2013 Fiscal Year Research-status Report
造血系疾患の治療を目指した歯髄、骨髄の神経堤及び中胚葉由来間葉の造血支持能の研究
Project/Area Number |
24659811
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
山崎 英俊 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00283987)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山根 利之 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30452220)
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Keywords | 歯髄 / 神経堤細胞 / 造血支持能 / ジフテリアトキシン / 胸腺 / 骨髄形成 / 中胚葉 |
Research Abstract |
神経堤或は中胚葉由来細胞特異的にCre-recombinaseを発現し、Creの存在下で蛍光遺伝子とジフテリアトキシン(DT)受容体を発現するマウスを作製し、DT投与により、骨髄、胸腺の造血異常を認めた。造血異常の原因と歯髄の造血支持能を調べる目的で以下の研究を行い、結果を得た。 [1]造血異常が骨髄或は胸腺の間葉欠損によるか、全身性の影響かを明らかにする為に,胸腺に焦点をおき、胸腺を単離し、血液細胞のみ区別出来るマウスの腎皮膜下に移植し、移植後にDTを投与した。DT投与により蛍光標識された間葉細胞は殆ど消えたが、DT投与群にT細胞の分化異常は認めなかった。[2]放射線照射マウスから胸腺を単離し、血液細胞を区別できるマウスの腎皮膜下に移植し、DT投与後の間葉が欠損した状態での血液細胞の移植胸腺内移入とT細胞分化について検討したが、大きな差は認められなかった。[3]造血異常が骨髄間葉の欠損によるかを調べる目的で、骨髄細胞培養にDTを添加し、造血支持能を調べたが、非添加群との間に大きな差は認めなかった。[4]DT投与により胸腺細胞が減少する原因の1つに神経堤由来細胞欠損によるアポトーシスの亢進を認めた。[5]DT投与による間葉細胞死が炎症性サイトカイン等の血中への放出を誘導し、造血異常を誘導する可能性を考慮し,DT投与マウスの血漿を正常マウスの静脈内に接種し同様の現象が誘導できるかを検討したが、同様の病態は誘導できなかった。[6]胎仔骨髄、胸腺を免疫不全マウスに移植し、片方の間葉を欠損させた上で,造血機能を確認する系を確立した。また、胎仔胸腺のみならず胎仔骨髄のDT添加による器官培養系を確立した。[7]胎仔骨髄中には骨髄形成能・造血支持能を持つ細胞集団が存在することが知られるが、同様の細胞表面マーカーを持つ集団が胎仔歯髄にも存在することを見いだし、現在造血支持能を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
結果を基に、[1]腎皮膜下への成体胸腺移植と解析[2]間葉細胞の試験管内造血への影響の検討[3]歯髄間葉細胞と骨髄間葉細胞の遺伝子発現の検討[4] 胎仔骨髄と歯髄間葉細胞の単離と移植[5]胎仔胸腺及び骨髄の器官培養法及び移植系の検討を行なった。神経堤由来細胞からなる歯髄間葉が、造血関連因子SCF,IL7,SDF1の発現が高く、これら神経堤由来間葉が骨髄・胸腺にも存在することから、神経堤由来間葉が造血細胞の分化や移動に深く関わると想定したが、現在の結果から必ずしも説明はできない。[1][2]から神経堤由来細胞欠損による造血異常が、骨髄や胸腺自体の間葉欠損というよりは、それ以外の原因である可能性が示唆される。DT投与し間葉細胞を欠失させたマウスの血漿移入にて、病態が再現できない事から、炎症性サイトカイン等の上昇により、造血異常が誘導されたとは考えにくく,神経堤由来細胞の全身性異常としてカテコラミンの異常による可能性を考えて実験を進めている。[3]歯髄と骨髄間葉のマイクロアレイ[4]造血幹細胞と間葉細胞を同時に放射線照射マウスに移植し,造血の再構築は,一時中断した。一方,腎皮膜下移植系にてCD45-CD31-CD105+Thy1.2-の胎仔骨髄細胞が骨髄形成能を持つ事がわかり、歯髄細胞にも同様の細胞集団が存在するので、単離・移植による骨髄器官の形成能については検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
神経堤或は中胚葉由来細胞の欠損による胸腺や骨髄での造血異常は、両器官における間葉細胞の欠損だけでは説明が難しい。欠損モデルの解析[1]と、歯髄、胸腺、骨髄から間葉細胞を単離し、移植系を用いた造血器官形成能の検討[2]を行う。[1]神経堤細胞は、副腎髄質のアドレナリン産生細胞、交感神経に寄与するので、本モデルで血漿中のカテコラミンの変化を検討する。カテコラミンと本病態との関係を調べる目的で、副腎除去モデル、カテコラミンを薬剤で減少させるモデルを作製し、造血との関わりを検討する。DT投与により神経堤由来細胞を欠損させた系に、ノルアドレナリン等の補充を行ない、症状の改善を検討する。併せて神経堤由来細胞や中胚葉由来細胞を単離し、遺伝子発現解析を行い、カテコラミン産生やその受容体の発現について検討する。[2]胎仔骨髄に神経堤由来間葉がいるが、骨髄形成能或は造血支持能があるかは不明である。胎仔骨髄のCD45-CD31-CD105+Thy1.2-分画は、造血支持能・骨髄形成能を持つ事が知られ,胎仔歯髄にも存在するので,単離・移植により造血支持能の有無を検討する。成体歯髄における同様細胞の有無を検討する。また、単離した細胞を用いた器官培養や移植法にて、両細胞の機能について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は、歯髄の間葉細胞と骨髄の間葉細胞のマイクロアレイを行なう予定だったが,研究計画とその結果から、マイクロアレイを行なうのを一時とめたことから次年度使用額が発生した。翌年度分へ併せて使用したいと考えている。 本年度の計画を進めるために、1)現在使用している遺伝子組み換えマウスの維持費、歯髄、胸腺、骨髄細胞の移植用の免疫不全マウスの購入に250千円必要である。2)神経堤由来細胞の欠損による造血異常の原因を解析するためにカテコラミン測定費用(100千円)、造血細胞の解析及び単離用抗体(フローサイト、セルソーター:200千円)、組織学的解析のための抗体購入(150千円)が必要である。3)カテコラミンのマウスへの注射のための薬剤とカテコラミン抑制モデルの作製用薬剤を購入する(120千円)。歯髄と骨髄の間葉細胞の遺伝子解析を行なう費用(200千円)も計上する。また、歯科基礎医学会の参加旅費50千円、英文論文の校正料50千円も計上した。
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