2012 Fiscal Year Research-status Report
外国人看護師の頭脳還流とキャリア開発の関係性に関する研究
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24659958
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
成瀬 和子 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (70307122)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Nurse migration / EPA看護師候補者 / 国際研究者研究 インドネシア |
Research Abstract |
EPA(経済連携協定)により来日したインドネシア人看護師候補者(以下候補者)のうちインドネシアに帰国した者を追跡調査し、スノーボールサンプリングの結果10名にインタビュー調査を行った。対象者は候補者の1期生および2期生であり、面接はインドネシアでおこない半構造化面接法を用いて、日本語とインドネシア語、英語を併用して実施した。インタビュー時間は30-70分であり、インタビューは同意を得てICレコーダーで録音し、内容を文書化し日本語に翻訳してから内容を分析した。 候補者のEPAの参加動機はほとんどが「技術の進んだ日本で学びたい」というものであり、漠然とした憧れと期待をもって新しい制度に応募していた。日本での配属先に関しては、第一から第三希望まですべてマッチした候補者から全く希望が通らなかった候補者まで様々であり、研修内容も看護助手の仕事を一日中おこなっていた者から、毎日3時間だけ勤務しその他は日本語の勉強に充てていた者まで勤務体制に大きな差があった。日本とインドネシアの看護の差については、日本では看護助手として勤務しておりその中での感想として両国間の看護にはほとんどが差がないと回答した者が多かった。反面インドネシアにない「介護」という概念と仕事には戸惑いを示していた。多くの候補者はEPAの「看護研修」は自分の看護の向上には役立たず、日本で獲得した能力についてもあまり明らかにならなかった。ただ、大規模病院に配属された候補者は、職場の時間外の勉強会に積極的に参加し、そこで得たものを帰国後の復職先で生かしていると語っており、日本での配属先の環境も候補者の新しい能力獲得に影響していた。 帰国後は看護職に戻らず転職した者や現在は看護師をしているが将来的に異なる職業に就きたいと答える者もおり、日本での「研修」が必ずしも看護のキャリア開発には結びついていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初のスケジュール通りに研究は遂行しているが、夏休みがなく現地調査に行けたのが2月であり雨季に当たったため、ジャカルタの交通渋滞や天候により幾度もインタビューの日程等の変更を余儀なくされ、想像以上にデータ収集に時間がかかった。また、インタビューも協力者との(概念的な)言語の壁と認知力のレベルが人によっては期待していたよりも低いということがわかり、結果として収集したいレベルのデータが入手できなかった。 また、インドネシアの看護教育カリキュラムに関してはインドネシア看護協会の看護教育カリキュラムを入手することができたが、内容を見ると非常にしっかり作られており丁寧に見ていく必要があることと、予算的に全部の翻訳を外部委託することが難しいため自力で翻訳している部分もあり、分析に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、平成24年度の調査結果をもとに質問紙調査を実施する。これは候補者が日本で得た能力を明らかにするとともに、日本で得た知識・経験をインドネシアでどのように生かしているのかを探るものである。質問紙調査はインターネット調査とし、WEB上で候補者に回答してもらい集計・分析する。ホームページのURLは平成24年度の調査協力者に連絡して、帰国した候補者のネットワークに流してもらうよう依頼し周知を図る。 データは記述的に分析し、看護師としてのキャリアとEPAスキームでのニーズとその満足度、日本で獲得した能力、知識、経験が現在の職業生活とどう関連しているか、また今後のキャリア開発とどうつながっているかを検討する。 平成26年度は、平成25年度の調査結果から、EPAスキームで来日した外国人看護師が帰国後キャリア開発できるように、研修で獲得可能な能力、知識、経験を挙げそれに基づいた研修プログラムと研修体制を検討する。また実際に候補者を受け入れていた病院の看護担当者に、研修で重点を置いていた点についてインタビュー調査をし、あわせて研修の在り方を考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、大きな支出としてインターネット調査実施に際してのサーバーレンタル代と質問票を作成しそれをホームページにアップするための費用がある。また質問票のインドネシア語への翻訳と収集したデータの集計等の費用も計上している。 平成24年度の研究成果の発表に関しては、国際保健系か看護系の学会で発表を予定しており、その為の学会参加費と旅費も必要になるが、これらの費用が前年度余剰分と合わせも賄えない場合は、平成26年度の前借りを考えている。
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