2012 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来視細胞シート作成とそれを用いた網膜神経間ネットワーク構築機構の解明
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24659769
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
上田 裕司 聖マリアンナ医科大学, 医学部, その他 (00223470)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医学 / 視細胞 / オプシン / ロドプシン |
Research Abstract |
我々はiPS細胞に眼発生に関わる重要な転写因子の一つである pax6を遺伝子導入した後、限界希釈法を用いることで nestin, musashi1, six3, 網膜前駆細胞の分化に関わる転写因子 chx10を同時に発現する網膜神経前駆細胞株を複数樹立する事に成功した(Suzuki N et al. Neuroscience Letters)。 我々がiPS細胞から樹立した網膜前駆細胞はβIII tubulin陽性の神経細胞で、視細胞前駆細胞マーカーである CD73を非刺激状態で 50%程度、ロドプシン蛋白を中等量発現する。この細胞は様々な成長因子やケモカインに反応して更に分化して 緑-オプシン, 青-オプシン, 赤-オプシンを発現する。ケモカイン stromal cell-derived factor 1(SDF1、CXCL12)に反応して強い増殖を示し 90%以上が CD73陽性の視細胞前駆細胞となる。 SDF1受容体である CXCR4の発現はこの細胞では sonic hedgehogで強く誘導される。この株化視細胞前駆細胞ではSDF1/CXCR4経路の拮抗剤である AMD3100存在下では CD73陽性細胞の出現は抑制され、その後の分化は見られない。この細胞はmonocyte chemoattractant protein1 (MCP1、CCL2)に反応して緑、青、赤の 3種のオプシンを発現する。SDF1存在下での培養終了時 (mature)には細胞質は楕円形から長方形となり Rhodopsinは核から離れた細胞質全体に存在する。 これらの細胞株を用いて、現在視細胞分化の詳細を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進行している。 唯一の問題点は、視細胞前駆細胞の増殖速度が遅いため、ひとつひとつの実験を行うのに十分な細胞数を確保するために時間がかかる事と、そのため時間を追ったウエスタンブロット実験が行えていないことである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの網膜の再生研究では視細胞移植を主に注射する事により対光反射や網膜電図での回復が報告されているが、二次元画像の回復・再生は難しいと思われる。本研究により成熟視細胞シート移植が可能になれば再生網膜上で二次元画像を再生することが可能になると考える。我々はマウス iPS細胞に pax6遺伝子を導入することで視細胞前駆細胞株を樹立することができた。この細胞は極めて高純度に精製することが可能で培養操作のみで 90-95%程度、ソーティングすることでほぼ純粋な CD73陽性の視細胞・視細胞前駆細胞を回収できる。 視細胞前駆細胞株を温度感応性ゲルの上でコンフルエントな状態になるまで増殖させると、視細胞・視細胞前駆細胞を一枚のシートとしてはがすことが可能になった。酵素処理を受けていないため細胞間相互作用に関わる軸索と関連タンパク質をそのまま保持している。即ち、視細胞を含む神経細胞に必須のネットワーク構造・シナプス構造を保持したままであるため、その機能発現が容易であると推測される。さらにCD73陽性の視細胞前駆細胞に種々の蛋白存在下で培養を継続した結果として、ロドプシン陽性のほぼ視細胞と同等の形態の細胞を分化誘導できたことである。 本年度は成熟視細胞により構成された視細胞シートの作成を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでの成績から FGFや IGF1等成長因子、 SDF1等ケモカイン、フィブロネクチン等の細胞外マトリックス蛋白が視細胞の分化調節に重要であることが分かってきた。今後は、様々な成長因子を購入・使用して、分化効率のより改善した分化誘導プロトコールを確立する。その時に関わる転写因子、接着因子、成長因子受容体の発現を解析するために必要なPCR試薬や関連する抗体を購入する。視細胞シートの中で起こる相互作用のみでなく、視細胞シート、双極細胞シート、網膜神経節細胞シートの間での相互作用はこれまで全く調べられていない領域であり、そこにアプローチする。分化や神経ネットワーク構築の確認は免疫染色とともに電顕での特徴的な形態などから判断する必要がある。そこで必要な試薬を購入する。
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