2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659799
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山村 仁 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10438228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝端 康光 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90420736)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 災害 / 通信体制 / 通信機器 |
Research Abstract |
今回の研究では、東日本大震災で実際に活動した経験を生かし、今後に起こることが予想される大規模災害に対応できるよう、新しい通信システムや連絡体制の開発を提案する。 平成24年度に、今回の震災での連絡体制の実態を把握するためにアンケート調査を行う。対象は、震災直後の医療活動に従事あるいは震災後1カ月までに医療活動したチームとした。調査内容は、チーム内、災害対策本部、派遣元の医療機関との通信方法と、その使用頻度ならびに通信状況を調査、その通信手段で十分な情報の伝達が行えたかを含む満足度調査を行い、今回の震災における通信体制の問題点を抽出できる内容とする。 平成25年度には、我々が被災地内で行った診療活動での問題点から、連絡体制のツールとしての衛星電話の改良型を提案する。現在、普及している衛星電話に加えてウエブやインターネットが行える機種を使用し、災害対応時のコミュニケーションのツールの実用性を検証する。実際には、衛星電話ワイドスターII(NTT docomo)にWi-Fiルータを接続し、衛星電話から複数のコンピュータやスマートフォンの接続ができるシステムを開発し、その実用性を検証する。 平成26年度には、アンケート調査ならびに25年度に行った実験をもとに、災害時の急性期に有用である通信機器の整備とタブレット型コンピュータを内蔵した一体型の衛星電話の開発を提案する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、東日本大震災時に使用された通信手段とその通信状況の実態を把握するためにアンケートを用いて調査した。アンケート調査は、被災地内の災害対策本部として活動、あるいは震災後に被災地内で活動したDisaster Medical Assistance Team (以下DMAT)を375チーム選び出し、これらを対象に行った。アンケート内容は、東日本大震災後の医療活動を行った主な都道府県、時期、活動した場所、通信機器の満足度調査、活動時期毎の通信機器の満足度、機器の不満であった理由、今後の通信機器に求める要件などである。アンケートは、220チームから回答があった(回収率58.7%)。この回答のうち、震災時に医療活動を行ったのは197チームであった。通信機器の調査で、震災後4日まで携帯電話は75%に何らかの問題があり。その理由として通信できない、回線が繋がりづらい、通信が安定しないなどがあった。災害時に有用と考えられている衛星電話も、震災後4日目までにおいて約50%に問題があった。その理由に回線が繋がらない、通信の安定性が悪い、操作性が悪いなどがあった。この結果から、災害時の通信手段として有用と考えられている衛星電話にも改善すべき問題があることが解った。この結果から、通信回線が回復してくる震災後5日~7日目までの期間における通信体制と機器の整備を重点的に行うことが重要と考えられた。これらの結果は、2013年5月に英国で開かれる18th World Congress on Disaster and Emergency Medicine(第18回世界災害救急医療学会)で発表するとともに、2013年秋に開かれる第41回日本救急医学会総会でも発表することで国内外に広く発信する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、アンケート調査の結果を国際学会と国内学会で発表するとともに、その内容について論文を作成し国際学会誌に投稿する。また、昨年度のアンケート調査をもとに災害急性期にも活用できる通信機器の整備を提案する。まず、衛星電話を用いインターネット回線が、どこまで利用できるかを調査する。衛星電話ワイドスターII(NTT docomo)にWi-Fiのルータを接続することで、衛星電話から複数のコンピュータやスマートフォンの接続ができるシステムを開発し、その実用性を検証する。最初の調査は、大阪市内で情報発信をして、衛星基地局で受信したデータをドコモ通信網を経由して病院内のコンピュータで情報を得るまでの通信速度と時間を測定する。この測定は、ダウンロードとアップロードの両者で行う。 続いて、大阪市内と一定距離離れた地方などの複数ポイントにおいて同様の情報伝達調査を行う。その際の通信速度、通信状況、十分な情報の伝達が行えるかについて評価する。 平成26年度には、災害時の急性期に有用である通信機器の整備とタブレット型コンピュータを内蔵した一体型の衛星電話の開発を提案する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費使用計画として、平成24年度のアンケート調査結果を18th World Congress on Disaster and Emergency Medicineで発表するための旅費、学会参加費に350,000円、また国内学会で発表するための旅費ならびに学会参加費に60,000円、アンケート結果を国際学会誌に発表するための英文校正費用など100,000円が必要となる。衛星電話ワイドスターII(NTT docomo)にWi-Fiのルータを接続し、その実用性を検証するための費用で、衛星電話の機器設備費 280,000円、デュプレスター購入費 100,000円、検証実験にかかる通信費 80,000円、その他人件費 100,000円、事務消耗品費30,000円が必要である。
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Research Products
(1 results)