2013 Fiscal Year Research-status Report
疾患原因究明と再生医療への応用を目指した未同定の神経堤由来細胞の探索
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24659830
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 教授 (80307058)
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Keywords | 神経堤 / 細胞分化 / 再生医療 / 口腔 |
Research Abstract |
神経堤細胞は胚発生過程で出現する細胞集団であり、胚の中を活発に遊走した後、遊走先の環境に応じて様々な細胞に分化する。本研究において神経堤細胞が蛍光タンパク質で標識される遺伝子改変マウスを用いて、成体に潜む未知の神経堤由来細胞を探索した結果、口腔粘膜、表皮、食道に存在する一部のケラチノサイトが神経堤細胞に由来することを示唆する結果を得た。すなわち、これらの組織の形成・維持において神経堤細胞が重要な役割を担っていることが推察される。また、上記の組織のほかにも、膵臓、大腸、胃、および毛包において神経堤由来細胞の存在を認めた。さらに、DNAマイクロアレイを用いて神経堤由来のケラチノサイトと、既知の外胚葉由来のケラチノサイトの遺伝子発現を網羅的に解析し、相違点を抽出した結果、keratin14などの発現レベルに差を見いだし、その定量的な解析を実施した。また、今回見いだした毛包は、他の組織に比較して採取が容易なため、再生医療における新しい細胞ソースとして利用可能である。そのため、毛包に存在する神経堤由来細胞を採取・培養し、骨芽細胞に分化誘導することにより、骨再生に応用できる可能性を見いだした。以上より、本研究の目的であった新しい神経堤由来組織の発見に成功したことや、遺伝子レベルでの解析を進めることができた点において、有意義な成果が得られたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった、新しい神経堤由来組織の発見に成功したこと、さらに遺伝子レベルでの解析を進めることができた点において、有意義な成果が得られたから。特に、毛包の神経堤由来細胞の発見とその培養方法を確立できたことは、今後の神経堤由来細胞を用いた再生医療において極めて有望といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の研究で発見した毛包に存在する神経堤細胞についての研究を促進する。すなわち、毛包に存在する神経堤由来細胞が幹細胞としての性質を持つかどうか、細胞形態、増殖能および多分化能を解析する。さらに、毛包から分離した神経堤由来細胞が骨芽細胞をはじめ、脂肪細胞や神経細胞、筋細胞に分化する能力を持つかどうか検討する。そして再生医療への応用を目的としして、毛包の神経堤由来細胞から骨芽細胞分化を誘導し、骨再生の細胞ソースとして用いる。以下にそのための方策(1-5)の内容を示す。 1. 毛包に存在する神経堤由来細胞の幹細胞としての性質の検討:①Sphere(細胞塊)形成能:毛包から分離した神経堤細胞を接着および非接着状態で培養し、幹細胞特有のSphereを形成するかどうか検討する。2. 毛包に存在する神経堤由来細胞の増殖能の検討:毛包から分離した神経堤由来細胞が再生医療の細胞ソースとして求められる高い増殖能を持つか検討する。3.毛包に存在する神経堤由来細胞の遺伝子解析:毛包から分離した神経堤細胞(GFP陽性細胞)と通常の組織細胞(GFP陰性細胞)の遺伝子発現の違いについて、DNAマイクロアレイ解析システムを用いて解析する。4. 毛包に存在する神経堤由来細胞を用いた骨芽細胞分化誘導と骨欠損部位の再生:毛包から採取した神経堤由来幹細胞に骨芽細胞分化誘導因子を処理し、骨芽細胞関連遺伝子の発現、石灰化および破骨細胞分化支持能を検討する。さらに、誘導した骨芽細胞を骨欠損モデル動物に移植し、骨再生を促進するか否か検討する。5. 毛包に存在する神経堤由来細胞の多分化能解析:毛包から分離した神経堤由来細胞が骨芽細胞以外に、脂肪細胞や神経細胞、筋細胞に分化する能力を持つかどうか検討する。 以上の研究を推進することにより、本研究の最も重要な目的である神経堤由来細胞の同定とその医療への応用を達成することができる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進行において、計画当初は神経堤由来細胞を高純度にするためにフローサイトメトリーなどの使用コストが高い手法を用いる予定であった。しかし今回、独自に効率的かつ簡便・安価に神経堤由来細胞を高純度にする方法を開発することに成功し、その方法を用いることによって本年度の目的であった神経堤由来細胞の探索および同定が、想定以下の経費によって遂行することができたため。 次年度使用金は、研究を前倒し且つより挑戦的に進行させるために使用する。具体的には、骨再生医療への応用のために毛包由来の神経堤由来細胞を採取し、増殖させる際、その細胞培養システムのスケールアップに必要な経費として用いる。また、これまで経費が不足して実施不可能であった、神経堤細胞由来骨芽細胞を用いた移植用石灰化物の生産に用いる。
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[Journal Article] Octacalcium phosphate suppresses chondrogenic differentiation of ATDC5 cells.2013
Author(s)
Shibuya I, Yoshimura K, Miyamoto Y, Yamada A, Takami M, Suzawa T, Suzuki D, Ikumi N, Hiura F, Anada T, Suzuki O, Kamijo R.
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Journal Title
Cell Tissue Res
Volume: 352
Pages: 401-412
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Downregulation of carbonic anhydrase IX promotes Col10a1 expression in chondrocytes.2013
Author(s)
Maruyama T, Miyamoto Y, Yamamoto G, Yamada A, Yoshimura K, Suzawa T, Takami M, Akiyama T, Hoshino M, Iwasa F, Ikumi N, Tachikawa T, Mishima K, Baba K, Ryutaro Kamijo R.
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 8
Pages: e56984
DOI
Peer Reviewed
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