2012 Fiscal Year Research-status Report
脳の可塑性に有効な手浴方法の開発とその脳生理学・心理物理学的検証
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24659967
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
永井 あけみ 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 講師 (30570022)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ツボ押し洗い / 手浴 / ストレス度 / 脳卒中後片マヒ |
Research Abstract |
本研究の目的は、脳の可塑性に有効な手浴方法の開発とその有効性を脳生理学的・心理物理学的に検証する事にある。平成24年度の計画は予備実験1で健常者10名に利き手でない側の手を対象とし、手浴なし日・40℃の湯に3分間つける日・手浴実施日の午前9時から14時まで1時間毎に(1)指示PIP関節屈曲角度(2)母指掌側外転角(3)示指-中指間距離を測定。予備実験2は健常者5名に、両手10分間の湯外でのツボ押し洗い法、石鹸なし手浴、石鹸使用手浴時にそれぞれ被験者・施行者同時脳波測定を行い実験は1日1種目とする。尚、実施前後のストレス度を唾液アミラーゼで計測するとした。本実験は脳卒中後数年を経過した片麻痺患者10名に、上記予備実験2の内容で実験を行うとした。 本年度は、右利き健常者5名を5分間の設定でA群2名(40℃湯に左手つけるだけ)、B群3名(40℃湯中でツボ押し洗い)に分け、血圧・脈拍測定、ストレス計測と簡易脳波計による実験を行なった。手指計測は昨年の予備実験で最も結果が顕著であった示指-中指間距離のみ計測。結果は、手浴前後で血圧・脈拍共に両群中4名が低下、ストレスは5名中実験補助をした2名を除いて3名が低下、脳波は出現し難いとされるα2が装着時から出続け、当機使用の検討を要する。示指-中指間距離は5名共に手浴直後の距離は伸びたが、湯につけただけのA群は手浴終了1時間後に手浴前の長さに戻り、手浴30分後の計測が必要。 本実験は9年前にクモ膜下出血発症した右片麻痺の患者1名を3週間実施した。心不全の為湯温は38℃で行った、血圧・脈拍は日により上下し特定できない。示指-中指第2関節間距離と手関節角度を手浴前・直後・30分後・1時間後に測定。30分後まで距離・角度共伸びていたが1時間後にはほぼ元に戻った。これらの結果より本手浴による効果は期待できるが、効果の持続方法の考案が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究目的の達成度としてはあまり進んでいない。その理由として第一に手指計測など、計測値はその信頼度が重要であり、また、脳波計を用いて実験を実施するため正確な解析も必要とされる。まずそれらの手技習熟と知識習得のために時間を要した。また、使用する脳波計の選択について、簡易脳波計ではあるが購入するには高価な物品であり、信頼性の確認のため、それらの機種を使用した論文数・論文内容・導入実績等の調査に時間を要し、結果として1台をレンタルして機能確認を行なった。 次に、年間を通して臨地実習指導をしており、学内に居る時間が少ないことから予備実験での被験者になっていただく健常者との日程調整が難しい事が挙げられる。 24年度の本実験として、手浴の効果を明確にするため、リハビリテーションを受けていない脳卒中後片麻痺患者10名の手浴実施を予定していたが、その条件を満たす患者を探すのは非常に困難である事がわかった。更に実施期間を3週間(21日間毎日)としていたため、患者に実施できる時間帯の設定と本研究者のほかに、他の看護師免許を持った手浴実施者が必要であり、その該当者を見つけるのに時間を要した。 実際に実施できた1名の患者については、該当の他の手浴実施者の都合もあり19日間の実施となった。被験者は脳卒中発症後9年を経過した右片麻痺の患者で、月13日間、作業療法士による麻痺手の多動運動のリハビリテーションを受けていたが、自動運動はできないため、手浴開始後からの自動運動の出現を評価基準とすれば良い事がわかり被験者として手浴を実施した。しかし、運動性・感覚性両失語症があり、コミュニケーションがとれないため、手浴効果の評価が困難であった。今後の患者選出の参考となる事例であった事より、実施の意義は大きいと思われた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の実施計画として、健常者10名に対し手浴後午前9時から5時間後まで1時間毎に所定の手指計測を行なうとしていたが、予備実験では対象手5分間の指圧マッサージ手浴で1時間後までは徐々に減退はあるが、効果は持続する事がわかった。そのため、5時間の計測に意味はなく、手浴前の計測値に戻った時点の時間をみる事とする。また、現在5名に手浴実験を行なっており、計30名に実施して学会等での発表を試みる。尚、簡易脳波計については当初購入予定の機種を変更し、現在ブレインプロFM-929の購入を考えている。購入前の対策として、5月末に業者とのデモスト日の調整は出来ている。しかし、当初予定していた被験者と実施者の脳波同時測定がこの機種で行えるかどうかの確認を業者に確認する必要がある。更に脳波解析の知識および技術向上に向けて脳波のセミナー受講を計画に入れる事とする。また、手浴時の体性感覚野および運動前野の賦活状態を観るために光トポグラフィー(NIRS)での実験を実施していく。 患者対象の本実験に関しては、患者の選出としてリハビリテーションを受けている患者に変更せざるを得ず、また、手浴効果の評価をする必要性から実施中、実施者の依頼を理解できる程度のコミュニケーションがとれる患者とする。 手浴実施部位については当初、手と手指としていたが、今回行った被験者の麻痺の状態から、より効果的な手浴方法としては肘関節から前腕部・手・手指まで範囲を拡大する事とする。また、「WHO標準経穴部位」と東洋医学的な心身の理解を図るため、東洋医学セミナーの受講を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
被験者としての患者に脳波計装着時の疲労感を与えず、その被験者の自然な脳波として信頼性の高いと言える脳波を得るためには、簡易脳波計の使用が最適であると本研究者は考えている。そのため、「今後の研究の推進方策」に記したように、使用論文数と導入数が多く、特に大学医学の導入が多いブレインプロFM-929(¥548,000)と、同時に体性感覚野と運動前野の賦活状態を知るため、別付けのセンサープロ(¥24,800)の同時購入を考えている。 また、脳卒中片麻痺患者の手浴実験をする場合に手の筋力評価のために簡易筋電図計MA-3000(¥168,000)と25年度に実施予定の光トポグラフィーで実験では、大脳皮質と頭皮血流との区別を明確にするために、血流計のBscan-Pro(\312,000)の購入を考えている 他に書籍購入費として¥100,000、論文発表費用・英語翻訳費用として\100,000、交通費、被験者への謝金、データおよび資料整理のためのアルバイト雇用費に他の費用を充てるとする。
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