2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24659904
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
江崎 太一 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (10128259)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40510235)
森島 正恵 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (00241068)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍血管 / 血管新生 / 血管正常化 / 血管再構築 |
Research Abstract |
腫瘍の増殖、転移において血管は非常に重要である。腫瘍血管は血流の不均一や透過性の異常など、正常血管とは形態や機能が大きく異なり、遺伝的にも異なるものであるため、抗癌剤を経血管性に投与した場合、腫瘍の深部にまで浸透せず、腫瘍細胞を完全に根絶することが難しいばかりか、放射線治療においても、腫瘍内が低酸素状態のために効果が不十分である。そこで、抗VEGF薬などを投与し、血管新生と血管退縮のバランスをとることで、腫瘍血管を正常化に導く“Normalization”という新たな概念が提唱された。しかし我々は、腫瘍血管を正常化に導くのではなく、直接正常血管を再構築させれば、それが”Normalization”になるのではないかという仮説をたてた。従って本研究では, 正常血管を再生させることにより、腫瘍組織の低酸素化の改善、血流の均一化、血管透過性の正常化を計り、腫瘍細胞に薬剤を均一に浸透させる為の確実なドラッグデリバリーシステムの再構築と、放射線治療のための低酸素化改善による放射線感受性の向上を期待し、腫瘍根絶を確実なものとすることを目的とした。まず, 抗癌剤を投与後1週間後より観察すると、腫瘍に壊死層の拡大が見られ、腫瘍血管は経時的に破綻し、血流の停滞、内皮細胞、周皮細胞の壊死後、最終的には基底膜だけになるという段階的な退縮過程を示した。さらに、抗癌剤投与後の腫瘍壊死層内には基底膜のみ残存していたことから、これを血管再生の足場として利用するために、正常内皮細胞、アンジオポエチン、マトリゲルを腫瘍壊死層内に投与した。すると、コントロール群と比較して有意に腫瘍体積の減少がみられた。また腫瘍内には正常血管に似た構造を持つ血管の再生を認め、さらには宿主側のマウス血管と移植したヒト内皮細胞が吻合し、レクチン染色陽性による血流の回復が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り進んでいるが、腫瘍内に再構築された血管を電子顕微鏡で確認する作業が難航している。その理由として、抗癌剤を投与しているため、壊死層が多く、血管が少ないことがあげられる。また、実験計画がすべて、同じ個体の動物で行われるため、期間が長く、動物への負担も大きいため、今後の改善すべき点の一つにあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 腫瘍内に再生した血管の形態的・機能的解析と、遺伝子レベルでの解析:再生血管内皮に発現する分子の同定:レーザーマイクロダイセクションを用いて、正常血管、再生血管各部分を抜き出し、ウェスタンブロット、二次元電気泳動を用いて、内皮細胞から発現する分子を検索し、その違いを同定する。その同定された分子を用いて、実際in vitroにおいて正常血管が再生するか検証する。また、マイクロアレイによる遺伝的解析を行い、すでに同定されている腫瘍血管に特有の遺伝子が発現しているかを検索する。 2. 血流再開による腫瘍内の低酸素化改善、また、DDS構築の抗腫瘍効果増強の評価:腫瘍内の低酸素化改善の評価:HIF1αによる免疫染色や、電子常磁性共鳴イメージング法などを用いて再生血 管周囲の低酸素状態、実際の血流を解析する。 3. DDS構築の抗腫瘍効果増強の評価:再生血管モデルマウスに再び抗癌剤を投与後、その抗腫瘍効果を従来の治療法と比較、評価する。さらに、腹腔内などの可視不可能な悪性腫瘍の治療に対応するために、腫瘍を特異的に検出する蛍光イメージングナノ粒子を使用し、遠隔腫瘍内において正常血管再生を試みる予備実験を開始する。 以上の計画を、今年度で解析し、3月までにに全ての結果を総括する。その後はそれらのデータを元に、臨床応用に持って行くべく、骨髄細胞やiPS細胞、または自家移植などを用いた研究計画へと変換し、正常血管再生法による新しい癌治療開発を引き続きおこなっていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に必要な設備備品は全て、本学総合研究所または当教室に既存のものを用いる。実験用動物(SCIDマウス)の購入費、飼育費、組織再生のための3要素である細胞(ヒト血管内皮細胞など)、成長因子(Ang1など)、は非常に高価なため、研究費の半分以上を占める。消耗品費としては、試薬類には、培養用血清、免疫染色用の抗体、分子組織化学用の制限酵素、プローブ標識キット、電子顕微鏡用には、樹脂包埋キット、超薄用ダイヤモンドナイフ、画像解析用のコンピューター関連品、また、プラスティック器具類、論文別刷代などの諸費用が含まれる。さらに学外研究者との情報交換のための旅費、ならびに成果発表のための学会参加費などの旅費(国内外を含む)なども含まれる。そのほかでは印刷費(カラー印刷)、論文校正・投稿費用などが主なものである。
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Research Products
(4 results)