2012 Fiscal Year Research-status Report
障碍と共に生きる人への包括的生活支援を目指す「障碍者看護学」構築のための基礎研究
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24659955
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
粟生田 友子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 看護部(併任)研究所, 看護部長 (50150909)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 障碍者 / 障碍者看護学の構築 / 包括的生活支援 |
Research Abstract |
本研究は、1)障碍のある当事者にとって必要なケア内容を構造化すること、2) 「障碍」を扱うリハビリテーション看護領域で十分に発揮できなかったケア視点を明確にすること、3)障碍学、障碍者看護学、障碍福祉学等の近隣分野との比較検討による類似性と独自性を明確にし、モデル化することの三段階に分けて計画した。 平成24年度は、障碍のある当事者にとって必要なケア内容を構造化することを目的とした。 対象およびデータ収集は、障碍のある当事者を対象に縦断的、横断的に生活の現状を質的・量的にデータ化し、健康の回復・維持のうえで必要となるケアニーズを抽出することであり,本年は、これに先立って,現時点出版されているリハビリテーション看護の概念に基づいて構成されている書籍の記載内容を質的に分析した。 その結果、障碍者ケア分野で実施に行われているケア内容に比較すると、回復期および維持期の観点で書籍のカリキュラムが構成されていることが特徴であり、障碍の種類では①感覚器系の障碍、②肢体不自由(おもに脳卒中後遺症者、四肢切断者、リウマチ)、③内部障碍(呼吸器系障碍、腎疾患による障碍)、④知的障害、⑤精神障害のうちの知的障害、精神障害に関するものが書籍として別立にあり、リハビリテーション看護としては含まれにくいこと特徴であった。また、医療者の視点が重視され当事者体験などの主体としての障碍者に注目されにくいことが上げられた。 先行研究による障碍学ではこの点が異なっており、当事者の体験や障害者運動なども含まれているため、医療者へのインタビューは質問内容にどの範囲を含めていくかを検討していく必要性が示唆された。本成果は医療者への調査に先立って発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初大学教員としてこの研究を取り組む予定でいたが、年度の途中で臨床の場に異動した。この点で新たな場になれるのに時間を要し、研究への協力グループを再構成する必要があった。 研究計画の段階では、研究協力のメンバーがいる機関であり、時期は遅れているが立て直しは可能である。これを急ぎたい。 別の視点で見れば、臨床での看護視野他のケア分野の人々が、障碍についてどのような視点でケアを実践しているのかについて具体的に知ることができた。これらは今後のこの研究に活かせると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的1)を具体的にすすめる。目的1)は、障碍のある当事者にとって必要なケア内容を構造化する。 対象およびデータ収集:障碍のある当事者を対象に縦断的、横断的に生活の現状を質的・量的にデータ化し、健康の回復・維持のうえで必要となるケアニーズを抽出する。1)質的データ:a.障碍の種類を、①感覚器系の障碍、②肢体不自由(おもに脳卒中後遺症者、四肢切断者、リウマチ)、③内部障碍(呼吸器系障碍、腎疾患による障碍)、④知的障害、⑤精神障害として分類する。b.リハビリテーション途上にある発症後3年未満の人を対象として選定し、当事者体験を語ってもらう。語りの内容は主に障害による生活適応の難しかったこと、発症後3年未満に体験した「生活上の困難」「障害を負ってから現在までの医療の場で体験したケア」「医療の場への受診上の困難」などで、できるだけ自由に語ってもらう。当事者が障害について語ることが難しい障碍に対しては、当事者体験の語りについては除いて選定する。 (2)量的データ:質的データに基づいて、生活上の困難とニーズに着眼し、当事者にとって必要なケアを、時間的要素、環境的要素、法的支援、医療システムに着目し、質問紙に記述できる対象に対して、上記の一部の障碍に限定し、質問紙法によりリハビリテーション施設あるいは一般病院に通院している当事者に協力を得て、横断的にデータ収集する。 データ分析:a質的データは、繰り返し読み、内容分析法により分析する。 語りによっては対象数を限定して、体験世界を現象学的に記述する。内容分析法、あるいは記述統計で分析し、必要なケア内容を構造化する。b量的データは、記述統計を用いて分析し、障碍によるニーズの違いを明確にしていく。以上を収集し記述的に分析する。 次年度使用額が生じた状況として、異動に伴う研究体制の立て直しが生じたことがあったが、体制を整えて進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究協力の場を新たに確保し、データ収集にあたるため、対象者、協力施設への旅費、謝礼が必要である。また、研究協力者との会議をもち分析作業を進めるための諸費用として文具類、統計パッケージ等の購入費用を予定する。 その他1年目の成果の発表や、1年目に引き続いて学会での新たな研究動向を探るために学会参加を予定する。 前年度分の繰り越し繰越金額は、前年度分の研究計画を含めて進める計画であるため、これらの計画を実施するために使用する。
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