2015 Fiscal Year Annual Research Report
液体への浸漬により虚血組織・臓器の酸素化をはかる実験的研究
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24659788
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
堂後 京子 (佐々木京子) 獨協医科大学, 医学部, 講師 (00622292)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | パーフルオロケミカル / 組織酸素化 / 局所酸素療法 / 創傷治癒 / 臓器保存 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性潰瘍の治療や再建・移植手術に際して、これまで臨床では血流改善を目的とする血行再建術、血管拡張剤・抗凝固剤の使用、局所陰圧吸引療法、高圧酸素療法等が行われてきたが、微小循環不全をきたしている部位には酸素が十分に供給されない点が問題であった。これに対しては酸素を局所に直接投与し酸素化させるアプローチが期待できる。 本研究では、高い酸素溶存能を有す有機フッ化化合物であるパーフルオロケミカル(Perfluorochemical: PFC)を高濃度酸素化し、虚血状態にある組織・臓器を直接浸漬する方法により組織酸素化が可能である事を実験的に証明し、血流を介さない新しいアプローチによる局所酸素療法の開発を目的とした。 酸素加圧タンクを製作し、PFCを酸素加圧(5気圧)する方法により高濃度酸素化PFCを作成した。この液体は常温大気圧下でも長時間高い酸素分圧が維持された。次に、ラットの組織を直接浸漬させる方法で潰瘍面において局所の酸素化が可能である事を確認した。さらに、高濃度酸素化PFCに浸漬保存したラット皮膚組織(皮筋を含む厚さ)の移植実験を行い、臓器保存液であるUW液(University of Wisconsin solution)と同等の組織保存能と生着率の向上、治癒促進効果が示された。興味深い事に、この実験でコントロールとして組織採取直後に戻し移植した組織はほとんどが壊死し、UW液あるいは高濃度酸素化PFCに浸漬保存した組織は6時間保存群の方が1時間保存群よりもより生着率が高かった。組織学的検討において高濃度酸素化PFC保存後では他の条件と比較し筋組織の障害が非常に少ない事を確認した。すなわち浸漬により生着率が向上する可能性が示唆された。なお、移植後6ヶ月以上の経過観察を行い、全ての個体において潰瘍や新生物の発生は認めなかった。
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