2013 Fiscal Year Research-status Report
外傷サーベイランスが現場にもたらす課題とシミュレータを用いたスタッフ育成
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24660040
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
山田 典子 札幌市立大学, 看護学部, 准教授 (10320863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 恵子 札幌市立大学, 看護学部, 教授 (70255412)
吉池 信男 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (80240232)
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Keywords | シミュレーション教育 / 外傷サーベイランス |
Research Abstract |
実際の患者の状態や仮想的なケース(症例)を想定し、その対応によって患者の状態が変化するようなシミュレータなどを用いた看護教育プログラムを企画し、実施した。必要な知識、観察力、判断力、実践力、チームワークの獲得をアウトカムとし、大学院と専門看護師の研修の中で、その教育プログラムの効果判定を行った。その際インストラクションシステムデザインを用い、各々の教育環境において最適な教育効果を上げるための教授設計を試みた。具体的には、①授業実践を支えるシステムを活用する、②学習心理学に基づいて、良い演習、良い教材をつくることで教育の効果・効率・魅力を高めた。また、評価の視点としては、①出口:学習目標の設定と評価方法の妥当性ははかれているか、②入口:成人学習理論とターゲット層が定められているか、③構造:科目全体の構成要素から15回の講義項目の組み立てと順序を決めているか、④方略:学習目標の達成を支援する授業の工夫がはかられているか、⑤環境:適切なメディアの選択とサポート体制(教員の数、教材)の確立ができたか、の5点を設定した。 今回は、仮想的なケースとして児童虐待に関しての教育を展開した。受講者は、大学院生及び専門看護師学修者31名であった。講義目的に対応した項目4項目と講義内容の実用性3項目、そして看護アセスメント項目32項目から構成される自記式質問紙を作成し、評価を行った。そして、受講者の記述内容を質的に分析し、看護教育の適用場面と活用のための課題を抽出した。 外傷サーベイランスについては、大学の設置者である札幌市にその必要性についての説明を兼ねた共同研究の依頼をし、さらに北海道開発機構へ協力を持ちかけたが、いずれも協力は得られなかった。そこで、実際に外傷サーベイランスをうまく継続して行っている自治体に視察に伺い、その仕組みについて調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シミュレータを用いたスタッフ育成については、大学院でのまとまった教育の機会が得られたため、児童虐待、DV被害者、高齢者虐待被害者、性暴力被害者、刑務所収容加害者等を対象とした看護の必要性と実践について講義で触れ、演習では被虐待児の外傷の観察と記録をとりあげた。当初、救急外来看護師を対象に研修を計画していたが、認定看護師研修に集まった看護師を対象に行うことができた。そこで、シミュレーション教育のシナリオは変更せずに、演習後の振り返りの時間を多くとり内容の充実を図ることとした。 外傷サーベイランスについては、サーベイの結果をもとに外傷予防プログラムの評価を行った。その内容は、外傷の原因で最も多い転倒に焦点をあて、外傷を負った場所、原因、年齢、その方のADL等についてのデータを活用し、外傷リスクを示すというものであった。一方、性暴力やDV、虐待を原因とする外傷データが得られず、この関連のデータを得るためには性暴力やDV、虐待の看護を専門とする者の協力が欠かせないことが判明した。 また、自治体によってはデータを公開しているところもあるが、労働災害、食品事故、事故情報データ、消防科学に関連するデータ等、札幌市から其々の機関へ報告している件数や内容にはたどりつけなかった。組織の壁が厚く既存のデータの活用には現時点では困難が多く、本研究期間で達成する課題としては限界があった。外傷サーベイランスに対する理解を促し、取り組む人材を増やすための普及啓発をまず進める必要があり、今回の取組を通じて看護職が電子カルテ情報を活用した外傷サーベイランスの視察を通じて今後の展開のヒントを得ることができた。このことにより、現状の外傷サーベイランスでは収集しづらいデータが得られ、日々の看護や予防活動に活用する道筋を作っていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
外傷サーベイランスの課題の明確化に向け、現状で想定される人材不足、予算不足、医療機関の協力、行政の協力、個人情報保護の課題のクリア等、多岐にわたる課題の整理をしつつ、既存のシステムのないところに新たに外傷サーベイランスシステムを作るには、うまくいっている先行事例を紹介し、その効果をアピールしていこうと考えている。 医療現場では外傷サーベイランスの意味が分からない医療スタッフも多い。そこでH26年度はかつて外傷世帯調査を行った地域の5年後の外傷サーベイランスデータをもとに、外傷予防プログラムの効果をモニタリングする。 H26年5月には韓国で外傷サーベイランスに関する学術集会があり、そこに参加して情報収集を行う(山田)。また5月末には以前から介入している地域の病院を中心とした外傷サーベイランスの結果が公開される機会があるので、共同研究者に参加してもらい情報収集をする(吉池)。 また、病院の協力がなかなか得られないため、性暴力やDV、虐待の対応の課題について警察の協力を得て調査を進めているところである。事故・事件にかかわる外傷ケアについての課題が本調査から明らかになるので、その結果に基づきシミュレーション教育を展開する(山田、中村)。加えて昨年度同様、大学院教育での評価や専門看護師研修での評価も追加し、データを蓄積する。したがって、以下の行程で研究を遂行する。 4月:多機関連携の話し合い、5月:サーベイランスの視察、6月:警察の協力を得た調査、6~9月:看護職へのシミュレーション教育(大学院・専門看護師)と教育評価、10~12月:警察の調査の報告書作成と、警察と合同のシミュレーション教育プログラムの検討、平成27年1,2月:看護と警察の合同シミュレーション現任研修開催、参加者アンケート、3月:3年間の取組みのまとめ作成
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
札幌市内の病院でのシミュレーション教育と外傷サーベイランス導入について予定していたが、札幌市との調整がつかず、中村先生分担分の計画が遂行できなかった。 また、外傷サーベイランスの市町村開催会議に吉池先生の日程が合わず、その分の旅費等が残った。 札幌市や北海道の動向を見つつ、外傷サーベイランスが現場にもたらす課題を検討する。 シミュレータを用いたスタッフ育成では、看護師だけではなく警察とのシミュレーション教育の開催に向けて予算を執行する予定である。
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Research Products
(6 results)