンの解析から同定された抗原Claudin-1(CLDN1)については、同クローンが認識するエピトープ(RYEFGQALF)の同定まで行うことができたが、同抗原は複数の卵巣明細胞癌株だけでなく正常気管支上皮細胞でも発現がみられた。さらに解析したCTLクローンはHLAを強制発現させたTOV-21Gに対する程度よりは弱いものの正常気管支上皮細胞に対しても細胞傷害性を示したため、同定したCLDN1エピトープは腫瘍特異的抗原ではなく自己抗原の一つであると判断された。 HLA-A24拘束性およびTOV-21G特異性や細胞傷害性の検証以降の解析がまだなされていないCTLクローンが複数残っているため、今後はこれらCTLクローンについても同様に解析を進めることで卵巣明細胞腺癌に共通して発現している可能性のある新規腫瘍抗原の同定を引き続き行っていく予定である。 新規腫瘍抗原が得られた場合には、卵巣明細胞腺癌および非腫瘍細胞におけるmRNAレベルおよびタンパク質レベルでの発現量および発現頻度を評価する。さらに、腫瘍抗原ペプチドのエピトープ配列同定ができれば、同エピトープペプチド特異的CTLがaAPC で刺激することによって誘導されたCTL linesのなかに存在するかどうかを同エピトープペプチド含有HLA-A24テトラマー解析によって確認する。また、複数人のHLA-A24陽性末梢血リンパ球を同定されたペプチドで刺激することにより、腫瘍抗原特異的CTLを誘導することが可能かどうか検討する。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] An HLA-modified ovarian cancer cell line induced CTL responses specific to an epitope derived from claudin-1 presented by HLA-A*24:02 molecules.2013
Author(s)
Kondo S, Demachi-Okamura A, Hirosawa T, Maki H, Fujita M, Uemura Y, Akatsuka Y, Yamamoto E, Shibata K, Ino K, Kikkawa F, Kuzushima K.
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Journal Title
Human Immunology
Volume: 74(9)
Pages: 1103-1110
DOI
Peer Reviewed
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