2012 Fiscal Year Research-status Report
血液凝固因子に対する自己抗体が原因となる不育症の研究
Project/Area Number |
24659740
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
市原 慶和 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (80176304)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 不育症 / 自己抗体 / 血液凝固因子 / 検出法 |
Research Abstract |
不育症の原因の1つとして、血液凝固第XII因子や高分子キニノゲン(HMWK)に対する自己抗体の存在が指摘されている。本研究では不育症患者の血漿中に血液凝固関連因子に対する自己抗体の存在を示し、これを簡易に検出するシステムの構築を目指している。さらに、患者ごとに異なると推定される多種類の自己抗体を、網羅的に検査できる方法を開発する。 【研究計画1】では、プレカリクレイン(PK)のC末端にAvi-Tag配列を融合タンパク質として発現させるシステムを用いて研究を進めた。PK-Avi-Tag融合遺伝子とビオチン・リガーゼ(BirA)遺伝子を培養細胞で共発現させると、Avi-Tag部位にビオチン(Bio)が標識される。従ってアビジン(Avi)固相化プレートを用いると、Bio標識PKをAvi固相化プレートに結合できる。これに患者血漿を反応させると、もし血漿中に抗PK抗体が存在した場合は、固相化されたPKに結合した抗PK抗体を検出することができる。しかし、当初利用を計画していた本システムが、研究の途中で利用できなくなった。そこで研究計画を変更してHalo-Tag/Halo-Tagリガンドのシステムを導入して研究を進めている。 【研究計画2】では患者由来の抗PK自己抗体の抗原認識部位について、合成ペプチドを用いたエピトープ解析を予定している。 【研究計画3】では各種血液凝固関連因子の遺伝子を単離し、それぞれのC末端にHalo-Tagを付加しする発現ベクターを作製した。今後はこれらの各種血液凝固因子のcDNAを培養細胞で発現し、プレートに固相化する。これに患者血漿を反応させて血液凝固因子に対する自己抗体を網羅的に検出できる方法を開発する。 【研究計画4】では抗血液凝固因子抗体の網羅的検出方法を用いて、不育症患者の血漿について解析を行ない、血液凝固関連因子と不育症の相関を証明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究計画1】で計画していたPKのC末端にAvi-Tagを付加する発現ベクターシステムが特許の関係で利用できなくなった。従ってこれまで作成してきたタンパク質発現システムを根本的に検討し直す必要に迫られた。そこで使用する発現ベクターを、目的タンパク質のC末端にHalo-Tagを付加するHalo-Tagベクター(プロメガ社)に変更した。次いでこれまでに作成したPK遺伝子を、新たにHalo-Tagベクターにクローニングし直した。まずこの予期しない研究計画の変更に時間を要してしまった。 【研究計画3】では自己抗体の抗原を網羅的に解析するためには、様々な種類のcDNAを取り揃えて発現ベクターに組み込んだ上でこれらを培養細胞で発現させる必要がある。cDNAの数をそろえることは労力と時間を要する。さらに血液凝固関連因子の遺伝子の中にはサイズの大きなものが存在する。特にFVのcDNAはその大きさが約7kbと非常に大きいため、さまざまなcDNAライブラリーを試みたものの単離出来ずに徒労に終わった。しかし、幸いにも理研のcDNAバンクに全長鎖のFV cDNAがあることが分かり、入手出来たのでFV cDNAに関しては解決できた。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究計画1】では使用する発現ベクターをHalo-Tagベクターに変更した。PKは分泌タンパク質であるから、N末端のシグナルペプチド部分(SP)のみ、SPからアップルドメイン1(SP-A1)まで、アップルドメイン2(SP-A2)まで、アップルドメイン3(SP-A3)まで、アップルドメイン4(SP-A4)まで、全長(Full)の6種類のcDNAを作成した。今後はこれらのcDNAをHEK293などの培養細胞に導入する。遺伝子導入の効率については、GFP発現ベクターを共発現して蛍光顕微鏡によりモニターする。これには購入した10倍の対物レンズを活用する。目的タンパク質が発現しているかの確認は、抗Halo-Tag抗体や抗PK抗体を用いたウエスタンブロッティング法により行う。Halo-Tag融合タンパク質は、ビオチン標識したHalo-Tagリガンドと共有結合をする。そのためにアビジンを結合したシャーレ上に発現タンパク質を固相化できるため、Avi-Tagを用いた方法と基本原理の変更はない。 【研究計画2】で予定していた、抗PK自己抗体の抗原認識部位について、合成ペプチドを用いてのエピトープ解析はまだ開始していないが、今回作成した6種類のPK cDNAを用いることにより、抗PK抗体のエピトープは大まかに解析できるものと考えている。 【研究計画3】は種々の血液凝固関連因子について網羅的に自己抗体を解析するために各種血液凝固因子のcDNAを単離した。PK以外に、HMWK、FV、FXII、FXIIIのAおよびB、FVII、GPIIb/IIIaのcDNAを単離した。今後はこれらのcDNAを培養細胞で発現させる。さらに血液凝固関連因子のcDNAの種類を増やしていく。 【研究計画4】では開発できた各種血液凝固因子の検出システムを不育症患者の検体に応用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、【研究計画1】としてまず6種類のPK cDNAの培養細胞を用いた発現実験を行う。次いで抗Halo-Tag抗体や抗PK抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、PKタンパク質の発現について確認する。培養細胞におけるPK cDNAの発現が確認できたら、6種類のHalo-Tag標識PKに、ビオチン標識Halo-Tagリガンドを結合させて、PKを間接的にビオチン標識する。ビオチン-アビジンシステムを用いて、6種類のPK cDNA由来タンパク質をアビジン結合プレートに固相化する。固相化されていることの確認は、抗Halo-Tag抗体、HRP標識抗IgG、発光基質または発色基質を用いて検出する。最終的には患者血漿を加え、PKに結合したIgG,IgMをHRP標識抗ヒトIgG、IgMと発光基質または発色基質を用いて検出する。PKについて基礎研究を行った後、【研究計画3】として各種血液凝固関連因子のcDNAを取り揃えつつ、Halo-Tagベクターに組み込み、培養細胞にcDNAを導入して同様の研究を進める。自己抗体の検出システムが構築されたら、【研究計画4】患者血漿について研究を進める。これに関しては、横浜市の杉ウイメンズクリニックの協力を得ている。本研究の目的のために検体を使用すること関して、文書で同意された患者から得られた検体がすでに300以上保存されている。
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