2012 Fiscal Year Research-status Report
特殊災害時における一般市民の被災体験と精神的影響の関連
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24660056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shukutoku University |
Principal Investigator |
香月 毅史 淑徳大学, 看護栄養学部, 准教授 (30418892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩田 久美子 淑徳大学, 看護栄養学部, 助教 (50624045)
三井 督子 淑徳大学, 看護栄養学部, 助手 (30624043)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 特殊災害 / PTSD / 精神的健康度 / 一般市民 / 罹患率 |
Research Abstract |
本研究の目的は東日本大震災後日本全国で生活している一般市民のPTSD罹患率を推定することと、対象者のセルフケアを援助することであった。 2012年の調査では、特殊広域災害である東日本大震災発生後半年から一年半の期間に、全国の一般市民を対象にクラスター抽出法による調査を行い、対象者の中からPTSD症状を示す対象者を抽出し、出現率を数値化した。研究期間2012年9月から11月、対象者は、日本国内の16地域(北海道、宮城県、福島県、新潟県、東京都、千葉県、新潟県、群馬県、福井県、大阪府、兵庫県、福岡県、大分県、宮崎県、沖縄県)の理容室・美容室群各地域8店舗、合計128店舗の来訪者とし、健康、不健康、性差、職業、思想、生活パターンなどの制限は設けず、対象年齢は20歳以上とした。質問紙の回答は無記名、自由回答とした。 4週間後に回答を郵送で回収し、依頼店117店から返送された938件のデータについて集計と分析を行った。対象者の特性と被災状況を把握するために対象の年齢、性別、被災体験時の場所、被害の内容、体験、精神的影響またそれぞれの下位項目について基本統計量を算出した。次に、対象の精神的影響の内容と程度を把握するために、IES‐R スコアの値について基本統計量を算出し、年齢、性別、震災時の体験、被災の内容についての回答内容とIES-Rカットオフポイントを超えた対象の発現との相関係数を算出したところ、被災体験の有無、生活地域によって精神的影響に有意な差が見られた。今後、結果の分析を行いその結果を2011年に行ったプレ調査の結果と比較する。また、体験の差や生活地域の差による精神的影響の違いについて分析結果を順次報告する。現在は、2013年度の第2時調査に向けて準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研申請前の2011年にプレテストを終えていたため、2012年の調査は順調に行うことができた。プレテストの対象数は120であったが、2012年の全国調査では、対象地域を16地域に広げて、対象数も1000に近づけることができた。 計画では、2012年の4月から6月にかけて全国調査を実施する予定であったが、研究者が直接対象の店舗に連絡を取り説明をする形をとったので、実施時期は10月までずれ込んだ。ただし、それだけの時間をかけることで、調査の必要性を説明し、同意を得ることができた。 本研究の目的は特殊災害時における一般市民の被災体験と精神的影響の関連を明らかにし、災害時に直接的被害を受けていない者にとっても、メディアによって繰り返し報道される被災映像や広範囲で深刻な生活不安が精神的負荷となることを数値で示すことである。また、被災者以外の精神的影響を具体的に示すことで、特殊災害後にメンタルケアを必要とする対象をスクリーニングする場合に、そのスクリーニングの対象が被災地以外にも存在することを示し、実際に精神的ケアが必要な対象者を早急に医療につなげることがその後の目標となる。 一般市民の被災体験と精神的影響は、全国のおよそ1000人を対象とする調査でデータを得ることができた。解析結果は徐々に整理し、2012年、2013年の国内、国外の学会で発表を行っている。また、被災地以外の対象者からデータを集めることもできているので、スクリーニングにつながるデータを得ることもできつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
6月~12月 研究者は選定した8地域(北海道、福島県、東京都、千葉県、新潟県、群馬県、兵庫県、福岡県)の理容師協会、美容師協会に研究についての説明書と依頼書を送付し、研究協力の承諾を得る。承諾を得られた後、研究協力を依頼する候補店(各地域4店舗)を協会担当者とともに選定する。研究の実施:担当者の了解を得た後各店舗の代表者に電話で連絡し、研究協力について説明を受けることを依頼する。研究内容の説明と依頼、同意の確認は各店舗に出向き説明文を手渡す。また、20歳未満の場合には精神的影響のリスク回避(対処法の理解)が困難な場合が想定されるため、対象者の年齢を20歳以上の成人とする旨を伝える。店舗の責任者に「研究協力についてのお願い」を提示し、後日協力の同意確認をする旨を伝える。理容室、美容室共に同意を得た店舗が各2店舗になった時点で調査を開始する。調査場所(店の待合)に説明文書を掲示し、同意説明書・調査用紙(基本データ、GHQ30、PTSD診断尺度)、「災害時のこころのケア」と題するパンフレット、GHQ30、PTSD診断尺度の評価説明40セットと筆記用ボールペン、回収BOXを店舗ごとに準備し設置する。基本データの項目内容ごとに対象のグループ化を行い、被災の様子の違いによってGHQ30、PTSD診断尺度の点数に有意な差が生じるかどうかを分析する。7月~12月 第二期調査の内容を論文にまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には第二期の調査のための調査研究旅費、研究打ち合わせ旅費として55万円の他に第一期調査結果を発表するための費用として学会参加費と成果発表費として10万円を計上した。また、平成25年度には第二期調査の結果と共に2度の調査を統合した結果をまとめる必要もあるため研究支援者雇用費と郵送費を増額して計上している。
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