2012 Fiscal Year Research-status Report
看護師の「市民目線に立ったケア」を育むリフレクションプログラムの開発
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24659970
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Research Institution | St. Luke's College of Nursing |
Principal Investigator |
高橋 恵子 聖路加看護大学, 看護学部, 准教授 (90299991)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 市民目線 / リフレクション / プログラム開発 / 臨床看護師 / 継続教育 / 看護教育 / People Centerd Care |
Research Abstract |
平成24年度は、看護師の「市民目線に立ったケア」を育むリフレクションプログラムの開発を行うために、プログラムの作成準備を中心に行った。具体的には、1)リフレクションに関する文献と専門家からの情報収集と、2)看護師が市民目線を育む経験となりうる場の検討、の2点について実施した。 1つめのリフレクションに関する文献と専門家からの情報収集は、①文献検討(医学中央雑誌Webを用いて過去12年間に出版された文献を対象に行った)、②専門家による情報収集は、博士論文でリフレクションを用いてプログラム開発を行った研究者の木村晶子氏(前天使大学)と、「看護リフレクション(ライフサポート社)」の著者であり、院内の看護教育で看護リフレクションを取り入れている東めぐみ氏(日本駿河大学病院看護部教育担当師長)の研修に参加し、看護リフレクションの組み立て方を確認した。 2つ目の看護師が市民目線を育む経験の場の検討については、当初の計画通り、聖路加看護大学で行っている市民健康相談の活動で検討した。具体的には、市民目線を育む経験刺激になりうるかを目的に、1年未満に上記の市民健康相談活動に参加した経験を持つ看護師10名を対象に、研究の同意を得て、活動への参加による体験(気づきや学び)と、市民目線を育むためのプログラムへの助言について1人30分程度インタビューを行った。インタービュー結果から、1回での健康相談活動の経験だけでも市民目線を育むことができるが、活動の振り返り後に、再度2回目の活動への経験を重ねることでより学びが深まるとことが窺えた。また、活動の参加後に、個人のみで振り返るよりも、他者またはグループ間で振り返りを共有する場を取り入れることで、学びが深まることもうかがえた。さらにプログラムの今後の活用性を考えると看護師の時間的拘束の最小限な現実可能な方法で学べるプログラムを検討する必要性も窺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目的は、「市民目線のケア」を育むリフレクションプログラムの作成であり、プログラムまで検討することができたため、おおむね順調であると評価した。 1)リフレクションに関する文献からの情報収集については、プログラム作成のためのリフレクティブな実践の概念要素となるものを医学中央雑誌によるWeb検索により確認できた。 2)リフレクションの専門家からの情報収集については、実際にリフレクションを病院内の看護師に継続教育として行っている専門家や、博士論文でリフレクションを用いたプログラム開発した研究者から、リフレクションの組み立て方や助言などをうかがうことが出来た。当初は、リフレクションに関する専門家への助言も計画していたが、これについては時間の制約もあり、文献で既に出版された論文や書物により情報収集することで目的は達成できた。 3)リフレクションの導入となる体験の場の検討については、当初の予定通り看護系大学が市民に提供している健康相談活動をプログラムに含めることで検討ができた。具体的には、1年未満に上記の健康相談活動を行った経験を持つ看護師10名を対象に、活動の参加による体験(気づきや学び)と、市民目線のケアを育むためへの助言をインタビューで確認することができた。さらに、今回の相談活動に類似した市民対象の健康相談の場を、看護師の継続教育として利用していた兵庫県看護協会のまちの保健室の活動を視察訪問し、教育の場に継続的に発展させるための現実可能性を含めた内容と方法についても情報収集することもできた。 以上より、おおむね順調に計画が達成できたと評価した。しかし、プログラムの現実可能性や、研究としての倫理的な問題も含めて再検討した上で、次年度プログラムを実施・評価をしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、当初の予定通り、前年度(平成24年度)に検討した、看護系大学で提供している市民対象の健康相談活動の体験を用いた「市民目線のケア」を育むリフレクションプログラムを実施し、評価することを目的に実施する。 具体的には、1)前年度、作成したプログラム実施の現実可能性について内容と方法を確認すること。次に、2)プログラムを評価するアウトカム指標を検討すること、 3)作成したプログラムを看護師に介入実施し評価すること、の3つを中心に行う。 1)前年度、検討したプログラムの内容と方法についての現実可能性を、体験の場となる市民健康相談の運営メンバーに意見をもらい確認する。次に、2)プログラム評価のアウトカム指標について、前年度行った看護師対象のインタビュー結果(活動への参加体験による市民目線の気づきや学び)を参考に、プログラム介入前後に実施する質問紙を検討する。また、質問紙ではフォローできれないデータをどのような方法で収集するか(インタビューまたは自由記載のフィードバック用紙)を検討する。さらに、プログラム実施中のプロセス評価の方法についても検討する。最後に、3)プログラム評価については、10名程度の看護師を対象にプログラムを介入し、前半に検討した評価指標を用いて、プログラム介入前後比較データ、変化のデータからプログラム評価を行う。分析方法については、質問紙の調査による量的データはSPSSによる統計的分析を行い、インタビューおよび質問紙による質的データは、内容分析またはケース・スタディ(K・イン,1996)によって評価する予定である。 以上の3つのステップで、平成25年度の目的であるプログラム評価を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、1)前年度、作成したプログラム実施の現実可能性について内容と方法を確認すること、次に、2)プログラムを評価するアウトカム指標を検討すること、 3)作成したプログラムを看護師に介入実施し評価すること、の3つを中心に実施していくため、その計画に合わせて研究費の予算を計上する。 1)については、プログラム検討する上で必要となる体験の場で用いる健康相談活動を提供しているスタッフとの会議費を計上する予定である。 2)については、アウトカム指標の検討のために必要となる関連書籍や文献複写代を計上する。 3)については、10名程度の看護師を対象にプログラム介入を計画しているため、研究プログラム実施に必要をなる研究補助費(準備を含め週1回)とRA(リサーチアシスタント)費(実施回数)の予算を計上する。また、対象者人数分のテープ起こし代も計上する。さらに、協力者となる看護師への謝礼を人数分計上する。その他、研究の調査をすすめるにあたり必要となる消耗品費(ノートパソコン、USB、筆記用具)の計上する。また、リフレクションの専門家からの情報収集や、学会での情報収集もプログラムを精錬するために継続して行っていく必要があり、国内への学会参加として、国内の旅費のを計上する。 次年度使用額が生じた理由としては、25年度の計画でプログラムを精錬するための学会による情報収集に伴う学会参加費、また研究調査フィールドでの情報収集の際に使用する携帯可能なノートパソコン(物品費)が必要になったことから、その予算を当初より計上することになったためである。以上の研究費の使用計画で、プログラム評価を行っている予定である。
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