2012 Fiscal Year Research-status Report
小児がん経験者のナラティブからみた医療PTSD予防に向けた介入プログラムの検討
Project/Area Number |
24660014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Gunma Prefectural College of Health Sciences |
Principal Investigator |
益子 直紀 群馬県立県民健康科学大学, 看護学部, 講師 (50512498)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 小児がん経験者 / ナラティブ / 医療PTSD / SOC |
Research Abstract |
本研究の目的は、小児がん経験者の体験した出来事のとらえ方とSense of Coherence(以下SOC)の関係を明らかにし、小児がん体験による医療PTSDに対する予防的介入プログラムを検討することである。平成24年度は研究計画の第1段階として、次の2点を実施した。 1.半構造的面接調査に必要なインタビューカイドの作成 発症から現在までを振り返り、医療的問題・心理的問題・社会的問題など小児がん体験に関わる出来事とその捉え方を検討できるようにした。インタビューガイドは、質的研究に精通した研究者やがん看護学の学識経験者、小児看護の専門家にスーパーバイズを受けて作成した。 2.心理的社会的行動特性指標を盛り込んだ調査票の作成 SOCに加え、小児がん経験者のソーシャルサポートを検討するために必要な、個人的並びに環境的要因を測定する指標を検討した。SOCとPTSDに関する文献を検討したところ、これまでのPTSDの研究においては、発症促進因子を検討する研究が多い傾向があり、PTSDからの回復過程や予防的介入に関する具体的な研究は少なかった。本研究ではPTSD発症の予防的介入に向けて、PTSDにより心的外傷を受けた人たちの個人的なリソースを活性化・強化することで、身体的・精神的症候の発症を阻止するような防御因子を追及することが重要であることが明確になった。PTSDとSOCに隣接する概念として心的外傷後の成長(以下PTG)があり、ストレス対処能力としてのSOCと似た概念としても注目されていた。以上のことから本研究の調査票調査では、SOCに加えてPTGに関する調査も研究計画に追加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、成人期の小児がん経験者を対象に、トラウマティックなイベントも含めた人生上の出来事とそのとらえ方をインタビューし、具体的なソーシャルサポートのあり方を検討する。更に、SOCとの関連を調査することで、SOCの高い者が行ってきた出来事のとらえ方を分析し、医療PTSD予防に向けた介入プログラムを検討する。これらの分析を行うためには、SOCの高低群で比較するに足り得る調査協力者を必要とする。その一方で、これまで当該分野の研究が遅れている背景には、小児がん経験者が罹患の既往を公表することで偏見や社会的不利を被る体験を有するため、研究協力に対して消極的になっていたことや、小児がん経験者が未成年の場合には、研究協力に対する保護者の同意が得られにくいことが影響していたと考えられる。 成人期にある小児がん経験者を調査対象とする本研究においても、小児がん経験を既に過去の体験として生きている者にとっては、調査協力(特にインタビューについて)に苦痛を伴う懸念もあり、調査協力者の確保が重要課題であった。 この課題を達成するために、研究初年度(平成24年度)からの『調査協力者の確保』を挙げていた。しかし、調査に協力いただくためには対象者への十分な倫理的配慮も重要で、平成24年度は研究倫理審査に時間を要した。その結果、調査協力者の確保まで行えなかったため、達成度としてはやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究スケジュールを具体的に修正し、平成25年度の早い段階でリクルート協力者へのアプローチを開始することで、調査協力者を確保し、研究を推進する。 調査協力者の確保に向けた具体的な方策として次の4点を挙げ、実施する。 1.研究協力者(関東地区の小児がん経験者の会代表者)にメーリングリストで会員に向けた調査協力依頼をしてもらう。2.応募者が会員である『がんの子どもを守る会』に協力を要請し、調査協力者を得る。半構造的面接は20~30名を対象とし、調査票調査についてはがんの子どもを守る会に登録している全国の10団体(およそ120名)に調査依頼を行う。3.小児がん長期フォローアップ外来を行っている大学病院に協力を要請し、調査協力者を得る。4.応募者が学会員である小児がん学会のメーリングリストで、リクルート協力の依頼を行い、調査対象者を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度助成金の残額26万円程度を、平成25年度および平成26年度へ繰り越す。この繰り越し助成金のうち10万円を調査協力依頼および打ち合わせ旅費として、平成25年度に含めて計画する。 1.調査票調査で得たデータの多変量解析に使用する統計ソフトSPSSとテープ起こし支援ソフトを購入のため、物品費を50万円計画する。 2.リクルート協力者および研究協力者への調査協力依頼および打ち合わせ・面接調査旅費、学会旅費として、国内旅費を50万円計画する。 3.調査協力者への謝金、専門的知識の提供、データ入力を行う研究補助者への報酬として、謝金および人件費を10万円計画する。 4.学会参加費、面接調査会場借用料、調査票作成や研究依頼文書・研究の説明同意書の印刷代金、通信費などその他の支出を20万円計画する。
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Research Products
(1 results)