2012 Fiscal Year Research-status Report
難治性顎関節症診断のための疼痛感覚の歪みを応用した定量的感覚検査方法の確立
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24659856
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石垣 尚一 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40212865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢谷 博文 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80174530)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 顎口腔機能学 / 口腔顔面痛 / 疼痛 / 定量的感覚検査 |
Research Abstract |
本研究では,顎関節症患者に対し複数のランダムな温度刺激に対する定量的感覚検査を行い,侵害刺激の大きさと主観的な痛みの程度を比較することにより疼痛感覚における歪みを検出し,難治性の顎関節症患者のスクリーニングおよび患者への治療介入に役立てることを目的とする. 被験者として,口腔顔面部に慢性痛を訴える女性顎関節症患者20名(以下TMD群),ならびに女性健常者20名(以下健常者群)を選択した.疼痛閾値の測定にはコンピュータ制御定量的感覚検査装置(PATHWAY,Medoc社)を用いた.刺激部位は,TMD群は疼痛を有する側の,健常者群は右側の下顎神経支配領域(V3領域),および両群とも右側前腕部(FA領域)とした.最初に,毎秒1.0 ℃の温度上昇刺激による疼痛閾値測定を6回連続して行った.次に,被験者ごとに得られた疼痛閾値(x ℃)を基準とし,x ± 1.0 ℃の範囲で,0.5 ℃間隔の5段階の温度刺激をランダムに10回付与し,各々の温熱刺激に対する主観的な痛みの強さをvisual analogue scaleを用いて記録した.刺激強度とvisual analogue scaleとの関連性をSpearmanの相関係数により検討した. 6回の疼痛閾値から求めたICCの結果より,測定回数を重ねるごとに,両群ともに再現性が高くなる傾向を認めた.温熱刺激強度と痛みの認知の関連性について,健常者群ではFA領域ではr=0.673(P<.001)と有意な強い相関を認めたが,V3領域ではr=0.476(P<.001)と有意ではあるがFA領域と比較すると相関が弱かった.TMD群ではV3領域でr=0.305(P=.001),FA領域でr=0.324(P=.001)と,有意ではあるが弱い相関しか認めなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
口腔顔面部に慢性痛を有する顎関節症患者においては,下顎神経支配領域のみではなく前腕部においても,温熱刺激の強度を痛みの感覚として正確に認知することが困難な状態にあり,中枢における痛みの認知過程に歪みが生じている可能性が示された.
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Strategy for Future Research Activity |
遷延化した疼痛を訴える難治性の顎関節症患者では,患者の訴える痛みが末梢の障害から推察される疼痛の程度を大きく上回っていることが多く,認知される痛みの程度と侵害刺激の大きさの間には歪みが生じていると考えられる. すでに述べたように,口腔顔面部に慢性痛を有する顎関節症患者においては,下顎神経支配領域のみではなく前腕部においても,温熱刺激の強度を痛みの感覚として正確に認知することが困難な状態にあり,中枢における痛みの認知過程に歪みが生じている可能性が示唆された. 今後は,このように検出された疼痛感覚における歪みについて,精神心理学的因子,および精神神経免疫学的手法によるストレスレベルの評価とあわせて総合的に分析し,難治性の顎関節症患者のスクリーニング検査として確立する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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