2013 Fiscal Year Research-status Report
おとり遺伝子を用いた変形性関節症への新規遺伝子治療法の応用
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24659838
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
石橋 浩晃 島根大学, 医学部, 准教授 (90254630)
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Keywords | 顎関節 / 遺伝子治療 / 基質破壊酵素 / 転写因子 |
Research Abstract |
変形性関節症を含む顎関節疾患の病態解明にも生化学的検討が応用し,様々なサイトカインが関節組織の線維芽細胞,軟骨細胞や未分化間葉系細胞からの基質破壊酵素の産生を誘導し,骨・軟骨破壊が進行していくことを解明した.ヒトより採取した顎関節組織や,培養細胞を使って,腫瘍壊死因子αなどの炎症性サイトカインが転写因子NF-kBを介して線溶系酵素のプラスミノ-ゲンアクチベ-タ-産生を亢進させるとともに,金属プロテア-ゼの産生を促進し,骨・軟骨破壊が進行してくことを検証した.さらに,本研究では,おとり遺伝子により転転写因子のプロモ-タ-領域への結合を阻害するという新しい概念による遺伝子治療を,極めて安全性の高いウイルスベクタ-を用いて変形性関節症の治療に応用し,顎関節疾患の新しい治療としての基礎的資料を確立する事ができた. さらに,現在まで剖検時にヒト顎関節頭を採取し,変形部において転写因子NF-kBに活性化がみられる事を解明した.本課題では,臨床試験にむけての準備段階として動物モデルおける変形性関節症への治療効果を検討する事が目的なので,動物モデルにおいて活性化している転写因子の解析が重要となる.そこで大腿骨頭における変形性関節症の動物モデルを顎関節に応用して変形性関節症モデルを作成し,組織内において活性化している転写因子をバンドシフトアッセイにより検討した.本研究は以後のおとり遺伝子治療の展開における標的転写因子の選択に関する資料となる.そして,NF-kBを標的にしたおとり遺伝子は培養関節細胞においてuPAやMMPsなどの強力な基質破壊酵素の同時抑制が可能であることが解明できた.また,臨床応用に展開していく段階として,動物モデルの変形性関節症でもおとり遺伝子導入が同様に分子発現を抑制できるか,あるいは他に発現抑制している分子があるのかを詳細な検索まで終了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hemagglutinating Virus of Japan (HVJ) を用いたHVJ-リポソ-ム法を応用して破骨癌細胞を用いて,安全かつ確実におとり遺伝子を導入できる方法を確立した.従来の遺伝子導入法である合成リポソ-ムをに安定的におとり遺伝子を封入する方法の樹立にいたった.一方で受精鶏卵を使用し,HVJ の大量培養やウシ赤血球を用いた凝集能の測定により,ウイルス力価の定量化が可能となっている.これにより大量培養したHVJに紫外線を照射して,ゲノムRNAを断片化して失活させ,HVJ ウイルスの外套蛋白の融合能のみを保存させたHVJ particleを調製した.このHVJ particlesとおとり遺伝子を含有するリポソ-ムを厳重な温度制御により融合させ,おとり遺伝子含有HVJ-リポソ-ムを作成した.このHVJ-リポソ-ムを培養液に添加し,さらに詳細な温度制御により培養癌細胞と膜癒合により封入されたおとり遺伝子を培養癌細胞に導入させることを可能にした.
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Strategy for Future Research Activity |
骨由来培養細胞の基質破壊酵素産生にTNF αなどの炎症性サイトカインが関連しており,その遺伝子発現にNF-kBなどの転写因子が関与していることを確認する.また,おとり遺伝子による基質破壊酵素発現制御による変形性関節症の治療に対して,培養細胞や骨由来肉腫細胞を用いて,HVJ-リポソーム法により,おとり遺伝子を安定的に遺伝子導入する条件を検証する.今後,重ねて再試・再現実験を行い,臨床応用にむけて導入条件の完全なる確立や導入効果の解析を行い,再現性について確認する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おとり遺伝子の合成を当面は遺伝子作成を専門とする企業に委託する予定であったが,本研究施設内で極めて廉価に遺伝子合成をする装置の使用開始により,研究費用を大幅に減額させて,予定どおりの研究を遂行する事が可能になった.また,研究試薬については,必要額を執行していったが,本研究では,特殊な試薬,器材を必要としないので,本研究施設の共同研究施設の器材や試薬の使用が可能であり,執行額を押さえる事ができた. 再現性の確認のために,多くの再試,再現実験を行う必要があり,さらに動物実験を開始するので,実験動物,さらに動物を飼育,研究材料とする試薬,器材のために,研究予算を執行していく予定である.
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Research Products
(3 results)