2012 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の総合的な口腔機能向上システムの認知機能低下抑制に関する研究
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24659940
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | The Lion Foundation for Dental Health |
Principal Investigator |
石川 正夫 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, 研究員 (50597250)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 孝典 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, その他 (40597291)
武井 典子 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所(研究部研究開発室), その他部局等, その他 (50556537)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | グループホーム / 口腔機能 / 認知機能 / MMSE / 要介護度 |
Research Abstract |
日本は急速に高齢化が進展しており認知症も急速に増加することから、認知症の発症予防および症状緩和は極めて重要な課題となっている。そこで本研究では、口腔機能向上プログラムが高齢者の認知機能に及ぼす効果を明らかにするため、グループホーム入所者を対象に、口腔機能向上プログラムを実施し、認知機能の低下抑制および介護負担の低減が可能か否かについて、長期介入調査を行った。 対象者は、鹿児島と神奈川の某グループホーム入所者で、1年間の口腔機能向上プログラムに参加した37名であり、認知機能としてMMSE(Mini-Mental State Examination)得点が10以上を対象者とした。口腔機能検査は、開口度、唾液湿潤度、咀嚼力判定ガム、RSST、オーラルディアドコキネシス(パ音、カ音)、口腔清潔度(カンジダ、吐出液濁度)を行い、その結果に基づいたオーダーメードの口腔機能向上プログラムを提案し支援した。6カ月後と1年後に初回と同様の口腔機能検査およびMMSEの評価を行った。 1年間の口腔機能向上プログラム介入の結果、神奈川ではMMSEが低下したものの神奈川に比べ口腔機能向上プログラムの実施率が高い鹿児島では、変化は認められなかった。口腔機能は鹿児島において、咀嚼力判定ガム、RSST、オーラルディアドコキネシスのパ音、カ音が、神奈川ではRSST、オーラルディアドコキネシスの改善が認められた。また、1年後にヘルパーに対する聞き取り調査を行った結果、閉じこもりや夜間不穏の改善、帰宅願望行動の消失、日中意識レベルの向上等の認知症の周辺症状の軽減、食事動作の自立、ムセの減少、排泄の自立、歩行機能の向上、発熱の減少等の報告があった。 今回の結果から、口腔機能向上プログラムの実施が、口腔機能の維持、改善のみならず、認知機能の低下抑制、さらに、介護負担の低減につながる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回のグループホームでの調査では、2施設37名の入所者に対する口腔機能向上プログラムを実施することにより、口腔機能の向上、認知機能の低下抑制、さらに、介護負担への軽減などが期待できた。また、ヘルパーおよび身近な介護者による細やかなプログラムの支援が可能と考えられた。しかし、介入群のみでの調査であったことから、達成度としては80%程度と考える。 今回、介入群のみの設定となった理由としては、協力いただける施設の確保が難しいこと、今回の介入研究の場合、口腔ケアを主体とした機能向上を行うことにより、対象者に対する不利益は少ないと思われるが、対照群に対して不利益が生じる可能性も考えられたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度から行ったグループホームにおける長期介入研究で得られたノウハウを基に、H25年度は、グループホームに比べて、多人数が入所している介護老人保健施設(老健施設と略す)の入所者を対象者として、より客観性の高い評価結果を得るため、今後は、対照群を加えた比較研究を行い評価する必要がある。介入群に対しては、口腔機能検査結果に基づいたオーダーメードの口腔機能向上プログラムを提案し、さらに、口腔機能向上プログラムの適切かつ確実な実施に向けて、ヘルパーあるいは身近な介護者に対する研修を行い、介入研究を実施する。介入6カ月後と1年後には、初回と同じ調査を再び実施して、口腔機能向上プログラムの認知機能に対する効果の確認を行う。さらに、対照群に不利益が生じないように介入研究後にクロスオーバーで介入を行う。 グループホームや老健施設の入所高齢者を対象とした調査では、対象者の認知機能の指標であるMMSE得点が10以上としたが、H26年度以降は、認知機能が正常、あるいは、軽度認知機能障害者(MCI)も対象者に加え同様の研究計画に基づいた調査を実施する予定である。具体的には、沖縄県宮古島市の行う集う会(生きいき教室)に参加している在宅高齢者を介入群と対照群に割付し、事前に口腔機能および認知機能検査を行い、口腔機能検査結果に基づいたオーダーメードの口腔機能向上プログラムを提案し、その実施に対する支援を行いつつ介入研究を実施する。介入5カ月後に、初回と同じ調査を実施し、口腔機能向上プログラムの認知機能に対する効果を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は、老健施設2施設で介入群と対照群の比較研究で口腔機能検査および認知機能検査を実施し、口腔機能向上プログラムの長期介入後の認知機能低下抑制に対する効果を確認する。 そのための予算として、直接経費72万円(交付内定額70万円)のうち、旅費が40万円、物品費20万円、その他12万円を予定している。 H26年度は、在宅高齢者を介入群と対照群に割り付け、口腔機能検査および認知機能検査を実施し、口腔機能向上プログラムを5カ月間介入後の認知機能低下抑制に対する効果を確認する。 そのための予算として、交付内定額120万円のうち、旅費が80万円、物品費20万円、研究成果投稿・報告書作成費10万円、その他10万円を予定している。
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Research Products
(2 results)