2012 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児(者)に対するリフレクソロジーの効果に関する研究
Project/Area Number |
24660010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
中垣 紀子 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (10300055)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 英国 |
Research Abstract |
1.足浴およびリフレクソロジーのもたらす効果 本研究の第一段階として、19~22歳の健康な女子大生27名を対象として、足浴およびリフレクソロジーのもたらす効果を調査した。調査期間は、2012年9月~10月であった。実施方法は、足浴およびリフレクソロジーの実施前後に、①バイタルサインズの測定、②血液中酸素飽和度、③質問紙調査(快適感、湿潤感、温冷感等19項目)、④皮膚レーザードップラー血流計(moorVMS)による測定(皮膚血流量、皮膚温、血流速度)を行った。結果として、足浴およびリフレクソロジーを実施後、皮膚血流量、皮膚温、血流速度、体温、心拍数、血液中酸素飽和度が上昇し、収縮期血圧が下降した。質問紙による調査においては、実施後、身体が温かい、身体が軽い、心地よい、眠気を感じる、安心している等の肯定的な意味をもつ項目は高くなった。身体が疲れている、汗をかいている、身体に痛いところがある。不快に感じている等の否定的な意味をもつ項目は低くなった。足浴およびリフレクソロジーは、療養する患者の安楽に繋がる看護援助として有効であることが示唆された。 2.リフレクソロジーおよび温罨法が障害児にもたらす効果 本研究では、リフレクソロジーおよび温罨法の効果について、A重症心身障害児者施設を利用する3~18歳の障害児のうち、家族の同意が得られた9名を対象に調査を実施した。主な調査の内容は、①対象者の基礎データ(年齢、病名等)、②バイタルサインズ、③冷感、筋緊張、表情、④皮膚レーザードップラー血流計(moor VMS)による測定(皮膚血流量、皮膚温、血流速度)であり、②③④はリフレクソロジーおよび温罨法の前後で実施した。結果として、リフレクソロジーおよび温罨法を実施後、徐々に子どもたちの表情がやわらぎ、リラックスし、顔色も良好になり、足部への血流が改善した。看護ケアとして有効であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.データの客観性の確保:看護実践においては、看護師の臨床経験に基づいた五感を糧として身体データの観察が行われる。患児(者)にリフレクソロジーを実施することで、身体的な心地良さ、安楽がもたらされることがあるとしても、科学的なデータに基づいた結果ではない。経験に裏付けられた看護師による観察に加え、客観化された科学的な根拠が裏付けられることで、実践に確証を得て繋がる可能性が期待できる。本研究においては、科学的身体データとして、バイタルサイン、皮膚温測定、皮膚血流量測定、血流速度測定を実施し収集した。 2.皮膚レーザードップラー血流計(moor VMS)による測定について:本研究を実施するにあたっては、皮膚レーザードップラー血流計(moor VMS)を装着し、皮膚血流量、皮膚温、血流速度を測定することにした。この血流計を使用することは、研究者らにとって初めてであった。本研究のテーマは、「重症心身障害児(者)に対するリフレクソロジーの効果に関する研究」であるが、事前に健康成人で、リフレクソロジー前後の効果について、信頼性、妥当性を確認しておく必要があると考えた。ついては、19~22歳の健康な女子大生27名を対象として、リフレクソロジーの効果を検証した。ついで、A重症心身障害児(者)施設を利用する3~18歳の障害児のうち、9名を対象に調査を実施した。 3.目的の達成度:現在のところ、「19~22歳の健康な女子大生27名を対象としたリフレクソロジーの効果」および「リフレクソロジーおよび温罨法が障害児にもたらす効果」について、データを分析して、結果を導いている状況である。A重症心身障害児(者)施設の関係者(職員)は、本研究について、興味・関心が高く、大変協力的であった。また、重症心身障害児の母親にも、好意的な協力が得られた。目的の達成度としては、比較的順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.リフレクソロジーを継続して実施することの効果について リフレクソロジーは、足裏や足の甲に集まっている身体の各部分に対応する反射区を刺激することで、身体が本来もっている自然治癒力を高めたり、リラクセーションをもたらしたりという効果がある。継続的に実施することで重症心身障害児にどのような効果がもたらされているのか検討をしたいと考える。 研究方法は、質的研究方法とする。質的研究は、研究疑問に対して全体的にアプローチすることができ、本音を引き出し、本質を明らかにしやすい特徴がある。研究対象は、富士市にある重症心身障害児(者)施設(でらーと)において、数年、リフレクソロジーを実施している重症心身障害児の家族とする。家族は、5~10名を想定している。家族はに面接をして、インタビュー(40~60分)により、研究に必要なデータを収集する。調査の主な内容は、①リフレクソロジーを継続して実施したことで、どのような効果がもたらされたか。②具体的に身体的な変化がもたらされたか(筋緊張・表情・四肢冷感・排泄の変化など)。③リフレクソロジーを実施したことによって、クオリテイ・オブ・ライフ(QOL)の改善はあったか。④リフレクソロジーの実施を施設内だけでなく、家庭においても、家族がその技術を学習して実施しているかなど。インタビューによって、得られたデータの分析は、質的研究の手法により、コード化、カテゴリー化して内容分析をする。 2.英国へ調査 英国クリステイーホスピタルにおけるリフレクソロジーを導入したケアの実際を見学をする。英国では、リフレクソロジーが実証的・科学的・医学的な検証を経て通常の保険医療に組み込まれている。英国クリステイーホスピタルは、100年以上の歴史をもち、統合医療のモデルケースとして、世界的に注目を集めている。保険医療システムが日本に応用できるかどうか検証したいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.調査のための国内旅費および会議費(300,000円):①富士でらーとにおいて、インタビューを実施する。富士市までの研究代表者および研究協力者の旅費として支出する。②研究打ち合わせのための旅費として支出する。③打ち合わせのための会議費として支出する。 2.研究対象者への謝礼品10名分(20,000円):謝礼品2000円×10個 3、英国への調査のための旅費2名分(900,000円):900,000円×2名 4.文房具等(100,000円) 5.翌年への繰越し(291,666円)
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