2012 Fiscal Year Research-status Report
造血系疾患の治療を目指した歯髄、骨髄の神経堤及び中胚葉由来間葉の造血支持能の研究
Project/Area Number |
24659811
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山崎 英俊 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00283987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 利之 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30452220)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 神経堤細胞 / 中胚葉 / 間葉細胞 / 歯髄 / 造血支持能 |
Research Abstract |
神経堤細胞或は中胚葉細胞に特異的にCre-recombinaseを発現するマウスとCreの存在下で蛍光遺伝子YFPとジフテリアトキシン(DT)受容体を発現する3種類のマウスを用いて、主に以下の実験を行った。 [1] 中胚葉或いは神経堤由来細胞を特異的に標識及び欠損させることのできるマウスを用いて胸腺、骨髄等の造血器官形成における2種類の間葉細胞の役割を解析したところ、片方の間葉が欠損する事で、特にリンパ球の造血に異常が出る事がわかった。さらに凍結切片を作製し骨髄や胸腺の組織学的変化を調べている。 [2] 神経堤細胞は、自律神経、特にアドレナリン等の産生細胞でもあり、これらの生体でみられた現象が、全身的な影響か、局所における間葉の欠損の直接的な影響かを調べる方法として、器官培養法を用いた。まずは、マウスの胎仔胸腺、胎仔大腿骨を単離し、器官培養を行ない、培養液中にDTを加え、片方の間葉を欠損させ、マウスの間葉が一種類になった場合のT細胞、B細胞分化へ影響をフローサイトメトリーにて検討した。 [3] さらに成体骨髄や胸腺での両間葉細胞の役割を調べるために、放射線照射し、血液細胞を死滅させ、間葉細胞が残る条件で放射線照射した胸腺と骨髄を、免疫不全或はホストとドナーの血液を区別できるマウスの腎皮膜下等に移植し、さらにDT 投与し、間葉を欠損させて、造血への間葉の影響を調べた。 [4] さらに、試験管内での両間葉細胞の造血への役割の解明として、これらのマウスから骨髄細胞を取り出し、播種し、DTを加えて培養し、片方の間葉を欠質させた状態でのB細胞或はマクロファージ系への分化誘導の影響を解析した。 今回、特に中胚葉系細胞は、間葉のみならず血液細胞にも寄与しているので、放射線照射にて、造血細胞を入れ替え、間葉細胞のみの欠損による造血支持能への影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、これまで歯、胸腺、骨髄の間葉細胞が主に神経堤と中胚葉に由来することを明らかにし、特に歯の間葉系幹細胞が神経堤に由来することを明らかにした。 24年度の研究において、まず片方の間葉細胞を欠損させるモデルを作製し、歯の形成や造血に影響を及ぼす事を明らかにした。しかし、造血異常については、これらの異常が間葉の欠損によるのか、末梢神経として働く神経堤細胞の機能、或は中胚葉由来の血管系の異常によるものかの検討も必要になる。そこで、間葉そのものの欠損による影響を調べるために、放射線照射による血液細胞移植を行い、ドナーとレシピエントの血液を別々に標識し区別をつけた。また、血管内皮細胞を特異的に欠損させることのできるマウスやアドレナリンの作用を抑制する薬を用いて、同様の検討を行った。また、少なくとも胎仔期の器官形成への間葉細胞の影響を調べる目的で、歯胚培養、胸腺培養、大腿骨培養系を立ち上げて確認した。加えて、試験管内での骨髄細胞培養も進めており、結果が予想されたようになるかは別として、おおむね予定通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、歯、胸腺、骨髄の間葉細胞が少なくとも神経堤由来と中胚葉由来の2種類からなることを明らかにし、24年度は、生体で片方の間葉の欠損モデルを作製することにより造血や器官形成に影響がでることを明らかにした。 25年度は、これらの異常がいかなる原因により起きているのかを明らかにするために、 1)間葉系幹細胞への影響について:CFU-Fアッセイ法にて、胸腺、骨髄にて片方の間葉細胞を欠損させた際の、CFU-F形成細胞の増減を検討する。2)骨髄の片方の間葉細胞の欠損により異常が発現することを報告したが、それが骨髄間葉それ自体に関わるか否かははっきりしない。そこで、片方の間葉が骨髄や胸腺を作製し、放射線照射したマウスに移植し、造血の再構成に関わる間葉細胞を明らかにしたい。或は、骨髄細胞を除去し、神経堤或は中胚葉由来の間葉細胞で起きかえることで、造血にどのような影響がでるかを検討する。3)特に、歯の間葉細胞は神経堤細胞に由来することが分かっているので、歯の間葉細胞が骨髄の間葉細胞と代替可能であるかを造血細胞の分化誘導能や幹細胞の数等で検討する。同様に、試験管にて、歯の間葉細胞上でB細胞やT細胞が分化誘導可能であるかをそれぞれB、T細胞の誘導可能な細胞株であるST2, OP9-DL1をコントロールとして検討する。4)我々は、歯の歯髄細胞と骨髄細胞が類似の造血関連遺伝子を発現していることは報告したが、十分な定量できていない。発現量の比較と、様々な遺伝子の発現の相違点について検討する。5)さらに、2種類の間葉細胞を同時に欠損させた場合の影響についても検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を遂行するには、 1)多数のマウスの飼育費と購入が必要になる。特に、移植には免疫不全マウスの購入が必要になり計上した。340千円 2)移植後の血液細胞の分化の解析や試験管内での血液細胞の分化の解析には、フローサイトメトリー用の抗体が必要になるので、計上した。150千円 3)細胞培養用の器具、試薬、分化因子等の購入を計上した。150千円 4)間葉細胞の欠損による異常の組織学的解析のための抗体が必要であり150千円 5)歯科基礎医学会参加旅費 2名x35千円 日本免疫学会参加旅費2名x45千円 6)論文校正料 50千円
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