2012 Fiscal Year Research-status Report
医療安全管理者を対象とした医療安全レジリエンス教育プログラムの開発
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24659957
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
榎原 毅 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50405156)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴村 初子 愛知医科大学, 看護学部, 教授 (70241205)
城 憲秀 中部大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10137119)
山田 泰行 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80531293)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 看護教育 / 安全文化 / レジリエンス / 人間工学 |
Research Abstract |
安全対策の新発想「レジリエンス」(=困難な状況時に個人が臨機応変に対処する対応力・回復力)を用いた、医療安全管理者向けの「医療安全レジリエンス教育プログラム」を開発することが本研究の目的である。 平成24年度では、看護業務の医療安全レジリエンスの基礎知見を得るために医療安全管理者らを対象に半構造化面接を実施、事例収集を行った。大学病院・地域拠点病院に勤務する病棟看護師のうち、師長または主任経験者29名を対象にインシデント/アクシデント遭遇時に危機一髪回避できた事例、被害を最小限に留めることができた良好対応事例について、半構造化面接によりヒアリングを実施した(平均90分/名)。当該事例について、個人の対処思考・行動、および組織視点での仕事・環境・運用・習慣などの背景要因について時間軸に沿って深掘りするin-depthインタビューを行った。発話データはICレコーダで記録、発話プロトコルデータは個人情報や医療機関が同定される記録を削除しテキスト化した。当該事例はブレーン・ストーミングにより特性要因図としてまとめ、レジリエンス事例の要因を幅広く探索的に整理した。また、テキストデータの類義語統合等のデータクリーニングを施した後、言語学的手法に基づき形態素解析・感性分析を行い、個人の対処思考・行動特徴を分類した。本調査は本学医学研究科倫理審査委員会の承認を得て実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では、(1)看護業務に特化した医療安全に関する「レジリエンス」事例の収集、および(2)看護領域に求められるレジリエンス能力の構成要因の同定(安全教育のコンピテンシの同定)を計画した(大学病院2施設および地域拠点4病院の計6医療機関)。当初の予定よりも1機関増え、大学病院2施設、地域拠点病院5病院の協力を得ることができた。研究の趣旨および意義を説明し、無報酬(謝礼)で協力して頂いた8名を加え、計29名の該当者(内科系病棟/外科系病棟/混合病棟/外来/産婦人科病棟等)の協力を得ることができ、ほぼ予定人数のヒアリングを実施できた。 (2)のレジリエンス能力の構成要因の同定に関しては、発話データのテキスト化および類義語統合等のデータクリーニングはほぼ完了し、形態素解析・感性分析は現在8割程度完了している。また、途中経過の成果報告(学会発表)についても、初年度ではあるが1回行うことができた。研究分担者とは適宜密な連絡と定期的なブリーフィング会合を重ね、データ解析の検討および教育コンピテンシの整理を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、組織安全の水準を診断する「組織レジリエンス成熟度指標」の開発を行う。前年度明らかにした看護師のレジリエンス要因および他業界の動向も参考に、組織レジリエンス診断項目案を作成する。診断ツールの有用性評価のために質問紙調査を実施、信頼性・妥当性の検証を行う。そして、医療安全のファシリテータとなる医療安全管理者のレジリエンス能力を高める「医療安全レジリエンス教育プログラム」として精緻化を図る。 なお、組織レジリエンス成熟度指標の開発に際しては、尺度の信頼性・妥当性検証を行うため、外来・病棟部門に勤務する看護職2,000名程度を想定した質問紙調査を実施する(検出力80%、有意水準5%、オッズ比2.0を想定し試算)。看護師のレジリエンス構成要因および他業界の動向も参考に、組織レジリエンス診断項目案(重要度・実施度をたずねるリッカート尺度、5件法)を作成。代表者・分担者および医療安全管理者からなるグループで検討会を重ね、重複項目の洗い出しとブラッシュアップを行う。 医療安全レジリエンス教育プログラムについては、「事例集(特性要因図)」、「レジリエンスコンピテンシ解説」、「診断シート」を有機的に活用する教育プログラムとして集約する。協力医療機関に対し、本プログラムの研修会を試行的に開催、プログラムの修正を加えながら精緻化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は質問紙調査実施を実施する。調査規模は2,000名、かつ質問紙の分量はA4-8枚程度(印刷費:10万円、郵送費10万円)を予定している。アルバイトによる入力では誤入力の発生リスクが伴うこと、またコストもかさむことから、質問紙のデータ入力はアンケート入力専門業者へ委託することとした(@100円×2,000部=20万円)。調査実施および分析補助として1名を雇用する(月48時間/人×10ヶ月×1名×820円/h=39.3万円)。組織レジリエンス診断項目の検討に協力頂く協力者(看護師長・主任)には協力謝礼を手渡す(90分/人、8名×2回、@5,000円=8万円)。また、情報収集と学術成果の発信のため、日本人間工学会や各種研究会など、関連する国内外の学会へ積極的に参加する(旅費:30万)。また、研究成果は英文誌へ投稿を予定し、英文校閲費(10万円)および論文投稿料(10万円)を計上した。
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Research Products
(4 results)