2014 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児(者)に対するリフレクソロジーの効果に関する研究
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24660010
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
中垣 紀子 静岡県立大学, 看護学部, その他 (10300055)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リフレクソロジー / 重症心身障害児(者) / 皮膚血流量 / 足関節可動域 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ヨーロッパにおけるリフレクソロジーの実施状況について、国際若石健康研究会ヨーロッパ分会(オーストリア、インスブルック)の協力を得て、以下の内容を調査した。1.リフレクソロジーが医療としてどのように実施されているか:西洋医学、中国医学、若石リフレクソロジーを混ぜ合わせた総合的なものとして実施している。治療を行う前(予防)の処置、手術が必要とされるケースについてもその補助として実施している。 2.リフレクソロジーの対象となる疾病と症状は何か:主な疾病および症状:脳性麻痺、免疫疾患、リウマチ、椎間板ヘルニア、関節炎等である。また、医師による治療を受けているが、効果がない人にも実施している。対象者の年齢は、生後3か月(早産児)~96歳である。 3.何人/日、実施しているか:20人/日を対象にし、一人に約1時間かけている。診察→診断→治療(リフレクソロジー)の流れで行う。通常、①若石リフレクソロジー②点穴③ハリの3種類を行う。 4.リフレクソロジーの費用および保険の適応について:費用は、①初診(診察)45ユーロ、②ハリ治療 70ユーロ、③リフレクソロジー 70ユーロ、全身マッサージ 80ユーロである。保険適応については、施術者にテラピストの資格(国家資格)があれば、すべての治療(ハリ、リフレクソロジー、点穴)に保険が適応される。治療費の50%は社会保険、50%は個人保険(個人で入っている保険)である。治療以外のリフレクソロジーの施術については、個人保険が適応されるが、社会保険は適応されない。また、事故による治療については、社会保険とは別に、事故保険により支払われ個人負担はない。オーストリアの現状は、①先天性疾患の治療費:50%チロル州が負担、50%社会保険が負担、後天性疾患の治療費:社会保険で負担、②後天性疾患の治療費:社会保険で負担、③18歳以下の子ども:チロル州と児童補助金。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.研究の進捗状況 平成24年度:主に重症心身障害児(者)施設(静岡市内)においてリフレクソロジーを実施し、リフレクソロジーがどのような効果をもたらすかを明らかにした。その効果を皮膚血流量、血流速度、皮膚温、表情等で評価した。 平成25年度:リフレクソロジーは、本来、継続することによって、その効果があることから重症心身障害児(者)施設(富士市内)において、リフレクソロジーを経験している児(者)に対して、リフレクソロジーを3回実施して、その効果を皮膚血流量、血流速度、皮膚温、足関節可動域、表情等で評価した。また、この児(者)の母親に1か月間、家庭でもリフレクソロジーの依頼をした。母親は、リフレクソロジーの効果をどのように感じ、考えているか、質問紙を用いて調査をした。調査結果からは、①重症心身障害児(者)の身体面や精神面に効果をもたらす。②多くの母親が抹消冷感や排泄の改善、足関節の緩和などの効果を感じ、自宅でリフレクソロジーを実施することに意欲的であった。③重症心身障害児(者)の安楽を促す援助の1つとして、看護職は他職種や家族と協同しながらリフレクソロジーを実施することの必要性が示唆された。 平成26年度:国内において、リフレクソロジーを医療の中でどのように生かすことができるか、検討するために、実際にリフレクソロジーを医療に取り入れている施設(オーストリア、インスブルック)を訪問し、①リフレクソロジーが医療としてどのように実施されているか、②リフレクソロジーの対象となる疾病と症状は何か、③リフレクソロジーの費用および保険の適応等について、実状を調査した。 2.本研究を継続することの意義 リフレクソロジーが、重症心身障害児(者)にもたらす効果を明らかにすることが、看護援助に繋がっていくと考えられる。また、多くの病める患者への看護援助に示唆が得られると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.研究成果の論文化 平成24年度、平成25年度に実施した研究内容、成果を論文化し、学術誌などで発表する。①第38回静岡県小児保健学会(平成25年10月)で発表したリフレクソロジーおよび温罨法が重症心身障がい児にもたらす効果について、②平成25年度に実施した重症心身障害児(者)におけるリフレクソロジーの効果について(質的研究)を論文としてまとめ、学術誌に発表したいと考えている。 2.医療へのリフレクソロジーの導入への検討 本来、このリフレクソロジーは、多くの病み苦しんでいる患児(者)に施すことで、患児(者)の心身をリラックスさせ、安楽な状態になるであろうことが多いに予測される。高騰する医療費の削減にも確実に貢献することが考えられる。健康を総合的、包括的に捉えるという観点からも、リフレクソロジーは、人に安寧、リラックス効果をもたらし、優れた癒しの力があるといえる。将来的には、リフレクソロジーなどの代替医療が日本の医療機関に導入されることが望まれる。日本では、具体的にどのように導入できるのか、その方向性について検討したいと考える。また、リフレクソロジーなど代替医療が施設でどのように生かされているか検討したいと考える。福祉王国であるデンマークの施設では、実際に代替医療や看護がどのようになされているのか興味深い。今年度は、デンマークのオーデンセにある医療施設①公共施設であるホスピスFYNと②デンマークに広く展開している知的障害児のサポート組織であるLEVを視察したいと考えている。本研究で対象とした重症心身障害児(者)が、入所、通所している日本の施設と比べてどうか、日本の施設に取り入れると良い内容はどうか、総合的な視点から捉えたいと考えている。
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Causes of Carryover |
1.打ち合わせ会議:研究協力者と研究について、打ち合わせをする。 2.海外での調査:リフレクソロジーを含む代替医療が、どのようになされているか、福祉に関して、先駆的である施設を調査し、示唆を得たいと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.打ち合わせ会議:研究協力者と研究について、打ち合わせをする。その旅費として支出する。研究協力者であるリフレクソロジストの西野氏が名古屋市在住であるため、打ち合わせは名古屋で実施する(3回)。静岡⇔名古屋間の旅費として、39,000円(13,000円×3)を支出する。2.海外での調査:デンマークへ調査のための旅費として、60,000円を支出する。3.文房具等:231,711円を支出する。
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