2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞親和性を担持させたセラミックスと海洋性コラーゲンを用いた歯科治療の新規開発
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24659879
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 香 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 客員研究員 (20578330)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 魚コラーゲン / 細胞毒性試験 / 感作性試験 / 皮内埋入試験 |
Research Abstract |
再生医療において不可欠な3要素,細胞,足場,栄養素のうち,我々は足場材に関して種々検討を加えている.キトサンの足場材としての特性に関して,キトサンスポンジを試作しすでに報告を行った.残念ながら,キトサンはイヌなどの大動物の歯髄への応用で初期に急性炎症を惹起させる欠点を有していることが判明したため,この点を克服するために人獣共通感染症の対象とならない魚コラーゲンを用いた足場材を考案し物理・化学的性状や生物学的特性について検討した. 【材料と方法】1)魚コラーゲン:テラピアの皮膚からペプシン可溶化し0.1、0.2%に調整されたタイプIアテロ化コラーゲンを(株)ニッピ バイオマトリックス研究所より供与された.2)魚コラーゲンゲル内における細胞保存について:実際の臨床での応用を前提として,魚コラーゲンベッド内における細胞の生育状況について骨芽細胞(NOS-1)を使って検討した.3) 魚コラーゲンの組織反応について:従来より当教室で歯髄貼薬剤の組織反応を検討する場合に用いている動物(ラット)実験モデル系を使って,切歯露髄面に貼薬した魚コラーゲンによる歯髄組織反応を病理組織学的に検討した.4)安全性試験 ①細胞毒性試験:ISO規格に準じ,V79細胞を用いた直接法による細胞毒性試験を実施した.②感作性試験:ISO規格に準じ,モルモットにおける感作性試験を実施した.③皮内埋入試験:0.1%魚コラーゲン20-30lをラット背部皮内へ埋入し,術後1週目に病理組織学的に観察した. 【まとめ】魚コラーゲンは病理組織学的に歯髄組織における生体親和性および生分解性に優れた生体材料であることが明らかにできた.また,今回実施した3つの安全性試験においても,為害性のない素材であることが確認できたため,臨床応用へ向けた検討をさらに加速させたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲル内にて細胞の生育が可能な条件{PBS(-)に溶解0.1%魚コラーゲン}が確認できた.なお,この条件で1か月程度の冷蔵保存が可能であることも判明した. 歯髄内反応として,術後1日目には軽度の炎症反応が観察されたが,術後1日目には炎症反応も消退していた.術後7日目には歯髄内へ拡散したコラーゲンの消失が顕著であった.術後7日間をとおして、コラーゲンに対する異物反応は見られなかった. 細胞毒性試験はコロニ―形成率が対象群と変わらず細胞毒性はないと判定した.また感作性試験においても,惹起終了後48時間までの投与部位における異常は認められなかった. 皮内試験の結果,1週間後の肉眼所見として完全に周囲皮膚と区別ができないほど異物・炎症反応は認められなかった.また,病理組織学的にも正常皮膚の組織像を呈していた. 魚コラーゲンは病理組織学的に歯髄組織における生体親和性および生分解性に優れた生体材料であることが明らかにできた.また,今回実施した3つの安全性試験においても,為害性のない素材であることが確認できたため,臨床応用へ向けた検討をさらに加速させたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
長崎大学病院虫歯治療室外来患者から同意を得た上で、不要抜去歯から歯髄細胞を分離し、初代培養のち、通法に従って継代を行う。大学既設のセルソーターにて細胞表面マーカーとしてCD105陽性かつCD31陰性の分画となる細胞を分取し、幹細胞マーカーであるCD29、CD44、CD73およびCD90が陽性となることをフローサイトメトリック解析し、血管新生能および神経再生能を有する歯髄幹細胞であることを確認する。この原理はCD105陽性細胞においてケモカインであるCXCR4の分泌が高く、このCXCR4はSDF-1をリガンドとするレセプターであり、CXCR4の発現が高いということはSDF-1に対して遊走能が大きいという性質を利用して、分離膜を介在させた分離法を利用することとなる(Cytokine Growth Factor Rev 20:435-40, 2009)。 本研究ではE-cad-Fcキメラタンパクマトリックスを用いた歯髄幹細胞の継代培養によって効率的に細胞増殖を目指す。この方法は単一細胞レベルで分散しながら未分化維持増殖させ、未分化幹細胞の均質化および大量増幅が可能であるとされ(J Biol Chem 283:26468-76, 2008)、適宜フローサイトメーターおよびリアルタイムPCR法にて、NanogやOct3やSox2遺伝子発現状況について検証し未分化性の維持を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
CD105陽性細胞をセルソーティングで分取する場合臨床上安全性に問題があり、GMP準拠の装置を準備することも実際的ではなく、また抗体ビーズ法の利用も高価となるため、将来のヒトへの臨床応用を想定した分化誘導の効率化が想定した場合は、国立長寿医療センターによって開発された歯髄幹細胞膜遊走分離法の技術支援を受ける計画であり、その際の機材や交通費を計上することとなる。 CERECBlocsを用い、CEREC ACにて通法に従って全部被覆冠形態のオールセラミック冠を作製するための生体親和性材料の購入も必要となる。 また多能性幹細胞をヒトES細胞用培地で浮遊培養することによって未分化状態を維持できると報告されており(Stem Cell Res 4:165-179,2010)、この方法を発展させ、細胞が常に新鮮な培養液と接するように還流培養システム(Bioreactor)を用いて、減圧下にて100mmの培養皿1×106cells播種し約10日後のコンフルエントを目標とする。この手法は(株)ツーセル(広島大学発ベンチャー企業)で開発されたものであり、培養操作について指導を仰ぎながら推進していく予定であるが、テクニックセンシティブな面もあり計画どおりに進行しない場合は同社の幹細胞自動培養装置の利用も検討する。
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Research Products
(1 results)